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乙女塾・スタジオさつきぽん代表 西原さつき(前編)

公式HP=https://satsukipon.com/
インスタ=https://www.instagram.com/satsuki_nishihara?igsh=MXVzdG8zcnM3bzR0NQ==
監修・撮影:流星瞬

取材・文:舘野雄貴

 「女の子になりたい」「かわいくなりたい」という思いをもつ人たちへのサポートをする「乙女塾」の代表・西原さつきさん。
乙女塾の理念は、「女の子らしく」でなく「自分らしさ」を大切にすること!!
 「自分らしさ」を考える上で、多様性や個性・・・などという言葉が飛び交っており、さまざまな「個」の在り方が問われていますが、さつきぽんの考える「自分らしさ」とは??

Q:「乙女塾」には、どんな方々が訪れ、どのようなことをされているのですか?

A: MtF(Male to Female)の方々が中心に来ます。また、女装・自分に自信が持てない女性など、性や自分らしさに悩んでいる方々もいらっしゃいます。
 お悩みの内容としましては、「女の子に見えないのだけど・・・どうしたら女の子らしくなれますか?」ということが多いですね。
 性別移行をしている途上段階の時期って自分に合ったメイクやファッションができなかったり、どうしても不自然になりがちなんです。そういう時って、世間からも違和感を抱かれやすい状態になっている気がして・・・それが苦しさの原因になっていることも多いのです。
 乙女塾では、そのような人たちのためにメイクやボイスレッスン、ヘアアレンジやトーククラス、育乳・痩身マッサージなどを行い、その人に合うその人らしい姿に導くお手伝いをしています。
 乙女塾で大切にしているのは「その人らしさ」・・・生まれたときの性別や身体、周りの視線なんて気にせずに、あらゆることから自由になって、思いっきり自分らしくいられる居場所になれたらという願いを込めて活動しています。
 乙女塾は、2016年に開講したのですが、立ち上げ当初は「女の子らしくなる」ということを積極的に追求してきましたが、現在は「その人らしさ」を大切にするためのお手伝いをしています。

Q:さつきさんの考える「その人らしさ」について教えていただけますか?

A:世間や他者の価値観に振り回されることなく、ありのままの自分として好きなことをやり続けることだと思っております。
 私たちトランスジェンダーは、性別移行をするのですが、それが世間で言う女性らしい姿と重なるかと言ったら、そうでもありません。
そうにも関わらず、トランスジェンダーの当事者は、どうしても社会に溶け込まなくてはいけないと思ってしまいがちなんです。そうでないと、好奇の目で見られたり、後ろ指を指されると思い込んでいることが多いのでしょう。
 その時点で、世間や他者の目を気にしている訳ですが、生まれたときの性別と性自認が異なることを自己開示できなかったり、バイアスをかけられることによって傷付いてきた経験も多いので、そうなるのも当然のことではあります。だからこそ「自分らしさ」を大切にしてほしいと思っています。
 誰しも本当は自分の好きな服装や髪型でいたいと思うはずなので、それを自分自身の満足のいく形で可愛く着こなすことができたら、自分のことを愛せるのではないかなって思います。

Q:社会に溶け込むというのは、具体的にどのような感覚なのでしょうか?また、それは、自分を大切にすることと対比してしまうこともあるのでしょうか?

A:「パス度」という表現をするのですけど、自分の姿が「世間や他者から違和感なくパスできているか?」という意味になります。自分らしさを追求しているはずが、無意識のうちに世間からどう見られているかということを意識してしまうのです。なので、トランスジェンダーには、パス度がどの程度かを気にしながら生活してしまうことも多くあります。
 人によっては社会生活を営む上でパス度を意識する必要もあるのかもしれませんが、そこを過剰に意識しすぎると本来の自分のなりたい姿とかけ離れてしまうこともあると思います。
 そのような考えに捉われがちですが、社会がどうかなど関係なく、その人に合ったファッションやメイクをするのが、その人にとっての自然な姿なのではないでしょうか。
 現代の日本では男女二元論が強いので、社会では「男性らしさ」とか「女性っぽさ」という表現をしがちですが、トランスジェンダーの男性や女性というカテゴリがあっても良いと思うんです。完全にどちらかの性別に分けたり、性別移行前の名残を消すことばかりに捉われるのではなく、トランスジェンダーとして受容されるのが理想ですね。

Q:近年、LGBTQへの認知度は高まってきている(SDGs CONNECT調査によると、2020年時点でLGBTQという言葉の浸透率80.1%)と思います。そうした社会の進展に伴って、当事者の方々の在り方も変化しているのですか?
乙女塾開講当初の社会情勢では、トランスジェンダー女性は「女性らしさ」を求めていましたが、社会的認知度の向上に伴って、「自分らしさ」を重視するようになったのでしょうか?

A:そういう考え方もあるかもしれませんが、個人による考えの相違もあると思います。
 自分らしさを追求する人もいますが、社会の中に女性として溶け込んでいきたいという人もいます。また、自分と社会との間でバランスをとろうとする人もいるかと思います。社会がどう変わろうと、トランスジェンダー一人ひとりの価値観や考え方もあるので、属性の中での個も尊重できたら良いですね。

Q:さつきさんご自身は、どのように自分らしさを大切にされていますか?

A:私の場合は、自分の好きな物を身に着けつつ、周りの人たちに分かりやすい色やデザインも取り入れることで「自分らしさ」を大切にしながら表現もしています。
 例えば、私はピンクや水色、黄色などが好きな色です。でも、ステレオタイプの人たちが、私たち(トランスジェンダー)をイメージするカラーを考慮した上で最大公約数をとるために、敢えてピンクを中心に選択するようにしています。相手に分かりやすくしたほうが、自分の存在を理解していただく機会も増えると思いますので。

後編へ続く

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