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続・僕の彼女は風俗嬢#2
こちらは以下の続きです。
続・僕の彼女は風俗嬢#1|K|note
会って何を話そう。
まず第一に聞きたいのは
「僕のことを今どう思っているのか」
好きでいてくれてるけど仕事を辞められない。
申し訳なさとか気まずさで見て見ぬふりをしてしまった。
そんなオチなら僕は一番安心するだろう。
状況は2か月前に逆戻りだが、きっと彼女を愛することが出来る。
もう好きな気持ちは無く、冷めてしまった。
一応義理立てとして会うことにはした。
だとしたら僕は自分の想いをしっかり伝えてこの恋を終わらせる。
会ってもらえないまま煙に巻かれるより100倍マシだ。
「なぜ約束を破ったのか」
これに関しては何か理由があったと思いたい。
仕事を辞められない何かが。
であれば僕がどうこう言うポイントではなくなるので逆にそうであってほしい。
一番怖いのはこの仕事が好きだからという回答。
前にも述べたことがあるが、僕は風俗嬢という仕事を割と尊敬の目で見ている。
嫌なことに耐えられるから。
僕には出来ない。そんな精神力はない。
でも心から楽しんでいる人に対しては少し軽蔑してしまう。
きつい仕事だけど大きなお金を得られるからというのであれば応援したくないけど否定はしない。
内容が好きなのであれば僕は付き合っていく自信がないし、結婚は尚更できない。
彼女は以前後ろめたい気持ちでいっぱいだと。
早く辞めたいのにずるずる引きずってしまっていると言っていた。
でも今回のきっかけがあっても辞められなかった。
となると何か裏がある気はする。
そして最も僕の中で腑に落ちないのは
「なぜ連絡を無視し続けたのか」
僕がクリスマスの予定を聞いた時、彼女はきっともうこの道を歩む決心をしていた。
だから見て見ぬふりをしたのだろう。
でもそこで「冷めた」とか「辞められない」って言えたんじゃないか?
最後の週、出勤予定に「〇」が並んでいるのを発見し、LINEした際も彼女は無視を決め込んだ。
義理堅いと思っていた彼女に限ってそんなことはしないだろうと勝手に思ってしまった僕が愚かなのかもしれない。
でも最後の電話で「冷めないでね」と言っていた紗耶香ちゃん。
こちらのセリフだって返すと「冷めるわけない」と念を押してくれた紗耶香ちゃん。
だからこそ僕は信じ抜いた。この子に裏切られるわけがないと。
真相は会って話すまで分からない。
考えるだけ無駄と分かりつつも色々と思考を巡らせてしまう。
刻一刻と会う時間が近づいてくる。
そしてインターホンが鳴る。
ドアを開け、2か月ぶりに紗耶香ちゃんと再会した。
申し訳なさそうにする彼女は僕と目を合わせてくれない。
ベッドに腰掛ける僕の斜め前で床に正座し、しきりに謝られる。
いっぱいいっぱいになっている様子だったので、ここは僕が冷静にならなきゃいけない。
まず、僕に対して冷めてしまっているのかを尋ねたが、返答が整理できていない為か順を追ってこの二か月のことを話し始めた。
会わなくなった最初の1か月は僕との思い出を振り返って会いたいなぁと思ってくれていたらしい。
僕の音楽活動についても一人のファンとしてチェックしていたようだが、それを見れば見るほど輝いて見えて自分を蔑むようになっていったと言う。
「Kは普通の仕事をしながらこんなに輝いているのに私はこういった仕事のせいで人に自慢できることも無い」と。
「自分なんかがこんなにキラキラしている人と付き合ってていいのか。」
「結婚なんてしたら自分の過去が足を引っ張ってしまうのではないか。」
そう考えるようになっていったと。
また、仕事を続けながら就活は出来ないと気付いたそうだ。
辞めた後、職が見つからずニート状態が続けばいろんな面で迷惑をかけてしまうと思ったらしい。
『付き合ってはいけない相手』×『辞める不安』
それが折り重なって心がパンクしてしまったそうだ。
それもあって店に辞めると伝えられず、今日まで続いてしまったとのことだ。
また、僕からの連絡も怖くて見られなかったらしい。
辞めると伝えられなかった後ろめたさもあり、蓋をしてしまったと。
これは流石に叱った。
子供過ぎると。
ひと通り話し終えて、僕は再度尋ねた。
「僕のことを今どう思っているのか」
申し訳なさでいっぱいで好きとかそういう次元のことは言えないと。
返信せずに無視してしまった時点で自分は一生独りだって覚悟をしたらしい。
直接的には言っていなかったが、捉えようによっては気持ちを切ったつもりなのかもしれない。
僕は質問を変えた。
「普通の幸せはもう要らない?」
続けて僕はまだ紗耶香ちゃんのことが大好きだし、まだ変わらず幸せにする気でいると伝えた。
ズルい質問のしかただったかもしれない。
彼女は長い時間をかけて「ワガママを言っても良いのであれば欲しい」と言ってくれた。
「このまま今まで通り付きあって僕との幸せを目指すか、ここで別れて他の幸せを探すか、どちらが良い?」
彼女は僕との将来を選んでくれた。
僕は床にへたり込む紗耶香ちゃんの手を取り、自分の傍に引き寄せ、2か月ぶりに抱きしめた。
久々の感覚。
ぽっかり空いていた穴が温もりで満たされていくような。
そんな気分。
ずっと会いたかった。
この穴を満たすために見たくもない写メ日記をチェックした。
毎日出勤予定を確認した。
少しでも紗耶香ちゃんの存在を感じたくて。
今ようやく直接触れることが出来た。
会える喜び、紗耶香ちゃんの尊さをこれでもかってくらい実感した。
時間は午前3時。
この一週間寝不足でフラフラだったのとこれからも一緒に居られる安心感で僕が眠りにつくまでさほど時間を要さなかった。