KAYOKO TAKAYANAGI|少女の聖域vol.4|巻頭エッセイ|白き微睡の橘月
今年も菫色の小部屋に《少女の聖域》の扉が開かれた。
研ぎ澄まされた美意識とあたたかい心遣いが隅々まで満ちた美しい空間で、“不在の少女”があなたを迎えてくれる。
終幕となるこの小部屋に密かに現れた「真昼の月」。
太陽の光は月に反射して、地球の大気を通り地表に届く。
夜地平に昇ったばかりの月がオレンジ色に見えるのは、高度が低いと長い距離を光が進まなければならず、波長の短い青系の光が散乱して赤系の光のみ届くためだ。中空高く昇った月は光が通る距離が短くなるので、緑系の光も地表に届くようになる。
夜の月が黄色いのは、赤と緑が混じって見えるからなのである。
昼間は太陽の光が沢山降り注いでいるので、散乱せず届く青色の光も多いため、空は青く見える。月の黄色に空の青色が混ざると、黄色と青色は補色の関係なので白色になる。
真昼の月が白く見える理由である。
どんな時も変わりなく光を降り注ぐ太陽ではなく、その太陽の光を受けて変幻自在な少女のように姿を変える月。夜の暗闇の中で地表を照らすだけでなく、明るい昼の光の中でもひっそりと白く微睡んでいる。
少女で在るのに年齢も性別も関係ない。
真昼の月が照らすこの聖域で、少女は少女でいることを許される。
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