
僕の彼女は風俗嬢#5
こちらは以下の続きです。
僕の彼女は風俗嬢#4|K|note
ライブは短い準備期間にも関わらず大成功と言える内容だった。
各演者の魅力が遺憾なく発揮され、拙い運営の穴をカバーするようにイベントは滞りなく終了した。
そしてその報告やライブでメイクして衣装を着飾った姿の写真を紗耶香ちゃんに送った。
小っ恥ずかしかったけど喜んでもらえた。
ダラダラとやり取りを続けて紗耶香ちゃんがもうそろそろ家に来る時間。
自宅に来るのはかなり久々だ。
大掃除をするつもりが大二度寝してしまったので部屋は散らかったままだった。
インターホンが鳴り、ドアを開けると初めて会った時と変わらない天使が居た。
お店を通して会っているが雰囲気はこれまでと明らかに違う。
外で2回デートを重ねて毎日LINEのやり取りをしている。
次の週もデートの予定がある。
秘密も共有した。
距離は確実に縮まっているように感じられた。
お金を払う瞬間は逆に虚しさを感じるようになった。
これまでは会える幸せに対してお金を支払うことは当たり前だったし、何も苦じゃなかった。
今も別に苦とは思わないが、このお金でもっと他のことをしてあげられるのにと考えてしまう。
ライブの話や写真を見せたり普通のカップルみたいに過ごした。
少ししたら一緒にやるために買ったボードゲーム(カードゲーム?)で遊んだ。
照れる紗耶香ちゃんが最高に可愛かった。
そして例の言えてないことについての話になった。
紗耶香ちゃんは僕の肩を揉みながら話してくれた。
これまでの経歴についてだ。
身バレ防止で細かい部分は伏せるが、これまでおよそ5年間の夜職経験があるということだった。
本人はとても重く考えていて、嫌われる覚悟だと言っていたが、これまた年齢の時と一緒で大して気にならなかった。
というのも前に見てしまった掲示板でだいぶ前から働いているのを知ってしまっていたからだ。
だからこそ返しきれないほどの借金とかお昼普通の仕事が出来ない理由があったりするのかと疑ってしまった。
お金を貯めて海外移住するために手っ取り早く稼げる手段として始めたとのことだった。
それがだらだらと続いてしまい、今に至るという。
目標を切り替えてマッサージ店の開店資金等に充てようと今は新しい目標のもと頑張っているそうだ。
なんか全然幻滅するような話じゃなかったし、むしろ応援したい。
これで不安要素はあらかた消えた。
後はこうゆうお店で働いている女が本当にお付き合いなんてしていいのかという葛藤があるとのこと。
こればっかりは紗耶香ちゃん自身の問題だと思う。
僕がいくら気にしないといったって本人は気になるだろうし。
その気持ちが落ち着くまで待ってほしいと言われた。
でもこれっていつまで待てばいいんだろう。
いいよって言ってもらってから付き合ってください!って言うのなんかおかしいよな?と気づいた。
だから僕は次のデートで告白しようと思う。
答えはすぐに求めなくてもいいかなと。
今の状況で僕がボールを持つのは明らかにおかしい気がするので。
いっそ投げてしまおうと。
次会う場所はおしゃれでデートに適した街。
僕はそこで思いのたけをぶつけようと思う。
翌日、紗耶香ちゃんはお休みの日だった。
僕は仕事終わりに夜電話で話さないかと持ち掛けた。
反応は良い感じで二つ返事の快諾であった。
僕は毎日の配信業を終え、お風呂をさっと済ませて寝る準備に入った。
紗耶香ちゃんから電話が掛かってくる。
こうやって話すのは初めてだ。
声は実際に会った時と変わらず僕を心から癒してくれる。
彼女は職業病なのか会話を絶やさないよう沢山の質問を投げかけてくれる。
おかげで自分ばかり話してしまっている気がした。
僕は紗耶香ちゃんにも話す側で楽しんでほしいなと日頃思っていた。
女性は話すのが好きだと色んな方面で耳にするし、きっと紗耶香ちゃんも当てはまるだろうと思っていたから。
色んな質問に答えていく内に僕が紗耶香ちゃんのお店を利用した経緯を話そうと思った。
すると気のせいかもしれないが、紗耶香ちゃんの声から安心感のようなものを感じた。
やっぱりどこかで僕が風俗狂いだったらどうしようとか思ってくれていたのかなって勝手に嬉しくなった。
紗耶香ちゃんはここ数年このお店で働きづめだ。
友達にも言えず距離が開き、捌け口の無い日々が続いていたようだ。
僕は正直紗耶香ちゃんと他のお客さんの話なんて聞きたくない。
でも、僕が捌け口になることで紗耶香ちゃんが少しでも楽になればと思ってなんでも聞く決心をした。
紗耶香ちゃんはこういった仕事を始めてすぐの頃、お客さんと店外で会ってしまったらしい。それが悪い方向に進み、二度とそういった誘いを受けないと誓ったそうだ。
だから僕はその誓いをこじ開けた特別な存在らしい。
有難かった。
疑り深い僕だがもう紗耶香ちゃんを疑うのはやめようと思う。
結局真相は分からないわけだし、彼女が僕を好意的に思ってくれてることは事実だ。じゃないとこんな電話の誘いになんか乗ってくれないだろうし週一くらいでデートもしてくれないだろう。
LINEも毎日送りあってる今の状況はそこら辺のカップルよりもよっぽど熱い。
そして何より純だと思う。
ひとしきり話して時計を見ると午前3時前。
次の日仕事の僕はそろそろ寝ないといけない時間だ。
このまま話していたかったが、遅刻でもして紗耶香ちゃんが罪悪感に見舞われるのも嫌だったので電話を切ることにした。
最後の最後に好きだと言い放って通話の終了ボタンを押した。
紗耶香ちゃんからも好きですとメッセージをもらった。
まさか30手前にしてこんなやり取りが出来ると思わなかった・・・。
気分は青春時代のようだった。