#12 年齢のお話　年長者は偉くて若さは尊い？

私、人に年齢を聞く／聞かれるのが嫌い。
理由はだいたいそれを知った途端、対等な関係じゃなくなってしまうから。
知り合って相手の人となりが分からないうちは互いに敬語で話すが、年齢が分かった途端にそれが崩れてしまう事がよくある。
年齢、余計な情報だ。

最悪なのは年齢を知ったとたんに「何だ年下かぁ〜」と突然馴々しくタメ口になる奴。
いや、友達だったら年下からのタメ口だって嬉しいだけだけど、友達でもない相手なら年上だってタメ口きいていい理由にゃならないから。
幼い頃から”目上を敬え”と教えられているから無理もないと言いたいが、“年下を侮れ”とは誰からも教わっていないのに、そうする人が多いのは何故？

そして逆にオッサンが若いヤツから蔑まされるあの感じ、あれは何だ⁈
別に年長者を敬えなんて微塵も思わないが、ただの数字で色んな土俵に上がれなかったり、シャットアウトされたり、痛々しいと馬鹿にされたり。
おかげで随分と不快な目に遭わされてきた。

私の仕事はパン屋さん。
脱サラで30代半ばの時に機械メーカーに勤めるサラリーマンから転身した。

パン職人に転身してから開業までに8年ほど掛かった。
その間に7件？くらいのお店で働いた。
パリにも行った。
ハッキリ数を言えないのは掛け持ちで休みの日のみ行く店もあったから。

日本のパン屋さん、特に初めての店がとにかく酷かった。
夜の1時に店に入って夜の21時まで働いた。
週末になればさらに長くなった。

30代だからもっと仕事が出来ると思ったが期待外れだったという意味不明な理由で店主には嫌われた。
未経験だって初めから言ってるのに！

嫌われた私は事ある毎に殴られた。
店主は度々「文句あるなら殴ってみろよ！」と挑発して来た。
殴らせてクビにするのが目的だと思ったから我慢した。

そして他のスタッフにも「アイツは使えないから殴って良いぞ」と謎の暴力解禁令が発布され、その通り蹴るヤツ殴るヤツ、「手を出すのは良くない」からとモラハラぶちかますヤツ、失敗を私になすり付けるヤツ…
卑怯者の見本市みたいな店だった。

パン職人一年生には他のスタッフは全員先輩。
そしてこの店は全員年下。
自分より10歳近く年下の先輩に、使えないオッサンだと無抵抗に殴られていたわけだね。

でも実は私、日本拳法という格闘技の有段者なので相手の動きはよく見えていて、手が当たる瞬間少しヒットポイントをずらして痛くない所で受けたりして最小限の防御はしてたんだよね。
場合によっては殴った方が痛い場合なんかもあったはずだザマミロ。

よく店主は言った。
「年齢はハンデだから！」
つまり年齢が上というだけで扱いが酷くなるらしい。

次の店ではパワハラは無くなったものの、オッサンという理由で新しい事を覚えるチャンスを回してもらえなかった。
何かあると20代の若い子に話が回って私は先に進めない。
独立するんだからモタモタしてる暇ないのに！

たまに「やってみる？」と言われても、ろくに教えてもらえずに
「普段見てるから出来るでしょ？」って。
それで出来なきゃチャンスはもう来ない。
とにかくオッサンは損なのだ。
まさに”年齢はハンデ”だった訳だ。

若さはそんなに尊いのか？
年長ってそんなに偉いのか？
なんだこの矛盾は！

フランスへ行ったら楽しかった。
世代間で断絶とか感じなかったし、オッサンも若いヤツと一緒に悪ふざけするし。
ただ私が関わったのは全員北アフリカ系の移民や移民二世なので、親子三代フランス生まれという人達がどうなのかは分からないけど、でもまぁ、とにかく楽だった。

フランスでは語学学校へ通っていたが同じクラスの日本人達、全員年下だったがタメ口で話してくれてとても居心地がよかった。

でも帰国後にその人達に会った時は時間が経っていた事もあり、敬語になってしまっていたのはちょっと残念。
日本にいるとそういう空気があるのかしらん？
年齢ってそんなに重要？
世代とか関係なく、バカ話して楽しく過ごしたいだけなのに。

…と言いつつ私も知り合った相手が同い年だとハッキリ分かるとちょっと話しづらくなる。
年上も年下も大丈夫、でも同い年は打ち解けないとしんどい。
やっぱり年齢に囚われててイヤだ。