RIE EGUCHI & 野村直子|文学者の音楽室《2》|夏目漱石と音楽
大文豪、夏目漱石(1867-1916)の作品を好きになったのは、実はわりと最近である。
『坊っちゃん』や『こころ』には遠い昔に教科書で触れたはずだが、教科書というだけで敬遠してしまっていた。だが友人に薦められて読んだ『草枕』の幻想的な雰囲気と流麗な文章、大好きなラファエル前派のミレーの「オフィーリャ」の絵画の描写にすっかり嵌まって以来、何かを取り戻そうとするかのような勢いで読んでいる。『幻影の楯』、『薤露行』、『文鳥』、『明暗』などが好みの路線だけれど、『坊っちゃん』もや