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猫の日を巡る冒険


朝からずっとバレないように黙っていたけどダメだった。

とうとうウチの猫が僕に言った。

「今日って猫の日だよね」

2月22日、その通りだ。

僕はとぼけたように「そうだったかな」と答えた。

これまでの猫の日にウチの猫がしでかした数々の出来事を思い出しながら……。

猫だから許されることって意外と多い。たとえそれが国家を揺るがすことであっても……。

猫の日になると毎年地球上のどこかで革命が起こった。愛と正義の名の下に。もちろんウチの猫主導だ。

いくつかの国境線に猫耳がついてることでもお分かりいただけるだろう。

人間が猫の日を定めた。奇しくもそのことがウチの猫の何かに触れてしまい、光明と英知の高みへと引き上げてしまったようだ。

僕がゴハンをあげた分より多めに自分で足してしっかりと栄養をつけているあたり、やはり今年も派手にやるつもりだろう。今年は特に先鋭化しているようにも見える。

これまでの1年間、僕が必死の思いで日付がわかるものを家の中から排除してきた努力は虚しく終わった。ただ単に僕1人がソフトな浦島太郎になっただけだ。

ゴハンを食べ終えるとウチの猫は毛繕いをしながら猫の日に浮かれる世間をSNSなどでさらっと確認して微笑した。

「隙だらけだな、まるで革命してくれって言ってるようなもんだ」

ペロペロしながら喋るのがとても上手い。演説の時もきっとマイクにこうやってるんだろう。

『猫の日に行動できるのは猫だけさ』地球儀を回すその前足、そして肉球。

猫は寒い冬に丸くなって自分の体温で温まることができる。地球もそうなれたらきっと平和だ。

ウチの猫は「皆さまお誘い合わせの上」と、仲間に連絡を取ったあとで、部屋の中で信号弾を二発打った。

信号弾は天井に当たって落ちて、今日僕のやることが増えた。

これはある革命家の言葉だ。

『革命のためなら悪魔とでも手を結ぶ』。

そこに『猫』と言う一文字をそっと加えたい。

僕は関係格省庁に緊急連絡して、現状を伝えた。

そして、

「猫の日はそう言う電話が多いんです」という例年通りのビビットな回答をもらった。

ニュースが伝えないことの多くは実は猫なのだ。

僕は床板を外した下にウチの猫が隠してある武器を取り出してあげるふりをして、この日のために用意しておいたAIマウスを放した。

すると、目論見通りに追いかけ始めるウチの猫。

このマウスは追いかければ追いかけるほど、猫を冷静にさせる効果を持つように開発されたものだ。

そして何より設定した時間までは絶対に捕まらないようにできている。

もちろん2月23日にセットした。

ドタンバタンと騒がしくなる家の中。

さて、これだけやっても猫の日に世界情勢が変わっちゃったら

ごめんなさい。



                      終





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