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あのたび -ベトナム出国国境詐欺-

 朝起きると、ベトナム青年のファーは何事もなくサイゴン(ホーチミン)へ戻ると言い別れた。ビンフックという宿に変え、1泊6$だったがホットーシャワーと蚊帳付き。ありがたい。

 前日たくさん食べたはいいが、お腹をくだし気味。薬局(PHARMACY)を探し、ポケット電卓辞書で腹痛(stomach ache)と下痢(diarrhea)の単語を調べてジェスチャーをまじえて薬を売ってもらった。2回分6000D≒50円。
 2003年当時スマホは無く、ボクは簡単なレート計算と英語辞書が入っているポケット電卓を持参していた。

 カンボジアの首都プノンペン行きのボートを翌日予約した。10$だったが50$札ではお釣りが無いと言われ、ベトナムDで返却された。ホントかよ。もうベトナムには滞在しないのでいらないというが国境で両替できるという。その日は薬を飲んで一日寝ていたら腹の調子は良くなった。

 翌日、イミグレーションで出入国手続きをする。その後両替をしたいというと、6分の1だという。ポケット電卓でレートを計算すると、ベトナムDからカンボジアRielに替えるのはだいたい4分の1だ。余った40万Dは10万Rielになるはずだ!
 6分の1ではなく4分の1だろ?と主張すると、OKと交換してくれた。しかしこれは正規の両替屋ではなくその辺にいる小僧だというのが問題であった。

 ぱっと数えた感じでは大丈夫そうだったのだが、こすずるがしこいことにお札を何枚か半分に折り曲げてそれを束にして輪ゴムで止めており、1枚のお札が2枚に見えるよう仕込んでおいたのであった。ボートが出発するというので急いでいたこともあり、1枚1枚丁寧に数えている暇がなかったというのもある。こちらの確認不足であるが見事にやられたな。
 結局手元に残ったのは7万5千Rielで10$ほどが消えた。少額で済んだがなるほどこういう手口もあるのだなと勉強代になった。

 メコン川をボートで北上し数時間、カンボジアに入国した。少し見た感じでも国土は荒れ果て道路も舗装しておらずベトナムよりも経済的に厳しい国のように思えた。
 1991年のパリ協定が締結されるまで内戦が続いていたらしく100万人から200万人以上が虐殺されたという歴史がある。その後1997年にも武力衝突があったばかり。
 現在はだいぶ発展したが、ボクが旅行した2003年当時はまだ治安が良くないので夜の独り歩きは控えろ、地雷が埋まっているので誰も歩いていない道は歩くな、などと言われてかなりびびっていた。

カンボジアルート

(つづく)


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