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ジャズ雑記 〜私的ジャズヴォーカル名盤5選〈その③〉〜
前回↓の続き。
3枚目も有名な名盤で面白味がなくて申し訳ない。
「サラ・ヴォーン(ウィズ・クリフォード・ブラウン)」だ。
サラ・ヴォーンは昔そんなに好きではなかった。
巧すぎるからだ。
巧すぎてダメなどと言われるとは、何と理不尽で可哀想なことか。
勝ち負けのハッキリするスポーツなら上手ければ上手いほど良いのに芸術はそうでないから、やってる側の人は大変だなぁと側から見てて思う。
だからおもしろくて、スポーツ観戦より好きなんだけど。
そんな巧すぎて鼻につくサラ。
声質の問題か、歌い方か、後のアルバムでは時に雑に聞こえてしまうこともよくあるが、このアルバムではあくまで丁寧に歌い上げていて、その技巧が活かされている。
何事も丁寧なのって大事ね。
完璧、としか言いようがない歌唱だ。
音程、タイム、表現力、フィール、その他全て言うことが本当にないので、だんだんと書くのに困ってきたぞ。
ここ数ヶ月よくヴォーカルを聴いていて、サラのアルバムで聴いたことないものも沢山聴いたが、この歌唱を超えるものは見当たらなかった。
そんな完璧なサラに対して、バックのミュージシャンは結構謎だったりする。
可もなく不可もなくな感じで演奏するリズムセクション。まあこれはヴォーカルのアルバムによくあり、引き立たせるためだろう。
ポール・クイニシェット(テナーサックス)は結構良い仕事しているし、クリフォード・ブラウン(トランペット)は明らかに一人飛び抜けて戦闘力が高く、完璧な仕事をしている。
ここまでは、まあ良い。
一人、謎の不思議ちゃんが紛れ込んでいる。
ハービー・マン(フルート)だ。
聴いてもらったらわかるが、宇宙だ。
音楽の表現で使われる肯定的な、壮大な宇宙感とかスピリチュアルな感じ、とかではなく、どこ行くのー?な感じの、宇宙だ。
いつもなら、こんな奴が入っているレコードは、こらあかんわとメルカリや中古屋行きなのだが、このアルバムでは謎の味になっている。
こればかりは未だに謎だ。
使い方、アレンジが良いのか、巧すぎるサラ、クリフォード・ブラウンとのバランスが取れていいのか。
ともあれ、完璧なサラの歌唱が聴ける極上の名盤には違いない。
清涼感さえあり、個人的には晴れたお昼間とかに聴きたくなるアルバム。
バックのミュージシャンに注目すれば、実は結構変でもあるアルバム。
お茶の時間にでも、是非ご賞味あれ。
ボーナストラックである「バードランドの子守唄」の別テイクを除いた最後の曲「イッツ・クレイジー」のラスト、本当にクレイジーでお茶吹き出しそうになるので注意してね。