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後日談#4

時が経つのは早い。

いつの間にか冬を超え、桜も既に散り始めている。


未だ紗耶香ちゃんからの連絡は無し。


僕にもこの数か月で変化があった。

その原因は失恋を経たからと言える。


紗耶香ちゃんのことを忘れるために新しく彼女を作ろうと思った。

マッチングアプリ経由である人と会った。

その子は小柄で少し地味だが元気のある人だった。

歳は一緒。

顔は可愛い方だと思う。
マスクを取った時に少しギャップを感じたが、全然美女の部類だ。

その子とは初対面とは思えないほど楽しく話せた気がする。

一緒に水族館へ行ったりベタなデートをしてみた。

食事に行き、帰り際。

その子はまだ帰りたくないと言う。

出会った日にホテルというのも考えていなかったので、カラオケに行くことに。

2曲くらい歌った後に僕のことを理想だと言ってくれた。

今既に付き合いたいと思っていると。

正直僕には全くその気が無かったが、気分は良かった。

それなりに可愛い子からそこまで言われ、お酒も入り、大好きな歌を歌っている。

その場で付き合おうとは言わなかったが、終電を無くしたと言う彼女を置いていくわけにもいかず、ホテルへと向かった。

僕は着くや否やお風呂に入った。
出ると彼女は寝ていた。

口を開けて寝るその子には警戒心が微塵も無いようだった。
でもその無防備な姿に愛おしさは感じなかった。

そのままソファーで寝かしておくのもアリかと思ったが、お風呂にも入りたいだろうし起こした。

恥ずかしそうにしていた。

バスローブを羽織って出てきた彼女はいかにもな雰囲気を醸し出していた。

ベッドに入り、ちょっかいをかけてくる彼女。

でも僕はどうにもやる気が起きない。

少しだけ僕も応戦したが、やはり興奮することも無くそのまま寝てしまった。

きっと大学生の頃なら3回くらいしていたのかなって思った。


その後ゆっくり起きてお昼を食べ、解散した。


昔からそうだが、グイグイ来られるとどうしても冷めてしまう。

気のない相手からのアピールは特に逆効果だ。

それがまさに今回のケースに当てはまった。


それからもLINEは来続け、ちょくちょく返してはいたが、ある時からは無視するようになってしまった。

ふと紗耶香ちゃんが頭に浮かんだ。

もしかして今の僕と同じ状況だった…?


そう思った時、遂に気持ちが吹っ切れた。

どこかで僕のことを好きでいてくれてるかもって。

そんな淡い期待が溶けて消えていくような。

勝手に自分の心を縛っていた鎖が音を立てて壊れていくような。

なんとも形容しがたい感覚だった。


それからはほとんど紗耶香ちゃんのことを考えなくなった。

なんか心が健康になったような。

目の前にずっとかかってたフィルターが取り払われたような。


音楽と仕事により一層打ち込むことが出来た。


そんな時、紗耶香ちゃんからLINEが届く。



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