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お探し物は図書室まで  青山美智子

2021年本屋大賞第2位!!
「お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?」
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

Amazonより

「何をお探し?」
言われたいな、小町さゆりさんに・・どんな声なんだろう。
小学校に併設されたコミュニティハウス。
そこの図書室で司書をするさゆりさんは利用者にさり気ない声かけをする。
悩み、行き詰まりを感じた5人の老若男女がレファレンスされた本をきっかっけに前向きに歩みだす。

①婦人服販売員の朋香21歳

「たいした仕事じゃない」なんてとんでもない間違いだった。
単に私が「たいした仕事をしていない」だけなのだ。
私はきっと森の中に入ったところだ。何ができるのか?何がやりたいのか?自分ではまだ分からない。だけど焦らなくていい。
背伸びしなくていい。
今の生活を整えながらやれることをやりながら、手に届くものから身につけていく、備えていく。
森の中で拾うぐりとぐらのように。
とてつもなく大きな卵にいつどこで出逢うか分からないのだから。

②家具メーカー経理 諒35歳

いつかって言ってる間は夢は終わらないよ。
美しい夢のままずっと続く。叶わなくてもそれもひとつの生き方だと思う。
無計画な夢を抱くのも悪いことじゃない。
日々を楽しくしてくれるからね。
「ない」がある時点でだめです、その「ない」を目標にしないと。

繋がっているんですよ、みんな。一つの結び目からどんどん広がっていくんです。そういう縁はいつかやろうって時が来るのを待っていたら巡ってこないかもしれない。
いろんなところに顔を出して、色んな人と話して、これだけたくさん見てきたから大丈夫って思えるところまでやってみることで「いつか」が「明日」になるかもしれない。やることはたくさんあるので「時間がない」なんて言い訳はもうやめようと思った。「ある時間」でできることを考えていくんだ。

③元雑誌編集者 夏美40歳
人生なんていつも大狂いよ。どんな境遇にいたって思い通りにはいかないわよ。
でも逆に思いもしない嬉しいサプライズが待っていたりするでしょう。
結果的に希望通りじゃなくて良かった、セーフ!ってことなんかいっぱいあるんだから。
計画や予定が狂うころを不運とか失敗と思わなくていいの。
そうやって変わっていくの、己も人生も!

④ニート 浩弥30歳
俺に才能なんてない、人並みに働くのもできるわけない。
悲劇にヒロインみたいな考え方がどれだけ己の可能性を狭めてきたんだろう。

⑤定年退職 正雄65歳
何かを始める時、役に立つかどうか、物になるかどうかは関係なく、心が動くかどうか、損得でなく面白そうで選ぶ、己の価値を邪魔しないコツ。
定年退職した後の日々も、この世に生まれたその日も、どちらも人生の重要な日であり、優劣はない。
一日一日を丁寧に大切に生きる。
仕事だけが社会ではない、人と人が関わるのならそれはすべて社会である。

本を作るひとがいるだけじゃだめなのよ、それを伝えて、手渡すひとががいること。
一冊の本が出来上がるところから読者のもとに行くまでの間にいったいどれだけの多くの人が関わっていると思う?
私もその流れの一部なんだって、そこは誇りを持ってる。

感想
名言だらけで紙の本だったら付箋で溢れただろうな。
特に③の夏美さんは印象に残ったな。
隣の芝生は青く見えるをメリーゴーランドに例えるシーンや、己を地球に見立てて、天動説と地動説を用い、悲劇のヒロインでしか物事を考えられないのは、己が中心で世間が動いてるからだと、思い通りにいかない日常を受け入れて、どうやって自分をコントロールしていくか?を悟るシーンはパンパンと頬っぺたをしばかれました。

最後に小町さゆりさんの言葉で締めくくります。
どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ。

作りての狙いとは関係ないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐つけてそのひとだけの何かを得るんです。






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