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アニメと俺たち
「なぁ、このアニメってほんとに面白いの?」
カズがミキオに聞く。
「面白いよ。今期の中では一番面白いよ」
ミキオが自信満々に言う。
ミキオがおすすめするアニメは、「チョコレート・パラダイス」というアニメ。
主人公の男子高校生がひょんなことからパティシエを目指し上京し、養成学校で仲間と切磋琢磨していく内容だ。
「この主人公がとにかく前向きなんだよ。どんなに辛いことを言われても、どんなに逆境に立たされても前を向いているんだ」
ミキオがアニメの魅力について語り始めた。
「それでね、俺のおすすめのシーンがあるんだけどさ…」
ミキオのアニメ談義は30分も続いた。
「…な、面白かっただろ?」
ミキオが満足気な顔をした。
「うん、割と面白かったな…」
カズが言う。
「そうだろ?面白かっただろ?」
ミキオはさらに顔をほころばせる。
「…俺は面白くなかったな」
タクローがボソッと言った。
「は?このアニメは面白いだろ」
ミキオがタクローの元に駆け寄る。
「話もなんかめちゃくちゃだし、何か印象に残らないよ」
タクローが続けて言う。
「な、なんだと…!」
ミキオは自分の好きなアニメをバカにされて怒り心頭だ。
「俺のおすすめのアニメを見てみてよ。そのアニメよりは面白いから」
タクローがDVDを取り出す。
「よし、そこまで言うなら見てみようじゃないか」
ミキオはタクローからDVDを受け取るとデッキにDVDを入れた。
「な、何コレ…?」
「意味が分からない…」
ミキオとカズはテレビの前で頭を抱えた。
「いや、面白いって!」
2人の横でタクローは語気を強めた。
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