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日本イエネコの会
イエネコは今や世界に四億五千万匹もいるといわれている。
つまりネコ科のなかでもっとも成功しているのがイエネコなのだ。
😸
ある日、ウチのネコに「推薦人になって欲しい」と突然頼まれた。
僕はそのとき鍋を火にかけていたので、それをやめて“なんの推薦人か”と尋ねた。
するとウチの猫はお行儀良く尻尾で前足をくるみながら、
「会長選に立候補したい」と上目使いで言った。
日本イエネコの会における最高位なんだそうだ。
そんな会があったなんて知らなかった。そもそもウチの猫はいつの間に所属していのだろう。
推薦人はだいたい飼い主がなるんだそうだ。
「日本にイエネコが何匹いるか知ってる?」ウチの猫は僕の足にスリスリしながら尻尾を立てている。
「さあね、たくさんいるだろうね」
僕は完全に料理をやめた。もともと柚子胡椒を切らしていた。
“実は自分もどれくらいの数かは知らないのだ”とウチの猫。
そんなんで会長になれるのだろうか。
「もしも会長に選任されたら、世界に功徳をほどこしつつ、イエネコたちのために、ソトネコのように冒険できるイエネコランドとイエネコシーを造って、豪華なイエネコホテルも建てるんだ」と息巻いている。
長期滞在が可能なんだそうだ。
その時点でイエネコではなくないか。いや、イエネコは自分はイエネコだと言い張ればイエネコなのだ。
僕はタオルで手を拭いてからテーブル席に座り、イエネコ会のイエネコ憲章をしっかりと読んだあとで推薦人書類にサインをした。
その間、ウチの猫は僕の膝の上で喉をコロコロ鳴らしていた。
「書けたよ」
「コロコロ」
不備がないか入念に肉球でチェックし終えたウチの猫は、「よし」と髭をたて、僕の膝から飛び降りると、さっそく支持者らに会いに出かけた。
ウチの猫がもしも会長になったら、きっとウチは猫たちで騒がしくなるだろう。
まあ、それも悪くはないか。
僕は再び鍋を火にかけ始めた。
終