夏の残り火〜甘い樹液|#藤家 秋様
藤家 秋様のnoteを拝読。
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藤家 秋様の短歌で二次創作する企画ということで、キリンジの「愛のCoda」とダブルイメージでインスパイアされたものを作りました。
では、ショートストーリー、まいります。
夏の残り火〜甘い樹液
僕は今まで、どんなものにも賭けることが出来なかった。現実にフォーカスしないで、桜花が散る中、その花弁を仰いで受けとめるだけの春の日々を過ごした。
・・・そう、君との愛は、傷を広げるようにしか思えなかった。にも関わらず、その傷からは血が流れず、甘い樹液が滴るのだった。
樹液は深紅や青藍の色に変化しながら染まり、ベッドに居る僕や君をも染めた。
星は、せめてもの天の情けで、僕らを飾りながら瞬いていた。
夜が明ければ、君は大きな旅行鞄の中にあるチケットを取り出す。そして、数え切れないほど重ねた「さよなら」を、また繰り返さなければいけない。
僕は思い出す。君と声を潜めながら、ささやかにバルコニーでやった手持ち花火を。「きれいだね」と言って、微笑みかけた君の顔は、花火より綺麗だった。袋に入った花火が残り少なくなり、最後に取っておいた線香花火を出すとき、何とも言えない寂寥の想いがふたりの間に漂った。そして線香花火が火の玉を作って燃え落ちるさまを、息を殺して眺めていた。
答えは、いつか出さなければいけないのだろう。僕か、―――それとも君かが。僕の胸の傷は今も少しずつ広がり、甘い樹液が滲み出ている。君はいつまで、この樹液を飲むのだろうか。
【fin】
大橋ちよ様とのコラボレーション企画ですが、ダブルイメージの元歌を添付します。
▶愛のCoda/キリンジ
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🌟Iam a little noter.🌟
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