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独り言キャッチャー

昨日電車で座っていたら、
また独り言をつぶやく人が隣に座った。
先日に引き続いて連続3人目である。

これはさすがに打率が高すぎないか?
なにか、独り言を言う人を引き寄せるフェロモンでも出しているのだろうか、私は。

今度の語り部は女性だ。
やはりマスクをしている。
リュックの他に大小4つぐらい手提げを下げていて、荷物をまとめる事なく、
そのまま座席に座った。

そして聞こえてきたのは、
明るい調子の、関西弁だった。
高低差のある滑らかな口調。
チラリと確認すると、うっすら笑顔だ。
そうか、やはり明るい音色は笑顔から出るのだな、と感心している場合ではない。
隣で喋っているのにマスクのせいで、内容が聞き取れない。
落語の稽古かどうか、だけ、確認したいのだ私は。
やっと「森下先生」という言葉だけ拾えた。

過去現在出会った、あらゆる森下さんを思い浮かべる。
落語の稽古だとしたら新作だろう。
古典に森下という名が出てきた記憶がない。

確かめる術もなく、
その人は大小の荷物を引き連れて、
風のように次の駅で降りて行った。

一息ついて、まわりを見回すと、
ドア部分を挟んで斜め向かいの席に前傾姿勢で座ったご老人が、ボンヤリと私を見ていた。
その口元が動き続けている。
聞こえないが独り言に違いない。

この独り言リレーはどこまで続くのだろう。

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