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初夢探偵


まるで僕の日常全般にDDOs攻撃を受けた気分で目が覚めた。

ベッド横のミネラルウォーターをがぶ飲みした。

少し遅い朝。窓の外の太陽の位置はちょうど悪夢で目覚めるのに適したくらいの高さだ。

新年早々縁起が悪い。

自分の初夢がサイバー攻撃に合うなんて初めてだ。

そして夢がサイバー攻撃されてもそんなに寝相は悪くならないようだ。(だから?)

今年の初夢の内容がすっぽり抜けていて、まるで覚えていないので、おそらくは流出したんだろう。

僕の初夢が流出したところで誰も得しないし、そもそも誰も僕の初夢なんて見ないだろう。

とにかく寝室から這い出て、ウチの猫に朝ごはんをあげようとした。

やはりウチの猫は正月は起きるのが早い。僕の寝坊をめちゃくちゃ怒っている。

「ごめん、ごめん、今急いでゴハン用意するから」

僕はペット福袋のなかからスペシャルドライフードを取り出す。(福袋は先にウチの猫によって開けてあった)

ところがウチの猫は首を振る。怒っている理由は別にあるらしい。

おそるおそる尋ねてみると、

「おたくの初夢がこっちの夢に混入してきてとても迷惑した」というのだ。

え!?

そんな映画のパプリカみたいなこと言われてもなぁ。

「せっかくの初夢が台無しだ」と言いながら壁を爪でガリガリしている。牙もむき出しだ。

僕が事情を説明すると、急に目を大きくして、“心当たりがある”と尻尾を立てた。

『ニャノニマス』からの犯行声明を受け取っていたらしい。

(それなら早く言ってけれ)

というわけで、僕らはさっさと朝ごはんをすませて、奪われた初夢の足取りを追うことになった。

「どんな足跡も見逃さない」と心強いウチの猫。

僕も『使わないものBOX』のなかから虫眼鏡を見つけ出して臨戦態勢だ。

さあ、行こう!

待ってろよニャノニマス!

勢いよく玄関のドアを開けた。

と、そこまでが

僕の覚えている範囲の今年の初夢だ。



                      終

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