鼻のついた大きな蛹
先日、サツマイモの収穫を行った。
今年の夏の暑さは異常で、いろいろな作物の調子が良くない。
サツマイモはどうかと心配したが、大きめの芋がごろごろ出てきて嬉しかった。
でもその過程でいつもは見ない、大きめの蛹が現れた。
普段、私が畑仕事をする時に見かけるのは、おそらくヨトウムシの蛹だ。
触るとお尻のところをくるくると動かす。
茶色くて、紡錘形をした蛹。
畑仕事をする人なら共感してくれると思うけれど、土の中から出てくるのは、蛹は大抵ヨトウムシで、幼虫は大抵コガネムシ。
季節によっては冬眠を始めた蛙を掘り出してしまうこともある。
土の中から出てきたカエルは少し遠くに放り投げる。
自力で潜って、冬越ししてくれることを期待する。
でもコガネムシの幼虫や、ヨトウムシの蛹は、かわいらしいけれど、害虫だから殺してしまう。
今回見つけた蛹は大きさが、ヨトウムシの2倍くらいある。
しかも口の部分に長めの鼻のようなものがついている。
成虫になったら、長く伸びる口器になるのだろう。
私は初めてスズメガの蛹を見た。
写真でスズメガの成虫を見ると、随分長い口器を持っているものが多い。
花に向かって長い口器を伸ばした写真もある。
スズメガは蛹の状態で、あんなに立派な口をすでに持っているのだ。
きっとあの口器はススメガにとって大切な部分なのに違いない。
ススメガは幼虫からしてでかい。
大食漢で油断していると、大きな葉でも、簡単に食べ尽くしてしまう。
サツマイモの葉が一気になくなったと思って探してみると、スズメガの幼虫に出くわすことが良くある。
害虫だし、厄介なものだから、そのまま畑に残すわけにはいかないのだけれど、見ているとかわいらしい。
触ると、面倒くさそうに身体をうねらすのもいい。
あのかわいらしい幼虫が、この蛹になったのか。
蛹は正直言ってカッコいい。
大きいというのもいい。
大きさは一つの価値だ。
オスのカブトムシの蛹を見たことがあるが、あれよりも精巧な感じがする。
特に口器のあたりはよくできているように思える。
私にとって宝物だったカブトムシの蛹。
その蛹よりも精巧でカッコいいスズメガの蛹。
私はその蛹を持ち帰るかどうかしばらく畑で迷った。
夏場には畑で見つけたアゲハチョウの幼虫を持ち帰った。
幼虫を透明の水槽に入れておくと間もなく蛹になり、やがて羽化するのを観察することができた。
出てくるのがアゲハチョウだから、水槽で観察していても張り合いがあった。
でもこのカッコいい蛹から出てくるのはスズメガだ。
それは明らかに害虫で、かわいらしくはない。
アゲハチョウも害虫じゃないか。
あちらは飼うのに、こちらは飼わないのか。
そこの線引きで少し躊躇はした。
結局、私はその蛹を地面に投げた。
足でつぶした。
緑色の液体が飛び散った。
また殺生をしてしまった。