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#8 実家の破産

前回に続いてちょっと暗いお話。
私の自己肯定感を低く押さえつけていると思われる要因について、もう一つ吐き出しておく。
親父の話。

父親は”飾らない格好つけない“がモットーの豪快な人だった。
歯に絹着せない物言いを子供の頃は格好いいなと思ったし、自慢の親父だった。
でも大人になって理解した彼は”飾らないのにカッコいい俺ってイケてるだろ!“というただのナルシストだった。
女遊びは派手目で母親は苦しんだ様だ。
おかげで彼女は新興宗教に救いを求める様になったが、それがまた父を母から遠ざける事となった。

それが昭和男だと言われれば身も蓋もないが、私はちょっと寒気がする。
意外に見栄っ張りで、それが仇となって商売に失敗し自己破産する。

家業の経営不振を初めて耳にしたのは中2の時。
夕飯がご飯と味噌汁とメザシみたいな日が続いて文句を言っていたら、店が潰れるかもしれんと正座で聞かされて、それまで割と裕福な方だと思っていたのでこれは只事ではないと感じ、以後極力金銭的負担をかけない様に地味に地味に過ごす様になった。

実際店が潰れたのはそれから十数年後なのでよく頑張ってくれたんだと思いたいが、実はお父さま、裏でとんでもない事をやらかしてくれていた。
全て母と姉から聞いた事で、親父本人に聞けば違う言い分が出てくると思う。でも正面から向き合うのはちょっとしんどいので私は詮索せずに逃げた。
だから正確な話かどうかは確認していない。

どうやらお店の女性スタッフと交際しており、結婚をチラつかせてその方の亡夫が残した大切な保険金を借りてお店の支払い不足分を補填していたという。
もちろん返済のアテなど無い。
しかもその方には私と同年代のお嬢さんがいて、父に金を貸していたおかげで進学を諦める事になってしまったという。

つまり私が無事高校を卒業し、大学でろくに授業も出ないで部活動にうつつを抜かせていたのはこの人達の人生を踏みにじっていたせいだったという事だ。

この人達から見れば私なんて憎くて仕方ない存在だったんだろう。
これが生きてるだけで罪ってやつ?
生きていてごめんなさいね!
やってくれたなクソ親父!

一応この間の十数年間、私なりに色々と頑張って社会貢献して来たつもりなんだけど、全てこの人達の犠牲の上に成り立っていたという訳だ。
おかげで何も知らずに生きてきた私のこの間の行動を全否定された気分だよ。

両親が持ち家を押収されて小さな借家へ越した時、様子を見に行ったら親父が嬉しそうにビールを出してくれた。
「これ安かったんや。ビール飲める様になるなんて嬉しいわ!」
でもこのビール酸っぱい…
見れば賞味期限が1年も過ぎている。
よくこれ保管してた&安くても販売しようと思ったな、酒屋。
この惨めな気分、一生忘れるか!と思った。

残念な事に私の顔は親父にそっくり。
鏡を見ると中に親父が見えるから鏡は嫌い。
楽しい時もイチャイチャしてる時も、鏡を見ると水を掛けられたみたいに一気に醒めちゃう。

気が付けばそんな親父同様、自営業を始めていた私。
キツイ事も多いがそれでも休まずやっているのは倒産が怖いから。
このビールの酸っぱい味が今も私を動かすドライバーだね。
最高の反面教師だよ。

破産が認められてから、親父は抜け殻だ。
それでも母は彼を見捨てず一緒に暮らしている。
最近ではたまに古い自慢話をするだけで、後は置物みたいに生きている。

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