鴨って寒くないのかな
先日彦根市までドライブした。
琵琶湖の湖畔に車を停めて、湖を見始めた。
風が強く、琵琶湖にはかなり高い波が立っていた。
外に出るのを躊躇するほどの強風。
その中で、鴨たちが水に浮かんでいる。
鴨たちは、岸に流されるわけではなく、むしろ強風の中で、自分たちの位置をコントロールしながら浮かんでいる。
そんな鴨を見ながら、かみさんが
「鴨って寒くないのかな」と言った。
北の方から、寒い季節にやってくる鴨。
わざわざ寒さを選んで生きているのだから寒くないのだろうと話しながら、私も共感した。
風の強い日に、何も遮るものの無い、水の上に浮かんでいる。
木の陰に隠れるとか、土の中に潜るとかしたくはならないのか。
なぜわざわざ寒い時に、寒いところに平気でいるのか。
そんな思いが残った。
家に帰ってから調べてみた。
明確な答えがあるとは思っていなかったが、「ワンダーネット」という仕組みがすぐにヒットした。
心臓から送り出された血液が足に流れる。
その動脈の途中部分に、冷たく冷やされた血液が流れている静脈が細かく絡み合っている。
この絡み合いの過程で、冷たい静脈は暖かい動脈によって温められてから体に戻る。
動脈は、冷やされてから冷たい足先に流れていく。
この熱交換を日常的に行っているから、冷たい水の中に足を付けていても、体温がそれほど奪われないのだという。
確かに暖かい血液がそのまま足先に流れていけば、どんどん足先から熱が奪われてしまう。
だからこの仕組みによって熱が奪われにくくなっている。
なるほど、これはとてもよくできた仕組みだ。
もう一つ書かれていたのが羽毛の温かさ。
たくさんの羽によって空気の層を囲い込んだ羽が冬の寒さから白鳥や、鴨を守っているのだという。
羽毛によって守られているというのは、ダウンを着て外出する冬の私と同じなわけで、確かに暖かい。
でももし私たちの身体にワンダーネットがあり、手や足に流れる血液が冷たくなってから先端に届いていたとしたら、すぐにしもやけになりそうなものだ。
しもやけにならない工夫も、何らかの形でしながら、寒い水辺を選んで生きているというのは、なかなか大した努力だ。
寒さの中を長距離飛んでくるというのも、向かい風で熱が奪われそうなものだが、それにも耐えてきちんと生きている。
のんきに浮かんでいる姿だけを見ていると、暇そうでいいなと思ってしまうが、そうやって生きるために、彼らは彼らなりの苦労があるのだ。
ちなみにワンダーネットはキリンも持っている仕組みらしい。
キリンは熱交換をする目的ではなく、長い頭を動かす時に、血圧が上がりすぎないように血液を逃す場所としてワンダーネットが発達したということだった。
首の長いキリンが、地面の草や水を食べようとして頭を下げるというのは、実は簡単なことではないということらしい。
キリン自身はその仕組みに気づいていないだろうけれど、身体の方がよくできていて、そうやってキリン自身を守っている。
私たちでも急に立ち上がると立ち眩みがすることがあるが、キリンも立ち眩みはあるのだろうか。
なんだか首が長くてうらやましいと思っていたキリンに、同情してしまった。
動物は面白い。