見出し画像

ごめん寝。


ある夜、僕が仕事から疲れて帰宅すると、ウチの猫がベッドの上でごめん寝をしていた。

とても気持ちよさそうに寝ているので、

起こさないように気をつけていたつもりだったけど、微かな物音でウチの猫は起きてしまい、顔を上げてこちらを見た。

「やあ、おかえり」

「やあ、おはよう」

お互いにあくび混じりで受け答えを済ませる。

ついでだけど、『ごめん寝』に関していつも気になっていたことを尋ねてみた。

「あのさ、ごめん寝って実際のところ寝心地とかどうなの?」

すると、ウチの猫が急に憮然とした表情になり、起き上がってあぐらを描くと、どっしりとした姿勢で僕を見た。何か悪いこと言ったかな?

「そもそも大きな誤解をしている」とウチの猫。

この話、長くなったらやだな。僕はできるだけ早くシャワーを浴びて寝たかった。

お構いなしなウチの猫は、「あれは、寝ているわけじゃない」と首を振る。

「じゃあ、何なのか」と僕がさらに尋ねると、

「あれは、ごめん寝じゃなくてありが頭(とう)なのだ」と、前足で膝を打った。


僕に感謝の気持ちを表してくれていたんだそうだ。

不意をつかれた形で僕は感動してしまい、

涙が出た。


                      終

いいなと思ったら応援しよう!