ラムネの海へ #シロクマ文芸部

　ラムネの音って、何かな
青白い僕の身体のようなガラス瓶から
甘酸っぱい恋心
こぼれないように押さえていたビー玉が
堕ちる音かな
　それとも
僕の君への気持ちがくだけた時みたいに
炭酸がはじけた音かな

　どっちもさ、勇気がいるんだぜ

　夏の陽を浴びたキラキラ光るラムネの瓶を持って
君が僕の腕の中に堕ちますように　って
　願いながら
ビー玉を落としたんだ

　どうか
一滴もこぼれ落ちないでと
最大の願いを込めるんだ
シュワシュワと耳に心地いい音がして
湧き水がわいてくるように
ガラス瓶から吹きあがるんだ
　まるで
僕の切ない気持ちのように

　急いで君に贈るよ
僕の気持ちがたくさん詰まった
青い海のようなラムネ瓶
ひとつもこぼさないで
受け取って欲しいんだ

ラムネの青い瓶は、深い海のよう

　ラムネの音を聴きながら
一緒に
この海へもぐりにいこう

　ラムネの音。
　ビー玉が落ちる音。君と僕が恋に落ちた音。
　シュワシュワと炭酸がはじける音。君と僕が恋を謳歌している音。

　ラムネの音。
　カランカランと空になったラムネの瓶を持ちながら
　君と歩いた夏まつりの夜の音。

　僕は今も、ラムネの音を聴くと
あの頃を思い出すんだよ

　君も、そうであって欲しいなと
懐かしくなって、ビー玉を勢いよく押した

#シロクマ文芸部   #ラムネの音
小牧幸助さん、企画に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。