スマブラステージ【AD.2014.火星探査車】
火星探査ロボット・マーズローバーのスマブラステージです。
火星の青い夕日が、背景を動きます。
・火星と人類
火星は、地球と同じく岩石と金属で構成された個体惑星で、太陽から四番目に近い太陽系の惑星です。
火星は肉眼では非常に小さく見える星ですが、古代から観測が行われ、17世紀に望遠鏡を用いた天体観測が始まると、おぼろげながら火星の模様が見えるようになります。
19世紀、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリが、火星の模様に直線の溝があると観測記録に残しました。この記録が英訳されたとき、「溝」が「運河」と誤訳されたことから、アメリカのパーシヴァル・ローウェルをはじめ何人かの天文学者は、「火星に見える溝は文明を持った火星人の建設した運河である」と主張します。
この主張を疑問視する同時代の学者は多くいましたが、それでも「火星は地球に似た惑星で、文明的な火星人がいる」と多くの人が信じることとなり、H・G・ウェルズの「宇宙戦争」やE・R・バローズの「火星のプリンセス」など、火星人の登場する小説が多数執筆されました。
しかし、20世紀中ごろに宇宙開発が本格的に始まり、火星を観測するための人工衛星が打ち上げられ、1965年に探査機マリナー4号によって火星表面の写真が撮影されると、火星の風景はクレーターだらけでおよそ生命がいるとは思えぬ大地であり、火星人はおそらくいないであろうと人々は得心しました。(火星の溝の模様は、観測の精度が上がるとそれほど直線的でないと判明しました)
長きにわたる観測・探査によって、火星は
火星の重量は地球の40%。重力が小さいので大気は希薄
地球から火星までの距離は約6000万km
火星の大気の95%は二酸化炭素
火星の希薄な大気では温室効果が働かず、気温は極めて低い
火星の極地にはドライアイス(二酸化炭素)の氷山がある
火星が赤く見えるのは、表面の岩石に酸化鉄(赤さび)が多いため
微弱な火山活動があり、たまに地震が起こる
土埃による光の散乱で、火星の夕日は青く見える
現時点で火星表面に水は観測できないが、痕跡は見られる
などの性質をもった星であることが分かりました。
火星人の存在は否定されましたが、極めて高温な金星、ガス状惑星の木星などと比べ、火星はまだしも人類が居住できる可能性はあり、火星の調査研究は精力的に行われています。
・火星探査機の歴史
人類の打ち上げる惑星探査機には、人工衛星として惑星上空から観測を行うタイプと、惑星に着陸して観測を行うタイプがあります。
1975年にアメリカが打ち上げたバイキング1号、2号は、初めて火星の地上に投下されて稼働した固定探査機で、1号は1982年まで火星の情報を送り続けました。
1997年、タイヤによって移動ができる火星探査車(マーズローバー)の「ソジャーナ」が、アメリカによって火星に送り込まれ、無事に着陸して活動を成功させました。
1990年代のアメリカでは、国民の宇宙への関心は低下し、1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故により、有人宇宙飛行は一時中止され、宇宙開発の予算は縮小されていましたが、ソジャーナによる探査はバイキング1号、2号の5分の1の費用で実行され、少なめの予算で火星探査ができることを実証しました。
このとき大気が薄くパラシュートの効果が薄い火星に着陸するのに、エアバッグで探査機を包んでバウンドを繰り返して着陸する方法がとられ、低コストで安全な着陸方法として確立されました。ソジャーナは15回ほどバウンドして着地し、1回目のバウンドは15mほど飛び上がったと言われています。
2003年に、2台の火星探査機「スピリット」、「オポチュニティ」が打ち上げられ、無事火星に着陸し活動を始めました。
ローバーには頭部のようなパノラマカメラ、腕のような観測機器展開装置(ローバーアーム)を備え、火星の地形、岩石の組成、大気の温度を測定し、研磨装置で岩石の表面を削ることも可能です。
独立して動かせる6つの車輪をサスペンションで接続することで、凹凸の多い火星の荒地を柔軟に走行し、片方の車輪が地形や砂にはまって動けなくなっても、もう片方の車輪を動かして脱出できるようになっています。平均速度は時速36mほどでした。
電力はソーラーパネルでまかなわれて、低速で地上と直接通信するアンテナと、火星軌道上の探査機を介して高速で通信するアンテナを備えて、地上と交信し、観測データの送信、機体へのコマンドが行われました。
火星は砂塵が多く、ソーラーパネルに砂が積もることで発電量が減少すると考えられ、2台の探査機スピリットとオポチュニティは、3か月の運用が予定されていました。しかし、風がソーラーパネルの砂を吹き飛ばすことが度々起きたことで、想定を超える長期運用が可能となり、スピリットは2010年まで、オポチュニティは2018年まで通信が維持され、実に14年間活動を続けました。
この探査で、流水の痕跡と見られるものや、地球のかつて水があった場所でよく見られる赤鉄鉱が発見され、過去の火星には水が流れていたであろうことが分かりました。
後継機となるキュリオシティ(2012年稼働開始)やパーサヴィアランス(2021年稼働開始)、中国の打ち上げた祝融号(2021年稼働開始)が、現在も火星で活動し、火星の生命の痕跡、生命存在の可能性が調査されています。
活動を停止したマーズローバーと、着陸に失敗して大破した多数の探査機の残骸は、現在も火星の大地にに佇んでいます。
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