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子烏

屋上のすぐ脇に繁っている、名前のわからない実をつける木。
犬は屋上に落ちたその実を齧るので毒ではないらしい。

その枝には大抵、烏が止まっている。
他の烏も行ったり来たりはするが、主にある烏の親子がそこを縄張りにしている。

親子と言っても、私がここに来た夏には充分に成長していた。
やや小ぶりなだけで、すっかり烏だ。幼鳥の面影はほぼない。

たいてい母烏は、子烏をそこに置いて、餌を取りに行く。
子烏は枝からはほとんど動かず、母烏が戻るまで、ただただ鳴き続ける。

十数分で母烏が戻ると、子烏はうがいのような甘え声を出して口を開ける。
母烏は甲斐甲斐しく開いた嘴の隙間に餌を流し込む。

二羽で連れ立って出かける時もあるが、いわゆる昼時はいつもそんな感じである。

家主が時折、残り物を、有象無象いる野鳥のために屋上の壁に置きに来る。
母烏と共に残り物のある場所に向かっては、鼻先にある餌を自分でつままずにせがむ。

屋上には数か所、大きな素焼きの深皿が置かれている。
植物に水やりをするついでに、深皿も鳥たちのために水で満たされる。

母烏が水を飲みに深皿に止まる。子烏も後を追う。
自分で飲めるくせに、水さえ母烏にせがむ。

もう冬も遠くない。
烏の巣立ちはいつなんだろう。

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browneyes
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