【「番組進行表」って何者…?③】放送部 映像制作BasicTips #13
みなさん、こんにちは!なかちゃん です!
前回から放送部の大会に提出する「番組進行表」の解説を行っております。
前々回(#11)は1種類目の「表紙(様式2−1)」を解説しました。
そして前回(#12)は2種類目の「CUEシート(様式2−2)」を解説しました。
今回は最後、3種類目の「権利処理一覧表」を取り扱います!
では、早速参りましょう!
1.「権利処理一覧表」と「CUEシート」
今回解説する「権利処理一覧表」は、作品で使用している著作物などの利用許諾やイベント・外部施設での取材許諾の処理についてまとめる書類で、前回解説した「CUEシート」とセットで作成する必要がある書類です。
先のCUEシート解説で出てきた「権利処理番号」は、この権利処理一覧表で記載している著作物とCUEシート上の著作物を紐付けるための番号となっています。
従って、「CUEシート」と「権利処理一覧表」に記載する著作物の内容は完全に一致している必要があります。
ではまず、記載方法を解説する前に「権利処理」について簡単に解説します!
2.権利処理とは?
作品内で特定の素材を使用するためには、あらかじめ必要な許可や許諾を得ておく必要があります。
具体的に許可や許諾を得る必要があるのは次のような場合です。
前回解説した「CUEシート」では、この中でも特に著作物について、作品中のどの部分で、どういった形で使用されているのかを記載していました。
今回解説する「権利処理一覧表」では、著作物だけでなく、取材許可など権利処理が必要なすべてのものについて、誰にどんな許可を取らなければならないかなどを記載していきます。
なんとなくでも理解していただけたでしょうか?
それではここからは具体的な記載方法について解説していきます!
3.各項目の書き分け方
「権利処理一覧表」に存在している項目の中には、場合に応じて書き分けを行わなければならないものがいくつかありますので、まずはそれらを解説していきます。
ア.権利処理番号・記号欄
1つ目は「権利処理番号・記号」欄です。
この項目は最初にも記した通り、「権利処理一覧表に記載している著作物」と「CUEシートに記載している著作物」、「各種利用許諾書」を紐付けるための番号となります。
また、イベントの取材許諾や外部の施設などにおける撮影許諾についても、「権利処理一覧表に記載している取材内容・撮影内容」と「許諾書」を紐付けるための記号として用いられます。
この「権利処理番号・記号」欄は、次の通り書き分けを行います。
「取材許諾」や「撮影許諾」については『アルファベット(A,B,C…)』で記載します。
なお、これら取材許諾・撮影許諾については、著作物などよりも前、つまり、一覧表の最初に記載します。「添付書類(詳細は後述)が別で必要になる著作物」については『数字(1,2,3…)』で記載します。
「添付書類が一切必要ない素材」については『数字に◯を付けて(①,②,③…)』記載します。あくまで数字に◯をつけるのであって、◯付きの数字を改めて①から振り直すわけではありません。
なお、どの素材(取材)にどの番号(記号)を振るかは基本的に自由です。特段の理由がなければ、作品に登場する順に番号(記号)を振っていくのがいいと思います!
ただし、権利処理一覧表に記載する際は、上から若い番号(記号)になるように記載します。
また、1つの著作物(取材)に対して、一覧表に記載するのは1度だけです。作品内で同じ著作物が複数回使用されている場合でも、CUEシートには同じ権利処理番号で記載します。
イ.許諾書欄
2つ目は「許諾書」欄です。
この項目は、著作物の「著作権者」および「著作隣接権者」に対して許諾書で許諾を得ているのかについて記載する項目です。
「著作隣接権」とは、歌手や俳優、レコード会社などの『著作物を伝達するのに重要な役割を果たしている者』に対して与えられる権利です(詳しく勉強したい方は別途調べてみてくださいね)。
著作物を利用する際は、著作者と(該当すれば)著作隣接権者のそれぞれに許諾を得る必要がありますので、記入欄もそれぞれにあります。
この「許諾書」欄は、次の通り書き分けを行います。
(著作者・著作隣接権者のどちらも同様の書き分けです。)
「著作者・著作隣接権者として記載した者に許諾を得る場合」については『◯』を記載します。
「著作者として記載した者以外が権利を管理していて、その者に許諾を得る場合」については、著作権を管理している者(団体)の名称を記載します。
例えば、著作者は「曲を作曲した人」だが、著作権を管理しているのが「JASRAC」だった場合は、許諾書欄には『JASRAC』と記載する必要があるということです。「著作権フリーの素材のうち、大会規定で権利処理が不要とされていない場合」については『フリー』と記載します。
「権利が消失している場合」や「権利処理が不要な場合」については、斜線を記載します。
4.「権利処理一覧表(様式2−3)」解説
ここからは、具体的なケースごとに解説をしていきます!
ア.著作物
まずは、通常の著作物を使用した場合の記載についてです。
基本的には画像の通り、使用している著作物の内容を各欄に記載していけば問題ありません。
特に注意するべきポイントを挙げていきますので確認してください!
添付書類が必要なので、権利処理番号は『数字のみ』記載をします。
市販されているCD楽曲については、著作権者が「作曲/作詞者」、著作隣接権者が「レコード会社」となります。
また、楽曲の演奏については、著作権者が「作曲/作詞者」、著作隣接権者が「演奏している者」となります。著作権については、その管理を外部の団体(JASRACやNexToneなど)に委託している場合があります。著作権の管理が外部団体に委託されているかを確認する際は、各団体の作品データベースを利用します(管理団体名で検索すると見つかります)。
外部の団体でなく、作曲/作詞者が著作権を管理している場合は、作曲/作詞者に直接許諾を得る必要があります。楽曲の著作隣接権については、日本レコード協会のWebサイトに掲載されているレコード会社については、日本レコード協会へ申請を行います。
ただし、この場合であっても許諾書欄へは『◯』と記入します。なお、掲載されていないレコード会社へは直接許諾を得る必要があります。オリジナルの所有者は、その著作物を所有している者の名称を記入します。演奏や放送などを制作者が録音・録画した場合は斜線を記入します。
他人が所有しているCDや写真、美術品などを借りた場合は元々所有していた者の名称を記入します。
なお、楽曲についてはレンタルショップや図書館から借りたものは使用できません。必ず、番組制作校(者)で所有しているものを使用します。
イ.自作素材(権利処理不要)
続いて、自作の素材を使用した場合の記載についてです。
主なポイントは次の通りです!
様式2−1(表紙)の「スタッフ・キャスト」欄に記載されている生徒(番組制作者)自身の著作物については『自作』とみなします。それ以外の生徒の著作物は、許諾が必要です。
添付書類が不要なので、権利処理番号は『数字に◯を付けて』記載します。
著作物名は素材の内容がわかるように記載します。
著作隣接権者の欄に「◯◯高校 放送部員(自作)」のように記載して、自作した素材であることを示します。
著作権者・許諾書の欄はすべて斜線で記載します。
ウ.著作権フリー素材
続いて、著作権フリーの素材を使用した場合の記載についてです。
この場合は、使用した素材によって、記載方法が変わります。
まず、画像で 権利処理番号:① となっている素材についてです。
この素材は『大会規定によって、著作権処理が不要とされている』著作権フリーCDの楽曲です(どのメーカーが該当するかは規定を確認すること)。
この場合、当然ながら権利処理が不要なので、権利処理番号は『数字に◯を付けて』記載します。著作権者の欄にはメーカー名を記載して、それ以外の必要のない欄は斜線にします。
次に、画像で 権利処理番号:2 となっている素材についてです。
この素材は『大会規定によって著作権処理が不要とは されていない 』著作権フリー素材です。
この場合、許諾を取る必要はありませんが、「素材名が記載されている部分」と「素材の使用条件が記載されている部分」のコピーを添付書類として提出する必要があります。
従って、権利処理番号は『数字のみ』で記載します。また、許諾書の欄には『フリー』を記載します。それ以外の必要のない欄は斜線にします。
エ.撮影許諾・取材許諾
続いて、著作物ではなく、撮影許諾や取材許諾を取る場合の記載についてです。
主なポイントは次の通りです!
権利処理番号(記号)は『アルファベット』で記載します。
撮影許諾や取材許諾は、まとめて権利処理一覧表の先頭に記載します。著作物についてはその後に続けて記載します。
権利を有する者の欄に、取材や撮影の許諾をもらう相手の名称を記入します。
オ.特殊なケース
最後に、あまり頻度は多くないかもしれませんが、少し特殊なケースの記載について、いくつか具体例を挙げます。
まず、画像で 権利処理番号:1 となっている素材についてです。
これは、個人に宛てられた手紙を使用する場合を想定しています。
この場合は、許諾を手紙の差出人と受取人の両方に得る必要があります。
手紙を作成したのは差出人なのでこちらが著作権者、受取人は著作隣接権者として扱って、それぞれ許諾を得ることになります。
また、オリジナルの所有者についても、手紙を受取人から借りている場合は受取人を所有者として記載します。
続いて、画像で 権利処理番号:2 となっている素材についてです。
これは、著作権が消失した楽曲を使用する場合を想定しています。
著作権は、権利を有する者が亡くなってから70年経過すると消失します。
著作権が消失するということは、許諾を得る必要もなくなります。今回の例も、作曲者のモーツァルトは没後70年が経過していますので、著作権については消失しています。よって、著作権者の欄には、権利が消失していることを記載することになります。
ただし、CDなどの音源を利用している場合、通常の著作物と同様、著作隣接権者(レコード会社)に対しては許諾を得る必要があります。
最後に、画像で 権利処理番号:3 となっている素材についてです。
これは、Nコンの過去作品を使用する場合を想定しています。
この場合は、その過去作品を制作した者に許諾を得る必要があります。また、その過去作品内で新たに権利処理が必要となった場合は、それについても手続きを行う必要があります。
ちなみに、過去作品を利用する場合には、番組中で作品名がわかるようにテロップやコールを入れる必要がありますので注意してください。
ひとまず、これで「権利処理一覧表」の解説は以上です!
ここで挙げた具体例はほんの一部な上に、場合によっては記載方法が変わることもありえますので、大会要項をよく確認した上で作成することが大事です!
5.添付書類(許諾書)
ここまでの解説で何度か「添付書類」や「許諾書」というワードが出てきましたが、こちらについても簡単に解説をしておきます(以下、「添付書類」に統一します)。
この添付書類には、いくつか種類があり、素材や許諾を得る相手などによって添付するものが異なります。
このうち、「音源使用許諾申請書(様式2−4)」と「取材許諾・著作物等の提供のお願い/許諾書(様式2−5)」は、CUEシートや権利処理一覧表と同じExcelファイルに入っています。
必要事項を記入した上で先方へ送り、許諾の可否を記入・返送してもらいます。許諾が得られた場合は、その書類がそのまま許諾書となります。
それ以外の書類は、あらかじめの用意がありませんので、自身で所定の手続きを行って手配する必要があります。詳しい手続きや添付の仕方については要項をよく確認してください。
これら添付書類に共通して言えるポイントは、必ず「その書類に該当する権利処理番号・記号を朱書きする」ことです。
権利処理番号:3 に対する添付書類には、すべてに赤ペンで「3」と記入する必要があるということです。
これがないと、どれがどの素材の書類なのか分からなくなりますからね。
6.研究発表の番組進行表
コラムとして詳しくは触れませんが、研究発表部門でも「番組進行表」が必要です。ただし、番組部門用の「番組進行表」とは別のファイルが用意されています。
研究発表用は「表紙」と「CUEシート」の様式が、番組部門用と異なるものになっていますので、間違っても番組部門用の番組進行表を使用しないように気をつけてください!
7.まとめ「要項をじっくり見て」
ということで、3回に渡って「番組進行表」についてお話してまいりました!
文章量が膨大で、まとめようがありませんが、あえて一言お伝えするならば「忙しい中でも、1度でいいので要項をじっくり読む時間を作って欲しい」ということです。
番組進行表に限ったことではありませんが、大会に提出する以上は、規定を守って作品を制作する必要があります。その規定も、毎大会少しずつ変更されている部分があります。
そういった意味でも、大会の要項が公表された際には、少し時間を取って、1度しっかり内容を読み込むことが意外と大切なのかなと感じています。
では、今回のお話はここまでです!
文章量が多く、わかりにくい部分もあったかと思いますが、ここまで読んでくれてありがとうございました!
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次回のテーマは「マイクについて」です!
興味があればぜひ読んでみてくださいね!では、また次回お会いしましょう〜!
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