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後日談#5
紗耶香ちゃんから届いたLINEの内容はフェスに関してのことだった。
その日はイベントの前の週。
僕は彼女からの連絡がなかったので同期を誘っていた。
紗耶香ちゃんは僕のことだから2人分のチケットを買ってしまっただろうと察し、Paypayで支払わせてほしいとLINEをしてきたのだ。
たしかに行こうと話していた時点でチケットを購入していた。
その辺を察してくれたのはちゃんと理解してもらえてる感じがして嬉しかった。
同期と行くからお金は要らないと突き返した。
ちなみに彼女も結局フェスには行くらしい。
会って不快な思いをさせたらごめんねと言われた。
彼氏でも出来たのだろうか。
少しだけモヤモヤした。
当日は彼女のことをすっかり忘れるくらいに楽しんだ。
移動中少しだけ周辺を見回してしまう自分も居たが、しっかりとイベントを楽しんだ。
興奮冷めやらぬ中、帰りに紗耶香ちゃんへLINEを送った。
彼女もすごく楽しめたらしい。
でもまだ罪悪感が晴れないらしく、お金を受け取って欲しいと言われた。
僕はまた今度ご飯に行く時でもあれば奢ってくれと伝えた。
紗耶香ちゃんからそれに対する返信があったが、僕は何も返さないまま今に至る。
今思えば彼女からのLINEが来たまま僕が返信しないでいるのって初めてかもしれない。
いつも待つ日々だった。無視されたり、裏切られてもずっと待っていた。好きだったから。
彼女からの連絡なら何でも嬉しかった。
だから苦手なLINEもせっせと返した。
少しでも自分のことを考えていて欲しくて。
でも今は僕が流れを断ち切った。
やはり気持ちを吹っ切ることが出来たんだって確信した。
さらに時は進み、彼女はお店を辞めた。
今何しているかは分からない。
完全に夜の世界から足を洗えたんだろうか。
年上だけどどこか守ってあげたくなるような危うさのある紗耶香ちゃん。
少し心配になるがきっと新生活を頑張っていることだろう。
お店を使えないってことはもう二度会えないかもしれないということ。
そうやって考えてしまうと少し寂しくもなる。
もうすぐ夏。
紗耶香ちゃんと付き合った季節。
もう一年か。
どうか幸せでいて欲しい。
本当は幸せにしてあげたかったけど。
でももう僕は自分の足で歩ける。
君も頑張ってね。