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事象が変わる声掛け
昔々、山のふもとの小さな村に、リナとオトウサンが住んでいました。オトウサンは村一番の頑固者で、自分のやり方を絶対に変えようとしません。でも、そのやり方で畑を守り、家族を支えてきたことをリナも知っていました。
そんなオトウサンを尊敬しているリナでしたが、最近は心配していました。
「もっと楽に作業ができたら、オトウサンの負担も減るのに……。」
リナは、村で聞いた新しい耕し方をオトウサンに試してほしいと願い、思い切って話してみることにしました。
夕飯の後、リナは意を決してこう話しました。
「オトウサン、最近他の村で新しい耕し方が流行ってるんだって。それをやったら、もっと楽に作物が育てられるみたい。全部そのやり方に変えたほうがいいと思う!」
すると、オトウサンは眉をひそめ、低い声で答えました。
「楽だと?そんな新しいやり方が俺の畑に合うわけがない!これまでのやり方で十分だ!」
リナは焦って言いました。
「でも、新しいやり方のほうが絶対効率いいし、他の村でも成功してるんだよ!」
この言葉に、オトウサンはさらに怒りをあらわにしました。
「他の村がどうしようと関係ない!俺は俺のやり方でやるんだ!」
リナは落ち込んで、畑の隅に座り込んでしまいました。
リナがため息をついていると、小さなハムスターの チャッピー と ハッピー がそっと現れました。
チャッピーがころころと転がりながらリナの膝に登ってきました。
「リナ~、どうしたの~?ため息なんかついて~?」と、ふにゃっとした声で問いかけます。
リナは思わず微笑みながら答えました。「オトウサンが話を聞いてくれなくて……。どうしたらいいのか分からないの。」
そこに、しっかり者のハッピーがテクテクと歩いてきました。小さな手を腰に当てる(ように見える)得意のポーズでリナを見つめます。
「リナ、それってどんなふうに話したの?オトウサン、どうして怒ったと思う?」
リナは少し考え込みました。
「私……『全部変えたほうがいい』って急に言っちゃったからかな……。」
チャッピーの癒しとハッピーの導き
チャッピーがほっぺをぷくっと膨らませて言いました。
「それかも~!僕だって全部変えろって言われたらイヤだもん~。」
リナはハッとしました。
「そうだ……私、オトウサンの気持ちを考えずに話してたかもしれない。」
ハッピーがさらに問いかけます。
「じゃあさ、どう話したらオトウサンもリナの話を聞いてくれると思う?」
リナは少し考え込んでから答えました。
「まず、オトウサンのやり方を認めて、それから『少しだけ試してみない?』って提案すればよかったのかな……。」
ハッピーがくりっとした目を輝かせながら頷きました。
「その通り!リナ、ちゃんと分かってるじゃない!」
チャッピーが小さな手を叩きながら、「リナ、天才かも~!」とくるくる回ります。その姿にリナは思わず笑いながら、「よし、もう一回やってみる!」と立ち上がりました。
翌日、リナは改めてオトウサンに話しかけました。
「オトウサン、昨日はごめんね。オトウサンのやり方を考えずに話しちゃった。オトウサンのやり方があるから、私たちはこうして暮らせてるんだよね。本当にすごいと思う。」
オトウサンは少し驚きましたが、やがて小さく微笑みました。
「まあな、それが俺のやり方だからな。」
リナは続けました。
「でも、もし少しだけ新しい方法を試してみたらどうかな?試すだけなら、オトウサンも気楽にできるかなって思ったんだけど……。」
オトウサンはしばらく考え込み、やがて頷きました。
「試して損はないかもしれん。どこでやってみたい?」
リナは心の中でガッツポーズをしました。
新しいやり方で成功したリナは、興奮してついこう言ってしまいました。
「オトウサン、この方法で全部の畑を変えようよ!絶対そのほうがいいって!」
しかし、オトウサンの顔が曇りました。
「そんな急に全部変えられるわけがない!俺のやり方だって意味があるんだ!」
リナは焦って言いました。
「でも、新しい方法のほうが効率がいいのは分かったじゃない!なんでまだこだわるの?」
オトウサンは再び怒りをあらわにしました。
「お前に俺のやり方を否定される筋合いはない!」
リナは再び落ち込んでしまいました。
チャッピーとハッピーの優しい指摘
そんな彼女を見て、チャッピーがころころと転がりながらやってきました。
「リナ~、また失敗しちゃったの~?でもね~、それってリナがオトウサンを大事に思ってるからだよ~。」
リナは驚いてチャッピーを見つめました。
「私が……大事に思ってるから?」
ハッピーがくりっとした目でリナをじっと見つめ、こう言いました。
「リナ、急かしてしまった理由は分かる?成功したことで安心して、オトウサンのペースを忘れちゃったんじゃない?」
リナはその言葉にハッとしました。
「そうだ……私、新しい方法が良かったからって、オトウサンの気持ちを考えずに急いじゃった……。」
ハッピーが頷きました。
「その気持ちは悪いことじゃないよ。でも、オトウサンの強みって何だっけ?」
リナは少し考えて答えました。
「諦めずに頑張るところ……。だからこそ、オトウサンには少しずつ納得してもらわないといけないんだね。」
チャッピーが小さな手をパチパチ叩きながら、「そうだよ~!リナなら絶対できる~!」とくるくる回りました。
リナは再びオトウサンに話しかけました。
「オトウサン、この前は急かしてごめんなさい。私はオトウサンがすごい人だって分かってるから、もっと良い方法を一緒に考えたかったんだ。でも、オトウサンのペースも大事だよね。」
オトウサンはしばらく考え込んでから、静かに頷きました。
「そうか……。お前がそこまで考えてくれるなら、少しずつやってみるのも悪くないな。」
リナはその言葉に笑顔を見せました。
リナとオトウサンは、新しい耕し方を少しずつ試していくことに成功しました。畑の作物はますます元気に育ち、オトウサンが育てた甘い人参が収穫の時期を迎えました。
リナが人参を収穫していると、チャッピーとハッピーがちょこちょこ走ってきました。
チャッピーが人参を見つけるやいなや、ほっぺをぷくっと膨らませながら言いました。
「わあ~!オトウサンの人参だ~!僕、この人参だーいすきなんだよ~!」
ハッピーが隣でくりっとした目をキラリとさせながら、「チャッピー、人参を見るたびにそう言ってるよね?」とからかいます。
「だって美味しいんだもん~!ハッピーだって好きでしょ~?」と、チャッピーは人参の影に隠れながらちらちらハッピーを見ます。
ハッピーは少し照れくさそうに、前足を腰に当てる(ように見える)ポーズを取って言いました。
「まあ……オトウサンの人参は確かに甘くて美味しいけど。別に、そんなに楽しみにしてるわけじゃないよ?」
チャッピーはその言葉に驚いて、ぴょんと飛び上がりました。
「ええ~!?ハッピー、いつも一番に人参かじってるのに~!」
ハッピーはぷいっと顔をそむけながら、そっと人参に手を伸ばしています。その様子を見ていたリナは思わず笑ってしまいました。
リナが小さな人参を二本差し出すと、チャッピーはぴょんぴょん飛び跳ねながら「わーい!ありがとう、リナ~!」と嬉しそうに受け取りました。
ハッピーも遠慮がちに人参を受け取り、くりっとした目でリナを見上げながら「……ありがとう、リナ。これでまた頑張れそうだよ。」と微笑みました。
チャッピーが人参を抱えながらハッピーに言います。
「ねえハッピー、僕たち、オトウサンの人参が食べられるのって、リナがオトウサンと仲良く話したからだよね~!」
ハッピーは頷きながらも、少し得意げに言いました。
「そうだね。でも、それはリナが頑張ったからだよ。僕たちはちょっと手伝っただけ。」
チャッピーがころころ転がりながら笑います。
「でもね~、僕たちがリナを応援したおかげだと思うんだ~!だから、僕たちも天才かも~!」
ハッピーは呆れたようにため息をつきながらも、嬉しそうに小さな声で言いました。
「……まあ、そうかもね。」
その日の夕暮れ、リナとオトウサンは収穫した人参を調理して一緒に食べました。隣では、チャッピーとハッピーが小さなかごの中で人参をかじりながら、幸せそうに寄り添っています。
チャッピーがもぐもぐと人参をかじりながら言いました。
「やっぱりオトウサンの人参、最高~!」
ハッピーが「うん、最高だね」と静かに同意しながら、小さな幸せに満ちた夜が過ぎていきました。