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キミは恋猫、レディ・キラー #シロクマ文芸部


 恋猫といつまで暮らせるのかな。
 もうすぐほだしを解かれて、街をさまようのだろ。
 ここにキミをものすごく思っている女性がいるというのに。おそらく、僕に対する思いよりも数段上の段階までキミを愛していると思うよ。
 だって、僕が泊まろうとする時だって、キミが彼女のベッドを占領していて、いつも愛し合うことをお預け状態になってしまうんだからね。

 春になったら、キミは恋人探しに精を出すんだろ。
 それでも、彼女との恋のゲームは続けるのかい?
 二股なんて、許さないからな。
 その前に、彼女がキミを街へ解き放してくれないかもしれないよ。
 
 どうする、レディ・キラー。

「あら、よくこの子の名前わかったわね」
 と君が笑う。
「え? レディ・キラーって、付けたの?」
「キラーだなんて、そんな物騒な名前なんて付けないわ」
「ん?」
「キラちゃんよ。ねえ」
 ずっとネコちゃんと名無しだったキミは、やっと名前を手に入れたんだな。
 ということは、この先もずっと一緒にいるということだ。
「レディ・キラって。もしかして」
「何?」
「僕は、ずっと恋猫なオス猫だと思っていたよ」
 レディ・キラは緑色の瞳で僕を睨んだ。
「恋猫だなんて、風流なことを言っているようにみせてるけど、この子がいつも発情しているっていうの?」
「だって君から片時も離れないじゃないか」
 君はレディ・キラを優しく抱きしめて言った。
「捨てられて、ずっと独りぽっちだったんだもの。もう離れたくないのよね」
 僕は今だにレディ・キラに受け入れられていないけど。
 近づくと「シャー」という声をあげられる。
「いつになったら、僕を好きになってくれるんだい?」
「そりゃあ、ずっと男の子と思われていたんだものね」
「ごめんよ」
「春になって、キラちゃんを好きになってくれる恋猫ちゃんが現れて、少しは優しくなるかもね。だけど」
「なんだい」
「ちゃんとレディとして扱ってくれるのが条件ですって」
 とんた恋猫。レディ・キラーならぬキラ嬢だ。




 


#シロクマ文芸部 #恋猫と #賑やかし帯
小牧幸助さん、企画参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。


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緋海書房/ヤバ猫
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