多民族国家オーストラリアで世界を見る
スーパーに行けば世界中の食品が並び、飲食店は国ごとに分けられレジではその国の訛りの英語を聞くチャンスだなぁなんて思えば… 寿司は日本の国民食と思われているのにモヤモヤしつつも寿司屋に行って日本語が通じるかと思えば働いてるのは韓国人か中国人で… 文化って一体なんなんだろう?って考える今日この頃です。
私が通うコミュニティセンターの英語クラスには無料という事もあって、色んな人々が集います。日本では決して出会えなかった人達や考える事も無かった出来事を私なりに感じたのをまとめました。
その1 移民と難民
先日のコミュニティセンターでの英語の授業で「オーストラリア に初めて来た時の印象」というテーマでいくつかの質問をグループでお互いにしてみようということになった。
たまたま組んだ相手は、日本人とインドネシア人でオーストラリア の初印象は「広い」とか「フレンドリー」とか「来た当初は寂しかった」など自分の感想と似たり寄ったりで、やっぱりみんな感じること一緒だよねーなんて思っていた。
ところが全員の感想を発表した際ほとんどが同じような答えの中、アルゼンチンから来たエマは「safety」「安全」と答えたのだ。
私の中では予想もしなかった感想なのでとてもショックだった。
アルゼンチンという国はと聞かれれば、国家破綻や治安が悪いとは知っていても現実的な何がどうなのか?は知らなかった。
英語教室には私のような移民として入国している人もいるが、何人かは難民として入国している。他にも船で入国してきたというイラン人は必死の思いでオーストラリアに辿り着き、その話はしたくなさそうだった。そして祖国に帰れず家族が恋しいと嘆いていた。(余談だが、この時に使う英語の I miss...は、日本語とはまた違ったニュアンスに感じられとても切なくなる)
難民の人に日本では出会ったことが無かったので、隣に座る彼女たちが私には全く想像のつかないバックグラウンドを抱えているのかと思うと、そういうニュースを真剣に考えてこなかった無知な自分が嫌になる。
その2 日本経済の現実
オーストラリアの物価の話になり、自国と比べてどう思うか?との質問に、ほとんどの国の人は、more expensiveと答える中、隣の日本人のAさんはceaperと答えたのだ。
決して日本より安いとは思わないが、まあ確かに物によっては安く感じるよなぁなんて思っていたところに先生が、
「でも日本はwages(賃金)が安いよね」
と言い放った。
なんとなくではあるが、「日本の経済ってうまくいってないよね」って言われている気がした。確かにオーストラリアの人件費は日本より高い。それから換算すると日本より物価が高いのも納得がいく。
そう言われて思い出したのが、もう10年ほど前にベトナム旅行に行った母がベトナムは何もかもが安くてとても楽しかった!と満面の笑みで語っていた記憶だ。
物価というのはその国の経済状況を表す一つの指針になるのだろう。
デフレから抜け出せない日本に住む日本人はこう言われた時、果たしてどう思うのだろうか?
海外旅行に行けば円が強くて物価が安いと感じたのはいつの頃だろうか。(現在、各国の通貨が暴落しているので日本円は高いが…)
私はこのやり取りで世界的に見た日本の経済の実態を突き付けられた気がした。
その3 資本主義と共産主義
また別の授業で、イギリスのチャールズ皇太子をテーマにしたカンバセーションが行われたのだが、その流れで各国の王や天皇などの話になり、日本の天皇は他国と比べてhumble(つつましい、謙虚)、simpleと言った感想がある一方、男系にこだわる事に疑問を感じているようだった。
そして国のシンボルから大統領や国家の話に移ったのだが、どこに行ってもオーストラリアではトランプ大統領の話になると100%と言っていいほど皆んなバカにするのが当たり前となっている。(ちなみにオーストラリアはイギリス領であった為イギリスルーツの人が多く、同じ英語を話すアメリカと同一視されたくない傾向がある。)
この日も先生はトランプ大統領を相変わらずコテンパンにバカにした後、中国の習近平首席の話題になるとトランプ大統領のノリで
He is not good man.
と言い、一同から笑いを取った。
そして、その中にいた中国人にあなたはどう思うか?と投げかけた。
すると、その中国人は
He is good man.
と毅然と答えたのだ。
その直後に先生は、He is good man!と申し訳なさそうに言い直した。
先生だけではなく恐らくその場にいた多くが、共産主義国で発言の自由を奪われ全てにおいて規制がかけられている国の住民は、習近平首席をさぞかし嫌っているだろうと思っていたのだが、現実はそうでもなかったのだ。
共産党絶対の共産主義教育や資本主義国企業の様々な規制はあるにせよ、中国を僅か数年で世界経済大国2位までに成長させ、あの覇権国家アメリカと対等に言い合う習近平首席を誇りに思う国民も多いだろう。
世界は一側面だけで見てはならないのだと改めて知らしめた出来事だった。
やはりLGBT問題と同じで情報は生身の人に会い自分ごとに置き換えないと本当の意味での理解はできないのだと改めて考えさせられた。
オーストラリアに来て5ヶ月。
私にはとても濃厚な日々である。