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僕の彼女は風俗嬢#蛇足編④

こちらは以下の続きです。
僕の彼女は風俗嬢#蛇足編③|K|note



ここ最近、僕は体調を崩しがちだ。

大病ではないが、中々厄介なことになっている。

まずは脂漏性皮膚炎。

頬に赤い痣のようなものが出来、痒くなる。

掻くとそこが炎症を起こし、しまいには膿が出るようになった。

次にウィルス性の結膜炎。

最初は目が充血するくらいだった。

片目から両目になり、視力が弱まっていく。

どちらも中々治らずズルズルと治療を続けている。

こういった不調が出たことは生きてきて今まで一度もなかった。

風邪すらも数年に一度レベルでいたって健康だった。

僕がこんな貧弱体質になってしまったのは紗耶香ちゃんとの関係が始まってからだ。

そう。自覚できるほどの巨大なストレスに見舞われているのだ。

一緒にいる時は堪らなく楽しい。

可愛いし面白いし優しいし。

でも離れた時の落差がとてつもないのだ。

分かり切っていたことではあるがやはり仕事の面で心が持たない。


僕はそもそも風俗嬢という仕事にあまり偏見がある方ではない。

汚らわしいとかも別に思わないし、お金のために嫌なコトでも頑張れるのはそこら辺で働いている人となんら変わらないマインドだと思っている。

むしろ普通の人より頑張れるから働けているんだろうし、立派だと思う。

ただ、これは仕事へ渋々行っている時に限る。

風俗の仕事が楽しい、天職だ。そう考えている人のことはあまり良く思えない。特に付き合ったり結婚を考えるとなると尚更。

見ず知らずの男性を自分の身体で興奮させ、果てさせる。

この行為に嫌悪感を抱かない女性を僕は心から受け入れられないと思う。

いつか紗耶香ちゃんにも確認してみたい。


話は戻るが、分かっていても彼女が風俗嬢だという事実はキツい。

ふと好きな人を想って今頃何してるのかなって考えた瞬間に吐き気がする。

だからこの頃は紗耶香ちゃんのことをなるべく考えないようにしてる。

前に夏でこの仕事を終わりにして新しい職探しをすると言っていた。

何月までが夏なのかは人によるかもしれないが、9月になっても出勤が減る気配はない。

むしろ9月は僕が忙しいのもあるが今までよりも会える回数が少ない。

何より一番きつかったのはお客さんと僕の誕生日を天秤にかけていたことだ。

なんなら負けそうだった。

誕生日のお祝いでどこかにお出かけしようってことになった。

空いてる日を伝えると煮え切らない返事があった。

その日は遠方から久々に来てくれるお客さんの予約が入っているとのこと。

いくら遠くから来るからって比べないで欲しかった。

「仕事と私どっちが大事なの?」みたいなことは言いたくない。

でもドライな僕はもうやめることが分かっている上にしょっちゅう来るわけでもない一人のお客さんをそこまで手厚く扱う必要があるのかと疑問に思ってしまう。

結局そのお客さんは偶然デートの前日に予定がシフトしたらしく事なきを得た。

でもきっと僕はそのお客さんのことをデートの最中も考えてしまうだろう。

紗耶香ちゃんは優しい。

きっと一人一人のお客さんをとても大切にしている。

今思えば客と風俗嬢の関係だった頃からまるで彼女の様だった。

とても嫌々仕事してるようには見えない完ぺきな接客だった。

それが自然体なのか自分を制してそうしていたのか。

前者だった場合、僕は耐えられるのか不安になる。

せめて僕と出会ったことで、僕と付き合ったことで変わって欲しい。

そしたら少しは救われる。

正直この仕事が天職だと思っているのなら彼女は辞められないと思う。

楽しい上にこんな大金が入ってくるならそれ以上にいい仕事はこの世にない。

普通の昼職なんて絶対に耐えられないと思う。

だから僕は願う。

紗耶香ちゃんの人生だし、唯一の稼ぎなのに僕から辞めろなんて言えない。

僕の収入が紗耶香ちゃんを養って余りある豊かさならそんなことも言えたかもしれない。

でもそうはいかない。

僕は彼女を信じる。

限界を迎えるまでは。


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