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トリプル・クリぼっち



イヴの夜、僕は駅前でデートの相手を待っていた。

こんなイルミ全開な場所にいても今夜は平気だ。

クリスマスデートなんて何年ぶりだろう。

僕の胸は期待と不安で高鳴っていた。

ところが、

待ち合わせの時間になっても、デートの相手はなかなか来なかった……。

あたりで流れていたどの曲もが山下達郎の曲に聞こえた。

それはクリスマスがその山下達郎の曲の利用成果創出の最大化に直結した瞬間だった。

プレゼントを入れた紙袋がカサカサと音を立てた。

必要なくなったものを入れた紙袋ってなんでこんなに持ちづらいんだろう。

ちょっとした待ち合わせスポットだったことが災いして、僕の周りでは無数の待ち合わせ完了の儀が行われていた。

さてと……。

帰りかけた時、

なぜか代わりに鼻歌交じりなウチの猫がが現れた。

ウチの猫もデートの待ち合わせなんだそうだ。

こちらのこれまでの経緯を話すと、

「それくらいで諦めてたら飼い主失格だ」とウチの猫に言われてしまい、

僕はもう少し相手を待つことに決めた。

しばらくいっしょに待っていたけど、どちらの相手も現れなかった……。

ウチの猫は毛繕いをしながら気丈に振る舞ってはいたが、僕と同じでその落胆の色は濃かった。

逆に、全国ツアーで僕らが山下達郎をする側になったみたいな気分だ。

そこへ近所のねこちゃんがやって来た。

すごくめかしこんでいる。

やはりデート待ち合わせらしい。

僕らのこの哀れな状況を察したらしく、

「たしかこの駅前の時計って昔からの狂ってたわよね」と優しい嘘をくれた。「もっと笑って、ね、イヴよ今夜は」

そうなのだ。大事なことは今が何時かではない。

今日がイヴだ。ということなのだ。

ウチの猫も僕も少し元気を取り戻し、みんなで待つことになった。




それから、

どれくらい待っただろう……。

もはや、何かが公然たる事実になろうとしていた。

僕らの前には結局、誰も現れなかった。

寒い夜で、

雪が降って来た。

「そろそろ帰ろうか」と僕が言い、

みんなで歩いて、

家に帰った。

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