肉ビジネス 小池克臣
面白かった。
和牛をメインにその定義、生産の工程、販売などについて詳らかに説明されており、畜産の知識がない人にも勉強になる牛さんについてのボリューム本。
和牛と国産牛の違いって?
国産牛は品種、生まれた地域に関係なく、生まれてから屠畜されるまでの期間の半分以上を日本国内で育てられた牛。
海外からアンガス種を日本に連れてきて、日本での飼育期間が長ければ国産牛と表記される。
和牛は黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4品種、及び4品種間の交雑種で構成されている。
又、これらの品種を国内で飼育した牛でないと和牛になれない。和牛は古来から日本に生息してたのでなく、品種改良して外国種との交雑を行い、品種として固定されてるのが大半だそうです。
さて日本人が広く牛肉を食べるようになったのは、一般的には明治時代からだそうで、明治5年1月24日、明治天皇が1200年間禁止されていた牛肉を召し上がり、その美味しさと文明開化の言葉と共に世の中に広がっていったとされていると述べられてます。
生産農家は2種類で繁殖農家と飼育農家とあり専門性も違う。
牛は生後26か月~30か月飼育されると体重は700キロ以上となり、牧場から出荷され生体検査が行われる。
国内最大の取引所、芝浦市場では月曜~金曜まで毎日約300頭の牛が屠畜されている。
屠畜後は枝肉(内臓を取り除く)を冷蔵庫で冷やし込む。
この時早いものではサシが浮かび上がるそうです。
次の工程で不可欠なのが真空パック、流通において大きな役割を果たすツールであり、鮮度、品質、販売効果の向上に大きく貢献。
真空パックは肉の鮮度を保ちながら長期保存する為の方法の1つで空気から隔離することで酸化や腐敗を防ぐ。
肉は酸素に反応し易いため、鮮度を保つために酸素を除去する必要がある。
たまに目にする光景ですがそんな役割と目的があったのですね。
たまに松坂牛を食べに行くのですが定義は雌牛が条件というのには驚きました。
雌牛が好まれる最大の特徴として、脂の融点の低さや風味などが挙げられるそうで、雌牛の脂肪には人間の体内では作ることのできない必須脂肪酸である不飽和脂肪酸の含有量が多く含まれていると。
ここが美味しさの秘訣。
ただ雌牛は雄牛と比べて霜降りが入りにくく、性格的にもデリケートで体も雄ほどは大きくはならない。
ここからも分かるように牛の飼育という観点では雌牛は繊細で難しく、必然的に飼育する生産者さんは高い技術が要求されると述べられてます。
今度食べに行った時には思いを馳せながら、感謝しながら頂きたいです。
本書ではハラルへの配慮も書かれてます。
人も国家も何かを拠り所とするならば、違いも出来てきて当然であり、この手の本を書くのに割と敬遠しがちな事に向き合っておられることは素晴らしいと感じた。
己の立ち位置をしっかり持っておられ、牛さんや肉の勉強だけでなく清々しい読後となりました。