実はよく知られていない手術室看護師の仕事 〜器械出し看護師〜
こんにちは。
手術室看護師のnanaです。
看護学校の実習生を担当することが先日ありました。
学生さんと話をする中で、
「ドラマで手術の場面を見ることがあるので、器械を渡したりするのはわかるが、それ以外の看護師の仕事って具体的に何がありますか」
と聞かれました。
医療系のドラマのおかげで、手術室看護師が認知されつつあることは大変嬉しい限りです。
実際に某医療ドラマでの器械出しシーンを見て、手術室看護師に憧れ、希望して配属になった新人さんもいます。
手術室看護師の仕事を大きく分けるとするならば
器械出し
外回り
この2つに分けられます。
もちろんこの2つの仕事以外にも山のように重要な仕事はありますが…
今回は器械出し看護師に焦点を当てたいと思います。
・器械出し看護師
ドラマでも執刀医に「メス!」と言われて器械を渡している姿をよく見る、登場機会が多いのがこの器械出しの仕事です。
器械出しで最も重要であることは、円滑に手術が進行するように器械出しの介助を行うことです。
一言でまとめましたが、中身がものすごく膨大だと個人的には思っています。
単科病院ではなく総合病院(様々な診療科のある病院)の場合、手術室で行われている手術の種類も多岐に渡ります。
そのため手術室の看護師は各診療科の術式の進行手順を全て把握する必要があります。
その上同じ病院の診療科でも医師ごとに好みの器械・使用する糸針・デバイス類など異なることも多々あるので、必死に覚えています…
器械出し看護師はこれらのことを全て覚えた上で手術に臨んでいます。
覚えなくてもカンペを見れればいいじゃん!
と思いたい所ですが、
手術中器械出し看護師は滅菌のガウン・手袋を装着し、術野や器械を清潔に保つ役割も求められているため、カンペ等見ることもほぼできません。(施設によっては許可されているかもしれませんが…)
なので初めて担当する手術であったり、久しぶりに担当する場合は血眼になって手順を確認しています。
ドラマ等では医師が「メス!」「吸引!」など欲しい器械を伝えて、器械出し看護師は渡しているだけに見えます。
新人の頃は正直なところ、医師に言われた器械を渡すことで精一杯ですし、何十種類と用意されている中から正しい器械を清潔に渡すことが出来れば十分です。
これが許されるのは新人の頃のみだと思っています。
円滑に手術を進行させるためには、術野を見て進行状況に応じた器械・物品をあらかじめ用意し、医師から求められた瞬間に渡すor医師が言わずとも手に渡せてこそ、プロの仕事だと思っています。
医師に言われてから器械を準備して渡すのと、あらかじめ用意し瞬時に渡すのとでは、数秒のタイムロスが発生します。
その瞬間では数秒の差かもしれませんが、その数秒が積み重なることにより、
手術時間の延長→患者さんが麻酔をかけられている時間が増加→不必要な侵襲の増加
と繋がっていくため、手術進行を把握し適切な器械を瞬時に渡すことが大切です。
また、手術は予測不可能な状況が発生することがあります。イレギュラーな状況に対処するためには冷静さが求められます。最初から冷静になるのは難しいかもしれませんが、イレギュラーな状況に遭遇した際には、次回同様の状況にどう対処できるかを考え、経験を積むことが大切です。後輩が悩んでいる場合、一緒に振り返り、サポートすることも大切です。
さらに、器械出し看護師の大切な役割の一つは物品管理です。手術中には多くの器械だけでなく、ガーゼや針糸などの消耗品も使用されます。中でも診療科によっては髪の毛よりも細い針糸を使う手術もあります。これらの消耗品が全て用意され、管理されていることが非常に重要です。
体内に術中入れることの多い、ガーゼなどは放射線に移るように加工されているためレントゲンを撮ることで、見つけることもできますが、きちんと術中に枚数などが合っているか管理することが大切です。
万が一、術中に器械や消耗品が紛失すると、基本は発見できるまで手術を終了することができないため、スタッフ総動員での大規模な捜索が始まります。
捜索時間は麻酔侵襲の増加につながり、少なからず患者さんへ影響があるため、物品管理も器械出し看護師の重要な役割と言えます。
手術室看護師の仕事は、ドラマや映画で見るような派手な場面だけでなく、細かな作業や確認が欠かせない大変な仕事です。しかし、患者さんの安全と手術の成功に向けて欠かせない存在でもあります。手術室看護師の仕事は大変ですが、充実感とやりがいもたくさん感じられる職業の一つです。手術室看護師としてのキャリアを積む中で、さまざまな経験と知識を身につけていって欲しいと思います。
次回は外回り看護師に焦点を当てたいと思います。
読んでいただいてありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?