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龍神の里 3
最終章:龍になる旅路の終わり
タツオが施設に来てから半年が経った。彼がもたらした「ポジティブなメガネ」の視点は、施設全体に深く根付いていた。入居者も職員も、お互いの中にある**「良いもの」**を見つけながら、毎日を少しずつ穏やかに、そして前向きに過ごすようになった。
タツオとの最後の日々
ある日、タツオはカナにこんなことを話した。
「ここに来た頃は、自分が何のために生きているのかわからなかった。でも、花を育てたり、人と話したりする中で、少しずつ見えてきたんだ。」
カナが優しく問いかける。
「何が見えたんですか?」
タツオは微笑みながら答えた。
「龍になるための準備だよ。自分が歩んできた道も、これから行く道も、全部意味があるんだって思えるようになった。」
静かな別れ
その数日後、タツオは穏やかに息を引き取った。
最期の瞬間も、花壇を眺めながら静かに空を見上げていたという。
施設の職員や入居者たちは、タツオの死を悲しみながらも、彼が残した教えと影響の大きさを感じていた。
△△さんは涙を流しながら言った。
「タツオさん、ありがとうね。あんたがいてくれたから、私も笑うことができた。」
◇◇さんも静かに言った。
「お友達がいなくなるのは寂しいけど、私も頑張るからね。」
カナはその姿を見ながら心の中でつぶやいた。
「タツオさん、あなたは本当に龍になりましたね。」
施設の変化:新しい名前と新しい役割
タツオが亡くなった後、施設では大きな決断が下された。
施設の名前を「天龍の里」に変更し、職員は「龍翔士」と呼ばれるようになった。
新しい名前には、入居者たちが龍になる旅路を支える場所という意味が込められていた。
職員たちは単なる介護者ではなく、入居者の魂の旅を支える導き手として、自分たちの役割に誇りを持つようになった。
入居者たちの成長
タツオの死後も、彼の影響は入居者たちの心に残り続けた。
△△さんや◇◇さんは、以前よりも穏やかに過ごす時間が増え、他の入居者とも積極的に交流するようになった。
• △△さん
「ここでの生活も悪くないね。お花もきれいだし、お友達もいる。」
• ◇◇さん
「タツオさんがいた頃の話をするのが楽しみなんだ。」
カナの思い:新たな決意
カナはタツオとの日々を思い返しながら、自分の仕事の意味を再確認していた。
「私たちは、入居者さん一人ひとりの旅路を支えるためにここにいる。どんなに小さなことでも、彼らの魂を磨く手助けができるなら、それが私たちの誇り。」
彼女の心には、強い決意があった。
タツオのように、誰もが最期のときに**「龍になる」**と思えるように支えていく。それが、カナたち「龍翔士」の使命だった。
最後のシーン:空を見上げて
ある日の夕方、カナはふと花壇の前に立ち、空を見上げた。
青空には、どこか力強い龍の姿が浮かび上がるように見えた。
カナの心の声
「タツオさん、見てください。ここにいるみんなが、少しずつ龍になる準備をしています。あなたが残してくれたものを、私たちはずっと大切にしていきます。」
その瞬間、そよ風がカナの頬を撫で、花壇の花が揺れる。
まるでタツオが微笑んでいるかのようだった。
エピローグ:未来への希望
「天龍の里」では、入居者たちの魂の旅路を支える日々が続いている。
職員たちは「龍翔士」として誇りを持ち、入居者たちはそれぞれのペースで自分だけの龍になる旅を歩んでいた。
そして、カナは今も空を見上げながら、次の入居者を迎える準備をしている。
その空には、かつてのタツオのような龍の姿が、今日も静かに見守っていた。
終わり