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#シロクマ文芸部参加作品

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小牧幸助さん企画のシロクマ文芸部に参加した記事をまとめました。 拙い作品群ですが、お目にとめていただけたらと思います。
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記事一覧

嘆きの霧の中 #シロクマ文芸部

霧の朝 別れを暗示する おそらく、二人で迎える最後の朝になるだろう 秋の澄み渡った空気の中…

スノードロップツリーの実を求めて #シロクマ文芸部

木の実と葉っぱを集めて何しよう 木の実と葉っぱをたくさん集めて何しよう 木の実と葉っぱをた…

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金色の雨粒をあつめたら #シロクマ文芸部

金色に輝く雨が降る。  路地裏で愛を確かめ合っていた恋人たちの興奮して開いた毛穴に否応な…

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幕間が降りる時 #シロクマ文芸部

 夕焼けは太陽を追いやり、魔物を連れてくる。 私たちの見たくなかった本当の姿を垣間見てし…

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頬を掠める竜胆の風 #シロクマ文芸部

     風の色を肌で感じる。 ようやく、その感覚がわかるようになった。     頬を撫でるほ…

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深緋色の思ひに月冴える #シロクマ文芸部

    月の色が変わる。いつか。  長い間、帝都の夜空には、橡の実を鉄媒染で染色したような…

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秋空に残された夏の思い出 #シロクマ文芸部

 懐かしい風景を見ている。  遠い記憶。  どのぐらい昔になるのかな。  まだ父も母も元気だった頃の思い出。 九月に入って二週間ほど経った日曜日。どんなに仕事で疲れていても、娘のわがままにつき合ってくれた父。  そんな父娘の姿を勝手口から覗き見しながら、昼食の準備をしている母。  まだ少し陽射しがきつい中、たらいに水をタップリと張って、庭でつかまえた小さなアマガエルとオモチャのカエルを私は泳がせて楽しんでいる。  大海原のようなたらいの中で必死に泳いでいる。たらいに映る夏雲

大西洋とトムコリンズ #シロクマ文芸部

 レモンから薫る酸性の香りが、鼻腔を刺激する。 大西洋の白波を眺めながら、トム・コリンズ…

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下弦の月を見上げた朝に #シロクマ文芸部

 今朝の月は、鉛色の大きな隕石のような雲に阻まれ、見えない  昨夜は下弦の月が出ていた …

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線香花火の花が咲く #シロクマ文芸部

 花火と手の両方を握りしめ 君は僕を引っ張るようにして 宿の先にある夜の浜辺へ急いだ。 「…

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雲を追って #シロクマ文芸部

夏の雲を追って こんな遠くの町までやってきた 何の計画もせず ただ、スポーツバッグに数枚の…

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遠い海の日を見つめる #シロクマ文芸部

海の日を忘れないで 海の日って、もう過ぎてしまっているよ それは、みんなのための海の日 他…

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月見草の便箋で #シロクマ文芸部

   手紙には、悲しい知らせが綴られていた。    一週間がむしゃらに働いて、やっとの週末…

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ラムネの海へ #シロクマ文芸部

 ラムネの音って、何かな 青白い僕の身体のようなガラス瓶から 甘酸っぱい恋心 こぼれないように押さえていたビー玉が 堕ちる音かな  それとも 僕の君への気持ちがくだけた時みたいに 炭酸がはじけた音かな  どっちもさ、勇気がいるんだぜ  夏の陽を浴びたキラキラ光るラムネの瓶を持って 君が僕の腕の中に堕ちますように って  願いながら ビー玉を落としたんだ  どうか 一滴もこぼれ落ちないでと 最大の願いを込めるんだ シュワシュワと耳に心地いい音がして 湧き水がわいてくるよう