あのたび -国境の町チャウドックへ-
メコンデルタの街カントーを堪能したあと、チャウドックを目指す。ここはメコン川の支流にあるちいさな町でカンボジアへ行くための国境町だ。
カントーのターミナルでうろうろしていると「Where do you go?」とおっちゃんに聞かれる。
「チャウドック」と答えると中型バンに詰められた。定員は10人くらいのはずなのに、道端で人を拾って乗せてを繰り返し最大25人も乗ることに。暑いのに窮屈で苦しい。それだけ乗せてもバンの運転手はスピードをぶっとばし2時間半でチャウドックに着いた。早い。
バンの中で隣に座っていた、英語堪能なベトナム人青年のファーくんが話しかけてきて、チャウドックで一緒の宿に泊まることになった。特に宿は決めていなかったのでツインルームをシェアするのは悪くない。一人一泊48000D≒400円くらい(2003年当時)。妥当な価格である。
例えば空港やターミナルや安宿街で話しかけてくるやつは、ぼったくろうとしてくるので信用できない。たまたま座席が隣になったこのファーという青年は、そういう商売っけがある様には見えないので信用できるのだろうか。信じていいか疑うべきか旅経験が浅いボクには判断ができなかった。少なくともこの町のことはボクより知っているし宿も教えてくれたから親切ではある。
ファーは見た目が10代のようだったが年齢を聞いたら28歳の学生だという。フィリピンや香港を旅行したことがあるとのこと。よく歩きよくおごってくれた。気前がいい。そしてなぜかキレイ好き。ファーは食事の前にスプーンをペーパーで拭く。あとで知ったがこれは普通のベトナム人の習慣のようだ。ボクの英語力が足りないのでそれほど会話は弾まない。
宿に戻るとファーは、「You look like girl. (君は女の子に見えるよ)」と言ってきた。
おいおいどうみてもボクは男だろ! と反応に困った。
ファーはもしかしてゲイでそういう気があってボクに話しかけてきたのか? わからん。誰か教えてくれ。
ベッドは違うが同じ部屋で電気を消しておやすみと言って寝る。このあとまさかこっちにもぐりこんできたりするのだろうか、と寝るに寝られなかった。が疲れていたのでそのまま目を閉じた。
(つづく)