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南三陸町から羊産業のパラダイムシフトを起こす!②

第2話:なぜ国産羊肉は増えないのか? その課題と可能性

日本の食文化に羊肉が少しづづ浸透しているにもかかわらず、国産羊肉の生産はほとんど増えていません。第1話で紹介したように、現在の日本の羊肉市場の99%以上はオーストラリアやニュージーランドなどの輸入品が占めています。一方で、日本の国産羊肉は希少な高級食材として扱われ、一般の消費者にとっては手の届きにくい存在になっています。

では、なぜ日本の羊肉生産は拡大しないのでしょうか? その理由を探りながら、今後の可能性について考えていきます。

1. 羊農家の数が圧倒的に少ない

日本国内で羊を飼育する農家の数は、他の畜産業と比べて非常に少ないのが現状です。農林水産省のデータによると、全国の羊農家の数は わずか200戸程度 と言われています。これは、日本全国の牛や豚の農家と比べても桁違いに少ない数字です。

羊を飼育する農家が少ない理由には、以下のような問題があります。

  • 経営が成り立ちにくい:羊肉の市場が小さく、大規模経営が難しい

  • ノウハウの不足:羊の飼育技術が確立されておらず、新規参入が難しい

  • 流通インフラの未整備:羊肉を適切に処理・販売するための仕組みが整っていない

  • 素畜の不足:最新データでは、全国で約24,000頭しか羊が飼われていません。ほとんど絶滅危惧種に近い数値です。新しく牧場を始めるにも、羊を導入するのに一苦労します。価格も年々高くなってます

こうした要因が積み重なり、日本では羊農家が増えにくい状況が続いているのです。

2. 繁殖効率の問題

日本で一般的に飼育されている羊は、サフォーク種やテクセル種といった品種が中心です。これらの羊は肉質が良いものの、1回の出産で生まれる子羊の数が 1〜2頭程度 と少なく、繁殖効率が低いのが特徴です。また、ある程度規模の大きな牧場であれば問題ありませんが、新規で牧場を始める場合は繁殖効率が低いことは致命的です。

対して、ニュージーランドやオーストラリアでは 多産型の品種を活用し、効率的な生産体制を確立 しています。たとえば、フィンシープという品種は 1回の出産で3〜5頭 の子羊を産むことができ、生産量の大幅な向上が可能になります。

このように、日本の羊農家が抱える「低繁殖率」の問題は、品種の選定を見直すことで解決できる可能性 があるのです。

3. 放牧環境と飼料コストの問題

日本の多くの地域では、羊を大規模に放牧するための広大な土地を確保するのが難しいのも課題の一つです。オーストラリアやニュージーランドでは 広大な草原で放牧することで低コストで羊を育てる ことができますが、日本ではそのような環境が限られています。

また、日本の羊農家は 輸入飼料に依存するケースが多く、コストがかさみやすい という問題もあります。国産の牧草や未利用資源を活用するなどの工夫が求められます。

4. 国産羊肉の流通と価格の問題

国産羊肉が市場に流通しにくい理由の一つに、価格の問題 があります。

  • 輸入羊肉のほうが圧倒的に安い:コスト競争に勝てない

  • 供給が不安定:安定した出荷量を確保できず、飲食店が取り扱いにくい

  • 屠畜施設の不足:羊専用の屠畜場が少なく、処理が難しい

そのため、日本の羊肉は特定の高級レストランや専門店向けに限定的に販売されるケースが多く、一般の消費者に広がりにくい状況が続いています。

5. それでも国産羊肉の可能性はある!

こうした課題がある一方で、国産羊肉には 大きな可能性 も秘められています。

  • 地域ブランド化:例えば「南三陸わかめ羊」のように、特産品と組み合わせたブランド戦略が有効

  • 高付加価値化:熟成肉やホゲット(生後1〜2年の羊肉)など、輸入肉にはない魅力を打ち出す

  • 消費者の支持の拡大:フードマイレージ(輸送距離)の短縮による環境負荷の低減や、国産食材への関心の高まり

  • 食べてみて美味しさの再確認:独特の癖が苦手でという人が多くいますが、食べてみて羊肉の美味しさにびっくり!癖もほとんどありません

今後、品種改良や効率的な生産体制の導入 によって、国産羊肉の生産量を増やし、市場の拡大を図ることができるかもしれません。

次回は、こうした問題を解決する フィンシープ導入のメリット について詳しく解説していきます。

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