医師のジレンマ



医師としての生き方には、以下の二つの軸が存在すると考えられる。
1. 道極め型
2. 販売型

この二つはしばしば矛盾し、医師としてのキャリアや日々の診療においてジレンマを生む。以下、それぞれについて考察してみよう。

1. 道極め型


「道極め型」とは、医師が医学の道を深く追求し、患者にとって最善の医療を提供することを目指す姿勢だ。
• 特徴
• 医学的エビデンスに基づき、最適な診療を提供することを最優先とする。
• 患者に必要以上の医療を提供しない(例:必要のない検査や治療を避ける)。
• 自己利益よりも患者の利益を最優先する。
• 課題
• 現実的には、保険診療の制約や診療報酬体系によって「最善」を提供できないことがある。
• 道を極めようとする姿勢が経済的利益に直結しにくく、医師個人や医療機関の収益性に貢献しない場合もある。

2. 販売型


「販売型」とは、医療を一種の商品として捉え、患者にとって魅力的なサービスや治療を提案・提供することを目指す姿勢だ。この世界観では検査や治療はもはや一つの「商品」だ。

• 特徴

• 自由診療分野では、患者のニーズに応じたサービス(美容医療、予防医療など)を積極的に提供する。
• 保険診療においても、病院経営を支えるため、一定の診療報酬を意識した診療を行う。
• 患者が「満足」を感じることを重視する(例:短時間で結果が出る治療や分かりやすい説明)。

• 課題

• 商業的なアプローチが強くなると、医療の本質である「患者の健康のために最善を尽くす」ことが薄れる可能性がある。
• 過剰な検査や不要な治療を提案するリスクもある。

医師としての特殊性


多くの企業や職業では「販売型」の生き方が一般的だ。新しい商品を開発し、それを販売することで利益を上げることが最優先となる。一方で、医師の仕事は独特であり、「売りたいものを売る」のではなく、「データ的に最善なものを提供する」ことが求められる。

特に保険診療では、医師が自己の利益や病院経営のために診療を行うことが制約される一方で、自由診療分野では販売型の思考が必要になる場面もある。

医師のジレンマとは何か?


医師は「道極め型」と「販売型」の間で揺れ動く存在だ。このジレンマは以下のような形で現れる:
1. 保険診療 vs 自由診療
• 保険診療では、医師の裁量が制限される一方、自由診療では患者ニーズを満たすための工夫が求められる。
2. 患者の利益 vs 経済的利益
• 医師個人や病院の収益性を追求することが、必ずしも患者の健康に直結しないことがある。
3. 医学的最善 vs 経営的現実
• 医学的に最善な治療が、必ずしも採算性や現場の実情に合うとは限らない。

結論


医師の仕事は、単なる「販売」や「道を極める」だけでは語り尽くせない複雑さがある。現代医療において重要なのは、この二つの生き方を状況に応じてバランスよく取り入れることである。患者にとって最善の治療を提供しつつ、医療機関の経営や医師個人のキャリアも持続可能な形で成り立たせる。そのバランスを見極めることこそ、医師としての真のプロフェッショナリズムと言えるだろう。

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