おひとり様イブ
昨夜はChristmas Eveだった。
私も例年、人並みに少しウキウキする。
そこで今年は
西新宿の素敵なバー、
BenFiddichで一人過ごす事にした。
カウンターの予約がとれた。
BenFiddichの予約は毎月20日に翌月分の受付がスタートするが
瞬殺で埋まる。
それが24日の席が取れた。
イブの奇跡、第一弾だ。
そして当日行ってみたら
カウンターの真ん中の席、
つまり鹿山さんの真ん前だった。
BenFiddichは、
店主でバーテンダーの鹿山さんだけが
カクテルを作るので、
その仕事の全貌が鑑賞でき、
さらにスタッフとの連携も見渡せる
特等席だ。
今回が4度目の訪れだが、
カウンターの真ん中は初めてだ。
イブの奇跡、第二弾だ。
いつも通り、鹿山さんは姿勢がよく、
終始笑顔を浮かべながら、
美しい手際で仕事を進めていく。
写真などで、いつ切り取られても絵になる様な仕草を意識されていると思う。
香道で言えば、素晴らしい香元だ。
BenFiddichにはメニューがないので、
訪れた客に対して、
好みを尋ねて
何が飲みたいかを引き出す会話から全てが始まる。
客のほとんどが外国人なので、
鹿山さんを始め、スタッフの皆が英語を操る。
その会話の時の鹿山さんの人当たりが、またいい。
優しく丁寧でフレンドリーで、しかもくだけ過ぎず、心地よい距離感がある。
サービスマンとして超一流だと思う。
香席の香元もこうありたい。
今回は至近距離なので、いろいろな事に気がつく。
その一:
カクテルの仕上げに小枝でステアする、その仕草がまたよいのだが、
その回転が時計と反対回りだった。
聞香炉の回し方と同じだ。
つまり地球の自転(北半球)と同じ。
そのニ:
ステアする手が左手だった。
左利きなのだろうか。
それともステアするのは左手が基本なのだろうか。
もしくは、美的な狙いから構築したスタイルなのだろうか。
その三:
カクテルの仕上げの前段階で、ちゃんと味見をしていた。
手の甲に小枝の先をちょんと触れて
その一滴で判断するのだ。
家族の料理人も、毎回必ず味見をすると言っていた。
味見をしなくても出せるのがプロなのではなくて、毎回確認して確実な味を客に出せるのがプロなのだと思う。
香元が毎回自分で聞いてから客に炉を回すのと一緒だ。
その四:
薬研、すりこぎ、焼きごて…様々な道具を扱うのを仔細に見られて楽しかった。黒文字の枝をその場で折って、カクテルの仕上げに添えるのも素敵だ。
ちなみに焼きごては、チェリー酒とバターのホットカクテルに焦がし香を加えるために、仕上げ近くにジュッとグラスに入れる。
その先っぽの形がなんだか気になったので、使用後に洗い終わった道具を見せてもらったら、
和菓子などに使う焼き印だとわかった。
こんな使い方があったのか。
しかも、である。
その焼き印の紋様が香の図だった!
イブの奇跡、第三弾。
ここまで香道とシンクロするなんて。
四本の香の図なので、系図香だ。
鳴子の図だった。
その五:
仕事でミャンマー帰りの鹿山さんが
向こうで頂いたという
木を削ったものを見せてくれた。
進呈してくれた人は、英語でなんというのか分からないと言っていたというが、
鹿山さんは白檀ではないかと語り、
香りを聞いて私もそう思った。
香道でこちらのお店と縁づいた
この年を締めくくるものを見せてもらった。
はるさんともお話しできたし、
拓さん、智也さん、ちあさんの元気そうなお顔も見れた。
ちなみに古心流のお家元のお名前は千秋さんとおっしゃるので、
ちあさんと同名なのである。
これは前から気づいていた、
ちょっとした奇跡。