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|ROOM 3C|YAYACO YONEYAMA

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サロン「香水談話室」を主催するイラストレーター・ヨネヤマヤヤコの小部屋。
運営しているクリエイター

#アート

YAYACO YONEYAMA & 横井まい子|菫模様のカルトン《1》|菫の街へ

 カルトンとはフランス語で厚紙のことです。画板や紙挟みとも呼ばれています。菫模様のカルトンをそっと開き、作家様がモーヴ街イベントのテーマにあわせて制作してくださった作品を香りのムエットをお渡しするようにご紹介させていただきます。  横井まい子様の描く《菫の街へ》ようこそ。  ちょうどこちらの街では菫が花開いたばかり。かぐわしい香りに誘われて少女達が目を覚ましたところです。眠りから覚めた少女達の鼓動がさざなみのように伝わってまいります。  花を摘む喜びに満ちた少女、花を髪に

YAYACO YONEYAMA|両性具有香水《2》劇場の中の両性具有

 2018年衝撃を受けた出会いは宝塚歌劇花組公演『ポーの一族』でした。 ライブビューイングとはいえ萩尾望都先生のペン先からそのまま抜け出たような主演のふたり、はじめて目の当たりにするその艶麗繊巧な世界に心捕まれ惹き込まれ、それからはもう宝塚歌劇に夢中になってしまったのです。  エドガーを演じた明日海りお様の過去作を辿るうちに黄泉の帝王トート閣下のような人外からコケティッシュな娘役や花魁までも演じる姿に衝撃を受けました。宝塚歌劇では男役/娘役ときっぱり分かれているものだと思い

YAYACO YONEYAMA|苦艾酒香水《2》ルタンスの文法

上写真セルジュ・ルタンス スペシャル リミテッド〈ドミノ〉(霧とリボン所蔵/Photo: Mistress Noohl) セルジュ・ルタンスドゥースアメール アブサン(ニガヨモギ)、シナモン、ティアレ、マリーゴールド  ドゥースアメールのパウダリックな質感はモロッコの石灰を塗った粉白壁のよう。斬りつけるような強烈な日差しから濃く影を落とす館に逃げ込む。回廊を巡り古びた調度品と書物が無限に並ぶ書斎に誘われる。ひんやりと薄暗い部屋には煙草の残り香も漂う。埃にまみれた古い本

YAYACO YONEYAMA|苦艾酒香水《1》緑色の血

アブサン時間5時半をすぎた頃に始まり七時半をすぎる頃には終わる 丘の上では終わりを見ない(H.P.ヒュー)  エデンの園から追放された蛇が通った小道に生えていたニガヨモギ。 長い歴史の中では強壮食欲増進効果や解熱、虫下しなどに処方される地味な薬草でした。スイスに自生していたアルテミシア・アブシンチウム(学名)を発見したフランス人医師により、霊薬とされる薬草136種を配合したアブサンが誕生したのは1792年。元々は自分用に処方万能薬として評判になり「緑の妖精」と呼ばれ親しまれ