【ショートショート】高校入試発表合格
薄暗い教室の中に自分の名前を見つけた。窓は閉じられていて、風で吹き飛ばされないように配慮をしているのは納得できるが、照明くらいは点けてくれていてもいいとボクは思う。
紙には高校入試の結果が印字されていた。国語は七十三点と高いが、社会は三十八点と、今まで取ったことのない点数が刻まれていて、不穏が襲った。もしかしたら、落ちているのではなかろうか。外へ出て、中学の制服を着た男女の群れに交じる。周りに友達はいない。友達と一緒の高校に行くみたいな陽キャめいたことは不得手だ。
桜が咲いている。白くてちいさな桜だった。中学の制服といえども黒や紺が多く、高校生の制服とあまり変わらない。
しばらくして数字の羅列したボードが姿を現した。みなそれを見て喜びを爆発させている。中には泣いている者もいる。ボクも群れの後ろにつき、隙を見て前に行く。緊張はなかった。ただ不安のみが頭をもたげていた。社会が三十八点。そのことばかりが背にのしかかり、猫背になっていた。一輪の桜が散り、前方の女子の肩に乗った。
結果を視認できるところまでボードに近づいた。自分の受験番号を探す。あった。つかの間に湧いてきた悦楽を自分一人のものに出来なかった。ボクは知らない女子に向かって、ねぇ、受かったよ。君は? と訊いていた。私も受かったよ。振り返った反動で女の子の肩から桜が落ちた。