退職前の夢の話
正直言って、大きな夢はかなってもかなわなくてもいい。
穏やかに、夫婦で枯れていけることが一番の望み。
静かに、支え合いながら、死が二人を別つまでの時間を過ごしていきたい。
でも、自分自身が腐らずに、きちんと枯れるために大きな夢もある。
まず旅をすること。
まだ見ぬ景色、まだ見ぬ人々と出会って新鮮な自分でいること。
そして内省を続けること。
そのために、今年は大きく3つの目標がある。
一つは四国88カ所の巡礼。
この88カ所の巡礼は、最初車で回ることを考えていたが、調べていくと歩きたいという気持ちがわいてきた。
巡礼する人は一日で40キロも歩くらしい。
普段歩きつけていなくて、太ってしまっている私が、いきなり40キロ。
しかもそれを続けることは簡単ではない。
一日に歩く距離を調整しながら、人より時間はかかってもいいから何とか歩き通したい。
二つ目は屋久島の登山。
若い頃に子供を連れて屋久島に行ったことはある。
緑が濃くて、圧倒的な自然の力に感動した。
でも子供が小さかったから、登山することはできなかった。
今、子供たちは大きくなった。
その代りに、私自身の体力が無くなってしまっている。
でも、四国巡礼をやり通した後の自分なら、登山するだけの体力がついている可能性が高い。
この機会を逃してしまえば、もう二度と屋久島での登山をすることはできないだろう。
これを何とか達成したい。
3つ目は、北海道でのキャンプとドライブ。
最初の二つを6月くらいまでに終えて、その後は北海道に渡りたい。
ここも若い時に、時間を惜しんで走り回った記憶はある。
美しい景色がたくさんあるのに、充分に楽しむことなく、地図上での移動を持って、北海道を一周したような気持になった。
これで終わってしまうのはもったいない。
何とかもう一度ゆっくり北海道を旅したい。
今考えている夢は、若い時なら、体力に物を言わせて実現することが可能そうだ。
でも今の私に、私たちにどの程度まで可能か。
重い荷物をしょって行う四国巡礼。
できるだけ有料の宿を使わず、寝袋やテントを使って歩きたい。
その行為によって、社会人としてついた心の垢を落としていく。
何も持っていない自分。
シンプルに身一つの自分と向き合うことをしてみたい。
でもそのためには必要な体力がある。
実際、頭で考えて活動を始めても、一日歩いてみただけで音を上げる可能性もある。
何日か歩いてみただけで、これは体力をつけてからでないと無理だという可能性もある。
そうなったら、四国巡礼を強行することなく、出直す柔軟さは持っていようと思う。
巡礼できるだけの体力をつけて、やり直してみたい。
夢がかなうかどうか。
これは夢を持ち続けることができるかどうか。
そして健康が失われないかどうかにかかっている。
夢に向かって頑張れるかどうかによって、かなうかどうかを分ける時代もあった。
今の私はそうではなくなってしまった。
でも今の私なりの夢の持ち方。
夢のかなえ方はあっていい。
そして夢は、少し無謀なくらいの方がかなえた時にうれしいものだ。