横向温泉 中の湯旅館
ある年のゴールデンウィーク初日、たまには超レアな感じの秘湯に行きたいなと思った。夏のヒルクライムレースに備えて、標高差500メートルから1000メートルぐらい坂を登ってトレーニングもしておきたい。
そうだ横向温泉に行こう。
伝承によれば横向温泉は、11世紀末、八幡太郎義家一行が奥羽征伐の際、弓で目を射られた白蛇が岩の割れ目から湧き出る湯で傷を癒しているのを見つけたのが起源と言われる。或いは別の古文書によると1661年に発見されたとの話もある。名称については、一説によれば女人が横になっている姿の山から温泉が湧き出でたところから横向温泉となったと言う。「上の湯」(ホテルマウント磐梯)、「中の湯」(中の湯旅館)、「下の湯」(滝川屋旅館)の3軒の宿があるが、少しずつ湯質が異なる。
横向温泉(よこむきおんせん)は猪苗代の山奥にある。東京からだととても行きにくい。第一に、標高1100メートル以上の地点にある。第二に、バス等の公共交通機関がない。第三に、最寄りの猪苗代駅までの電車代が高い。
それで、行きは猪苗代駅まで夜行バスを利用することに決めた。猪苗代駅からブロンプトンで山道を登っていけばよい。
というわけで、前夜、JR高速バスで東京を出立して、夜明けの猪苗代駅に着いた。寒い。標高500メートルにある猪苗代駅から横向温泉まで距離23キロ、標高差500メートル以上をブロンプトンでいく。
[走行データ]
ルート: 猪苗代駅→横向温泉
距離: 23.5 km
最大標高差: 555 m
早朝の田舎道を秘湯目指してひた走る。体が温まってきた。会津磐梯山が朝日を浴びて雄大な姿を見せてくれている。
田園風景を楽しみながら走る。この道にはその昔、軽便鉄道(沼尻軽便鉄道、1969年全線廃止)が走っていた。その線路跡が道路になっているので適度な斜度が続き、ブロンプトンで軽快に走行することができる。このあたりの標高は海抜600メートルほどだ。
小一時間も走ると沼尻(元は硫黄鉱山があった)へ通じる旧・軽便鉄道ルートと分かれる。すると、いきなり傾斜がきつくなってきた。
標高850メートル地点の高森の集落だ。桜がキレイ。
さらに進むとバイパスと旧道に分かれる。当然、勾配のある旧道へ。旧道は一般車両通行止め。標高1000メートルあたりでは未だ雪が残っていた。
きつい坂をさらに登っていくと、横向温泉の入口についた。途中で撮影タイムを取り過ぎた。予定より1時間ほどビハインドの午前7時半だ。とは言え、秘湯に入るには丁度良い時間となってきた。
雪の残る林道を走っていくと横向温泉中の湯旅館に着いた。秘湯マニアの間ではちょっとした有名秘湯である。
中の湯旅館、想像をはるかに超えた鄙び具合である。管理のおばあさんが炬燵にあたっている。
しかし良く見ると、古くてごちゃごちゃしているだけで、非常に掃除が行き届いている。管理をされている気さくなおばあさんに300円払って、いざ『霊泉』へ。おばあさんの字なのか結構達筆だ。
引き戸を開けると。
キター。
(続く)