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#20 悔いの無い人生ってつまらないんじゃないの?

好きな事は割と一生懸命やる方だ。
目いっぱいやって後悔はしたくない、といつも思っている。
だから良い結果が出ない時でも最善を尽くせば心残りなど無いはずだ、と思う青臭い奴。
それで納得…いや、自分自身に言い訳して来た。
“結果は出なかったけどやる事やったから満足、仕方ないよ”

でもね、ホントは上手くいかなかった事で後悔しない事なんて無いと思うの。
だってゴールへ至る道筋は一つじゃないから、後であれこれ考えてしまうでしょ?
自分のやり方が絶対に最善だったなんて、ずっと自分を誤魔化せる訳がない。

女装だの何だのと、ナヨナヨ言ってる私だが、実は学生の頃はこれでも某大学の体育会日本拳法部という所でキャプテンをやっていたのだ。
日本拳法とはご覧のいでたちで,

連盟の写真をお借りしましたが大丈夫でしょうか?

蹴って殴って引きずり倒して更に上から殴る踏ん付ける関節を逆に捻り上げる、という攻防の中で審判が有効打と認めて“一本!”をコールしたら1ポイント獲得、2ポイント先取で勝利という競技だ。

金属も使った防具で完全防備するので殴られても痛くも痒くもなく、思いっきり打ち合う事が出来るのが特徴。
迂闊に攻撃すると、むしろ殴った方が相手の防具で怪我をする。

ただし脳へのダメージが無い訳ではなく、私は練習後に真っ直ぐに歩いていないと指摘された事もある。
脳震盪とはお友達で、部活引退後も慢性的な目まいや頭痛と一緒に過ごした。
そんな奴らと完全に縁が切れたのは引退後5年以上は経ってからだったと思う。

ちなみに社会人になってからフルコンタクト空手を少しやっていたが、こちらは入門数日後にあっけなく肋骨を折られてしまい、日本拳法は何て安全なんだ!と再認識した。
あれから25年以上経つが折られた肋骨はまだ時折痛む。
空手恐るべし。

在学中の私はH172cmW48kg。
ガーリーでキャシャーン。
体重や技術レベルなど一切考慮の無い無差別競技なので当然、試合では大男とも当たる。
というか、私より体格の劣る相手の方が少ない。
いくら怪我しないと言っても逃げ場の無い狭いコートで大男と対峙するのはかなり怖い。

体重も筋力も無い私は捕まったら抵抗しようがないので、相手とは常に距離を取っておいて、素早く大きく踏み込んで一気に距離を詰めて相手が気付いた時には私の一本!というのを目指した。
距離感を錯覚させる構え方とか、軌道の分かりづらいパンチとか、弱いなりに工夫した。

組み技はほとんど練習せず、それよりも捕まらない練習をした。
もし試合中に捕まったら、引っ張る親に抵抗する駄々っ子みたいに場外まで必死に逃げる。
カッコ悪いったらないが、弱いんだからなり振り構っていられない。

筋肉は付きにくい体質なので自主トレは走り込みが中心で筋トレはほとんどやらなかった。
高校生の頃はよく筋トレをしたが全く望んだ効果がなかったので筋力アップは諦めていたのだが、社会人になって始めた空手では昇級の要件としてベンチプレスで決められた重量をリフトアップしないといけなくて、初めて科学的な筋トレに取り組んだ。

するとだ!
私のNO.1後悔!
理論を学んでトレーニングすると、ちゃんとパワーアップと筋肥大が認められた。
諦めていた筋トレだったが、効果を体感する事ができて驚いた。
学生時代に精一杯練習した気になっていたのがちゃんちゃらおかしくて、悔しくて仕方がなかった。
“学生の時にこれを知って筋トレに取り組んでいればもっと成績を残せたかもしれない、
そしたらもっと自己肯定感を上げられたかもしれない、
強いキャプテンでいれたなら部の運営も変わっていたかもしれない、
強いチームが作れたかもしれない。
一時流行った言い方をすれば”2週目の人生があるならやり直したい!”と今でも思ってしまう。

でも本当は分かっている。
そんなのはただの妄想だ。
思い出補正で自分の実力を過大評価して、出来もしない事を”やり方変えるだけで出来たはず“と思い込んでるだけなのだ。
結局後悔しない方法は良い結果を残す事しかないのだと思う。
悔しいけど結果が出ればプロセスに不満があっても溜飲は下がる。
プロセスへの評価だけで満足来ないのは自分自身なのだ。

でもね、最近思うの。
後悔の一つも無い人生って味気なく無いかい?って。

スポーツだけじゃなくって仕事でも日常生活でも、過ぎた事を思い返す時に出て来るのは、だいたい悔しい思いをした事ばっかりで、それはきっと、悔しい思いの方が上手くいった事より印象深いのだ。
成功体験なんてすぐに忘れてしまって、後で自慢話の引き出しにストックされて、必要なシーンで閲覧される程度の存在でしかない。

一方で悔しい体験はその後の生き方にさえ影響を与える事がある。
卑屈になってしまう人もいるかもしれないが、思慮深くなる人もいるし、共感する力が高まって人に優しくなれる人もいる。
悔しい思いは人を成長させる。
だからスムーズにスマートに上手くやれる奴より、上手くいかなくて足掻いて歯を食いしばってる奴の方が、魅力的で豊かな人生を生きているんじゃないのかな?

…というのはきっとドン臭い奴の負け惜しみだよね。
そう、誰だって上手く生きられる方がいいに決まっている。
そんな事分かってる。
分かってるよ…

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