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僕の彼女は風俗嬢#4
こちらは以下の続きです。
僕の彼女は風俗嬢#3|K|note
それから2日間。紗耶香ちゃんからの返事はない。
いつものことだと思えばその通りだが、今回は誘いの連絡だから1日も待てば返事が来ると思っていた。
前に提示してもらった遊びに行ける日の中からデート日を選んだ。
きっと日程の調整で時間を取られているということは無い。
もちろんその間に予定を入れてしまったのであればそれはしょうがない。
ただ次週の話なのでそれなりに早く返事が欲しいのも本音だ。
追撃LINEはしたくない。
僕はひたすら待つことにした。
今回は絶対にこちらから送らない。
もしこのまま終わるようなことがあったら確実に後悔が残るけど。
返事が無いままお店を通して会うのは正直一番気まずい。
何が正解なのか分からないけど今は我慢の時だと信じて吉報を待つ。
返事が来た。
紗耶香ちゃんが僕をすごい褒めてくれる。
どこまでお世辞か分からないけど好きな女性からべた褒めされて悪い気はしない。
デートを提案した日には別の用事を入れてしまったそうだ。
リスケできるか確認してくれるらしい。
希望的観測かもしれないが恐らく行きたくなかったら用事がある時点で断ると思う。
紗耶香ちゃんがどこまでも優しいのか。
それとも僕のことを真剣に考えてくれてるのか。
返事が遅いのにはようやく慣れてきた。
いつも紗耶香ちゃんのことを考えてしまうが普通のペースで返信されていたらきっと僕は何も手につかなくなってしまうと思う。
感謝しなければいけないのかもしれない。
後日連絡があった。
予定を空けてくれた。
そろそろ演技だ営業だっていう考えは捨ててもいいかもしれない。
返事が遅い件に関しても弁明があった。
シンプルに行動が遅いだけだと。
普通の女子なら何だその言い訳って思うかもしれないけど
紗耶香ちゃんならあり得る気がしてくる。
何をしようかウキウキしてる。
初恋の時くらい胸が高鳴っている。
その日も仕事終わりに会う形なのでディナーを予約した。
今回は紗耶香ちゃんのもっとプライベートな部分を掘り下げたいと思っている。
正直彼女が何でこの仕事をしているのか興味がある。
将来のビジョンなんかも。
結婚願望はあるって言ってたけど結婚後の仕事はどうするのかとか色んなことが気になる。
でもやっぱりそういった質問って嫌われそうだしなかなか口に出せない。
別に風俗で仕事をしていることに偏見は無い方だと思うし、むしろ自分じゃ絶対出来ないって思うから尊敬する面すらある。
現に紗耶香ちゃんと出会わせてくれたのも風俗があったからだし。
でも風俗への理解と自分の彼女、妻がそこで働くのはやっぱりワケが違うと思う。
キスとかフ〇ラとかのサービスや相手から触られるってことは無いにしろ、知らない男と毎晩裸で密着している、知らない男のイチモツをしごいているという事実はやはり精神的にしんどい。
それに紗耶香ちゃんを信じられないってことじゃないが、現にお客さんである僕とキスやら何やら色々と一線を越えてしまったという前科(?)があるのでもし僕以上に魅力的な人が現れたらと思うと・・・。
なのでいつかは仕事のことにも触れなきゃいけないなと思ってる。
理想は向こうから話してくれること。
僕はその時が来るまでグッとこらえようと思う。
デリケートな部分だし。
そんなこんなでモヤモヤしながらも毎日のLINEは続いていた。
前に返信スピードの話をしてから明らかに変わった。
無理にでも頑張ってほしいわけじゃないけど何だか自分のことを思って早くしようと心掛けてくれている感じがして嬉しい。
何気ない会話の中に好きであることを伝えるメッセージを入れて少しでも気を引きたかった。
態度や返信内容から見れば紗耶香ちゃんは僕に対して好意的な印象を持ってくれていると思う。
でも「好き」ってワードはどこにも無い。
僕は一方的に伝えすぎていて少し引かれているかもしれないと感じた。
見返すとラブラブな彼女に送るような文面もチラホラ…。
恋は盲目とはこの事だなって思った。
ちょっと恥ずかしくなった僕は「紗耶香ちゃんにも好きになってもらえるよう頑張る」と両想いと勘違いしてるわけじゃないって事を遠回し(?)に伝えた。
すると会いたいって思うし好きかもって思うけど本当の自分はお店の自分と違うからどうしても不安で一歩踏み込めないってゆう本音を明かしてくれた。
確かにまだ一度お店を通さずに会っただけで紗耶香ちゃんのことは何も知らない。それで好きだなんだって言ってる自分がちょっと恥ずかしくなった。
お互いのことをもっと深く知っていこうって心から思った。
僕はデートの3日後にお店を通して紗耶香ちゃんと会うことにした。
この日を最後にしようかと考えている。
太客が居なくなるしんどさは配信活動を通じて僕もよく理解している。
だから良かれと思って指名を続けていたが、このせいできっと紗耶香ちゃんは苦しんでいる気がした。
あえてお店を通して会い、お金を払って終わりを告げることできっぱり新しい関係を始められるような気がした。
それも勝手な希望的観測でしかないが。
さらにその先のデートの予定も取り付けた。
シフトの都合上、土日の休みは早めに申請しないといけないようで1日だけ時間をもらうことにした。
たまたま自分のスケジュール的に土日を空けられない日が多かったのもあって控えめになってしまったけど逆にがっつき過ぎるのもよくないかなって思ったので良しとする。
おしゃれな街で小洒落たデートをすることにした。
普段夜しか会えないので昼とか夕方くらいから会おうと思ってる。
とても楽しみでお出かけ用の服を買ってしまった。
楽しみな予定が沢山あって嬉しい反面一つ一つの貴重さが薄れているような気もした。
どんだけワガママなんだ自分…。
ある日、すごいキモいのは承知の上で紗耶香ちゃんのお店の掲示板を覗いてしまった。
何か紗耶香ちゃんについて書かれていることはないかなぁと。
そこで何やら怪しい文面を見つけた。
『紗耶香 人を選んで基盤 NN』
意味が分からなかったが調べたらすぐに出てきた。
一瞬時が止まった。
冗談だろ?
あまり受け入れたくなかった。
というか掲示板なんか見てしまった自分に腹が立った。
紗耶香ちゃんだけを見ていればこんな思いせずに済んだのに。
でもその情報はどこからなんだろう。。って思えてきた。
その書き込みをしていた人は紗耶香ちゃん以外の嬢についてもそういった情報を連ねていた。
もしかしたら冷やかしと言うか妄想と言うか事実無根なのかもってゆう淡い期待を抱くことで気持ちを鎮静化した。
そんなこんなで葛藤している時にちょうど本人から連絡が来る。
「配信行ってみたいからリスナーデビューしていい?」だって…。
ああ、どこまでも可愛い・・・。
なんとなく食の趣味も合うような気がしている。
あまりにも早いのは分かっているが結婚したらどんな感じ家庭になるのかと妄想することがある。
これは紗耶香ちゃんに限らず今まで付き合ったりした人とは必ずシミュレーションするのだが、紗耶香ちゃんとの生活に一切の苦はなかった。
もちろんまだ良い部分しか見ていないというのはあるが、過去一幸せなビジョンが頭に浮かんだ。
特にウェディングドレスが似合うという点では断トツの一位だ。
仕事を辞めた途端にストレスから解放され太ってしまうとかはあるかもしれない。
もしそうなっても愛せるかどうかをこれからしっかりと見極めていきたいと思ってる。
かねてから予定していた仕事終わりのデート。
待ち合わせの時間通りに彼女は現れた。
今日も可愛くて少し照れてしまう。
一緒に予約していたお店へ向かう。
席に着き、食事を楽しみつつ会話に花を咲かせた。
翌々日にライブが控えていることもあってノンアルコールでの会だった。
昔の話をメインにお互いの思い出を語り合った。
これまで知っているようで知らなかった紗耶香ちゃんの過去を色々と知ることもできた。
また、話の流れで苗字も教えてもらえた。
お互いに多くの情報を交換した。
沢山の話をして、お手洗いで席を外した。
戻ってきたときに紗耶香ちゃんがお釣りを受け取っていた。
すんごいスマートに支払いを済まされてしまった。
僕がやる予定だったことを・・・。
そこはシンプルに感謝してごちそうになった。
店を出ると紗耶香ちゃんが神妙な面持ちで話し始めた。
「言わなきゃいけないことがある」と
僕はなんだか不穏な空気を感じつつ、主導権を紗耶香ちゃんに預けた。
嫌われるかもしれない、言っておけばよかったとしきりにうなだれている。
もしかして既婚者なのか、子持ちなのかと色んな想像を巡らせた。
どうしても言えなさそうにしているのであえて聞いてみた。
「実はもう結婚してるとか?子供がいるとか?」
・・・違った。
安心した。
躊躇する紗耶香ちゃんとうっすら雨が降る中歩いた。
駅前を少し離れたその空間はイルミネーションのように綺麗な照明で彩られている。
光の中を進み、少しだけ暗くなった辺りで歩みを止めた。
人も居ないし何かを打ち明けるには話しやすそうな雰囲気だと思った。
紗耶香ちゃんは懸命に言葉を絞り出した。
年齢の話だった。
お店のプロフィールに書いてある年齢と違うという話だ。
そんなことは常識の範囲内だと笑い飛ばした。
でも普通じゃないくらい乖離しているというのだ。
正直普通が分からないので何とも言えないが…
そしてついに打ち明けてくれた。
僕より3歳年上だった。
何とも思わなかった。
むしろ近くて良かったと安心した。
ものすごいためるから実はもう40超えてて色んな薬で若さキープしててみたいな話かと思って覚悟していた。
確かに紗耶香ちゃんからしたら重大な案件かもしれないが僕は全くと言っていいほど驚かなかった。
年齢のことなんかよりも打ち明けてくれたことが嬉しくて思わず抱きしめた。
信頼してもらえてるんだなって思えたし、特別な存在として見てくれているんだなって実感することが出来た。
家路につき、お礼のLINEを送った。
するともう一個どうしても言わなきゃいけないことがあると告げられた。
今回の一件よりも言いにくいことだという。
想像を巡らせると整形まみれとかギャンブル依存とか薬物中毒とか借金地獄とかなんかすんごいことになるから考えるのをやめた。
次はライブ終わりの2日後に会える。
ここで打ち明けてもらえるかどうかは分からないが胸にしこりが残った感じがした。