猫が読みたいと思う小説
ある日突然、ウチの猫が「小説が読みたい」と言い出した。
「猫が読みたいと思うような小説を買ってきて欲しい」とのこと。晴読と雨読がしたいんだそうだ。
ウチの猫はお留守番をするとマイレージみたいなのが貯まるので、今回はそれも使って良いとのこと。
僕は猫の言うことはなんでも聞いてしまうので、さっそく紀伊國屋書店に向かった。
とりあえず書店員さんに、「猫でも読める小説ってありますか?」と尋ねると、
「只今、入荷待ちです」とのこと……。
空前のペットブームとは聞いていたが、まさかここまでとは。
とにかく僕はその本を予約して帰った。
『〇〇大全』みたいにとても高額な本だ。
帰る道すがら、いったいどんな本なんだろうと考えてみた。
書店員の人でさえまだ実物を見たことがないらしい。
きっと猫が最後まで飽きずに読んでしまうような仕掛けがいっぱい散りばめられた小説なんだろう。
そんな小説が書けるくらいにすごい人はいつかお札になるような人かもしれない。
特に寄り道することなく家に戻ると、いつもは出迎えてくれるウチの猫が今日は来なかった。
心配して奥まで行ってみると、
猫は僕が積んであった小説の上で気持ちよさそうに眠っていた。
猫にとって小説なんて所詮この程度のものなんだろう。
終
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