秘境駅へ行ってみよう。
私は秘湯に行くために秘境の駅をよく利用するので、秘境駅には人並み以上に関心がある。
日本一の秘境駅「小幌駅」(こぼろえき、室蘭線)をご存じだろうか。秘境駅ファンには「無人地帯/外界から道なしのリアル秘境/トンネルに挟まれた断崖/毎年廃駅になりそうヤバイ」という高い評価を受けている。
鉄道以外の方法でたどり着くのが困難な「秘境駅」として知られるJR室蘭線の小幌駅。JR北海道の懐事情により、2015年10月に廃止になる筈だったのだが、直前に廃止は取り止めとなった。
豊浦町地方創生推進室の調べによると、その後の小幌駅の乗降客が予想外に堅調であることがわかっている。2018年4月19日~12月15日の実績で1713人、1日あたりの平均訪問者数 8.7人、1日あたりの最大訪問者数 51 人。大混雑ではないか。実績をもとにした2018年度1年間の訪問者推計は2477.5人。利用実績として悪くない。
当初は、1年限りとの条件のもと、豊浦町がJR北海道と業務管理の協定書を締結して辛うじて存続したのだが、その後も豊浦町の支援を条件に毎年更新されている。財源はふるさと納税など。2019年度についても更新された(昨年3月)。2020年度の更新について何も聞こえてこないので心配であるが、新型コロナの影響で遅れているのであろうか。
それでは、私がこれまでブロンプトンと共に行ったことのある秘境駅ベスト5をご紹介しよう。いずれも素敵な無人駅である。
まず第五位から。釧網線(くんもうせん)の北浜駅だ。
行ったのは8年前の夏、知床へ行く途中であった。かつて大ヒットした中国映画のロケ地となったので中国人に大人気であった。駅の待合室はピン止めされた中国語の紙で壁が見えないほど。ちょっと汚らしいが。たまに大型観光バスがやって来て駅前がまるで上海の雑踏のようになることがあったという。今は中国人も来ないだろうから、秘境駅の条件である静寂を取り戻しているのではないだろうか。
小さな喫茶室がある(喫茶「停車場」)。オホーツク海を眺めながらコーヒーを飲むとよい。
展望デッキが設けられている。冬に来ると、流氷に満たされたオホーツク海沿いのこのあたりは、さぞやわびしいことであろう。
第四位。野岩鉄道 (やがんてつどう)男鹿高原駅。年間乗降客数が352人(2016年実績)、したがって一日平均乗降客数は一人未満ということになる。秘境駅としてなかなか立派な数字ではないでしょうか。
駅の周りに道路さえない。どうしたんだこの駅は。野岩鉄道の男鹿高原駅に関する説明にも『駅付近には、広場(緊急用ヘリポート)以外特に何もありません。』とある。
第三位。大糸線中土駅 (なかつちえき)。冬に行くとここも侘しい。ただし駅前には人家があり、また小谷温泉への入り口でもあるのでバス停まである。決して役に立っていないわけではない。がんばれ。
おまたせー・・・という感じで気動車が入線してくるのが「萌え」だ。
第二位。奥羽線赤岩駅。スイッチバック の用途で作られた元信号所の駅である。周囲にまったく家が見当たらない。かつて付近に集落があったらしいが冬は林道がすべて通行止めになりアクセス不能なため今は5キロ圏内に誰も住んでいないという。何のための駅なのか。多分鉄道ファン・秘境ファンのための駅なのだろう。2012年以降、冬季は停車しなくなった。かつて不用意に下車した方が脱出できずに凍死したことで不停車の対応をとることとなったらしい。そしてついに2017年には通年通過駅となった。但し、駅として廃止された訳ではない。
そして私的にナンバー1の秘境駅は、奥羽線の峠駅 である。駅だが峠なのである。もちろん無人駅なので秘境駅としての条件を満たしている。
かつてスイッチバック施設があった痕跡でもある巨大な天蓋である。
駅舎の風格も申し分ない。私にとって、姥湯温泉の日帰りに欠かすことのできない重要な駅である。
「峠の茶屋」が営業を続けていて、停車にあわせて伝統の力餅を販売している。無人駅ではあるがこの店が駅を守ってくれているようなものなのだ。
尚、秘境駅というより魔界への入り口のような駅がある。魔境駅としてご紹介する。
土合駅(上越線)。見かけは近代的な感じ。ところが。
上り線ホーム(新潟方面から)は地上にあるが、下り線ホーム(東京・水上方面から)が地下70 mのトンネルの中にあるモグラ駅だ。
これが魔界への入り口である。
オバサマ、気をつけないと落っこちますよ。
下り線ホームに到着すると、地上の改札へ向けてひたすら階段を登ることになる。
停まる電車は少ないが、時期によっては谷川岳への登山客で賑わったりする。
皆さんにも、この先機会があれば是非秘境駅に出かけて、独特の雰囲気を堪能して欲しいと思う。
あなたも秘境駅、行ってみませんか。
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