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2016年個人的洋楽ベストアルバム30

ええわかってますとも。世の中から2周遅れぐらいで今更トラップにハマってんじゃないよと。でもね、しょうがないじゃないですか!時系列で後追いしてるんだから!そりゃ90年代にはブリットポップにハマるし10年代にはその時に勢いのある音楽に惹かれるよ!

…というわけでX(旧Twitter)上の連載企画。2016年発売作品を約80枚ほど聴いたところでのまとめになります。今回は収まりがつかず拡大して30位まで選びました。各盤の感想文は必要に応じて修正しています。


30位 Big Thief/Masterpiece

言わずと知れたブルックリンのフォークロックバンドBig Thiefの1st。書き溜めた楽曲群を厳選した12曲。最近の仙人がかって霞がかかったような雰囲気に比べると素朴でケレン味のないロック寄りな印象で個人的にはこの頃の方が好きかも知れないです。


29位 Beyoncé/Lemonade

超有名作の6th。”Daddy Lessons”を聴いて彼女がカントリーを手がけたのは2024年最新作「COWBOY CARTER」が初めてではなかったんだと気付く。“Freedom”を聴いてカマラ・ハリスは最高にカッコいい曲をキャンペーンソングに選んだんだなと気付く。


28位 Rihanna/Anti

8作目にして初めてRihannaのアルバムを通しで聴いた。これはいつも僕が選盤の参考にしているようなメディアにはRihannaが載ってなかったということなんだと思う。本作はSZAやTravis Scottの参加ありTame Impalaのカバー曲ありと尖った内容!歌うまいし♫


27位 Young Thug/JEFFERY

アトランタ出身ラッパー/SSWのミックステープ。ジャケは女装した彼自身。奔放に歌とラップを行き来するがいざ歌う時にはかなり声を張って朗々と歌い上げるのが特徴。基本的にトラップだがM1、3などレゲエ調の曲もあり音楽的な豊潤さが感じられる内容。


26位 Powell/Sport

ロンドンのテクノ系アーティストOscar Powellのプロジェクト1stにしてele-king誌の2016年ベストアルバム。歪んだギター音も素材としてふんだんに使用されるパンキッシュなロック寄りのエクスペリメンタル・テクノ。M7”Jonny”とか痺れるほどカッコいいので再評価されてほしい。


25位 David Bowie/Blackstar

69才の誕生日にして亡くなる2日前2016年1月8日発表の遺作。肝臓癌に冒されつつなお新しく試みたジャズへのアプローチがいぶし銀の輝きと往年のグラムロックのグリッターさを作品にもたらす。とはいえ”Lazarus”のMVにそこはかとなく漂う死の香り…さらばBowie…


24位 Radiohead/A Moon Shaped Pool

現時点の最新作。本作には長年難解なイメージを抱いていたが世の中にはもっと難しい音楽が溢れているのを知った今再聴すると美しい作品としか思えない。曲にもよるがバンドサウンド、ストリングス、トムのボーカルの化学反応にThe Smileにはないスケール感を感じてしまう…


23位 Prince/HITNRUN Phase Two

2015年12月にTidal より配信され2016年4月の急逝のあと5月に全世界でフィジカル発売された遺作。いつになくレイドバックした余裕ある雰囲気の漂う作品で同じ年に亡くなったDavid Bowieの遺作「Blackstar」とはまた違う意味で感慨深い…


22位 Future/Purple Reign

この年のFutureはミックステープと正式なアルバムを出しててこれは前者。この年のトラップシーンのド真ん中に位置してそうなのを何枚か聴いた中でも強度を感じた1枚。全部似たような曲じゃんと思いつつスムージーでクセになるこのジャンルの魅力が凝縮されてる!


21位 Danny Brown/Atrocity Exhibition

デトロイトの怪人ラッパーの4th。Joy Division「Closer」の1曲目からタイトルを取っているだけあってニューウェーブ/ポストパンク的な雰囲気を纏う。トラップ勢とは一線を画す独立系。Kendrick Lamar, Earl SweatshirtらLA勢とコネクトした”Really Doe”は必聴!


20位 Childish Gambino/"Awaken, My Love!"

年の瀬リリースで2018年のグラミーノミネート作品となった3rd。サイケデリックでファンキーでカオティック!2024年の新譜も最高だし豊かな音楽性感じちゃうなぁ。ジャケ写は「シャンプーハット被ったMaggot Brain」と好事家なら思ったことでしょう。


19位 GoGo Penguin/Man Made Object

マンチェスター拠点ジャズ・トリオのブルーノート移籍第一弾となる3rd。ツヤツヤピアノに人力精密ドラムンベースはとても滑らかでジャズファンというより全音楽ファンに向けられた音楽のように思う。


18位 The Weeknd/Starboy

メジャー3作目。8枚ものシングルヒットを擁しDaft Punk、Lana Del Rey、Kendrick Lamar、Future、Diplo、Metro Boominらが参加する清々しいほど豪華絢爛な王道R&B/ポップ作品。デモテープ時代のダークさは影を潜めいよいよMichael Jackson的なポップスターを狙う!


17位 James Blake/The Colour In Anything

Rick Rubinをコープロに迎えた3rd。James Blakeって独特の世界に連れて行かれるので聴き始めるとき少し覚悟がいる。本作は76分と長いので尚更だったのだが中盤から引き込まれてM11のBon Iverコラボ曲あたりで最高潮に。聴いてよかった!


16位 Noname/Telefone

「カルトクラシック」と称される1st。スポークンともラップともつかぬフロウにあまりにも自然に多くの言葉を載せていくスキルはおそらく天性のもの。きっと頭の回転がえらく速い人に違いない!そこにセンスよく生演奏を組み合わせることで独特の心地良さを生んでいる。デビュー盤らしいケレン味のなさもいい。


15位 Drake/Views

全米で6週間1位を記録した大ヒット4th。相変わらず威圧感ゼロ。いかつくない。歌うのかラップするのかハッキリしない。だがそこがいい!歌詞は恋愛中心の自分語り主体でその点だけは意外と日本の昭和の歌謡曲っぽいと思ってしまった。ただいかんせん20曲1時間20分で長いのよね…気持ちいいから聴いちゃうけど…M3,6,12,19,20が好きです。ファニーなダンスが話題になって当時ミーム化したM20”Hotline Bling”はYouTubeで鑑賞。なるほどなるほど。

YouTube “Hotline Bling”

14位 Bon Iver/22 A Million

5年ぶりの3作目は実験的でフォークトロニカ色が強い。透明感のあった前2作よりは様々な色を感じられるというか何なら極彩色というか…USインディの1つの到達点みたいな作品ですね。10曲34分でコンパクトなのもいい!


13位 Travis Scott/Birds In The Trap Sing McKnight

オリジナル2ndアルバム。オートチューンは緩めで結構歌うなぁ。ラップうまっ!と思ったらゲストだったりするなぁ。でも構成力あるのか飽きさせないなぁ。きっとプロデューサーとしての能力が高いタイプなんだろうなぁ…などと感じました。


12位 Red Hot Chili Peppers/The Getaway

Danger NouseがプロデューサーでNigel Godrichがミキシングを担当した11th。所謂「ジョン・フルシアンテ抜き」作品だがメロウで洗練味があって素晴らしい!でも本作の曲はきっとライブでは演奏されない…日本のアイドルグループみたいに卒業した人絡みの曲も演ればいいのにね。


11位 J. Cole/4 Your Eyez Only

若い黒人男性が恋をして家庭を築き亡くなるまでのストーリー仕立てになっている4作目。Kendrick Lamarほど猛々しくなくDrakeほどフニャフニャでない優しい眼差しのリリックとラップが僕は好きです。Kendrickとのビーフで白旗上げてもええやん、別に。(2020年にNonameともビーフしてたことは最近知りました…)


10位 21 Savage & Metro Boomin/Savage Mode

アトランタ拠点ラッパーが当時まだ新進気鋭のプロデューサーだったMetro Boominと作ったジョイントEP。抑揚のないラップとスローなトラップビートの組合せが暮れなずむ錦糸町の夏の夕暮れによく合う(個人の意見です)…こういう音楽が世の中を席巻していったの僕は理解します!


9位 Kanye West/The Life Of Pablo

Tidalだけで配信されたり内容が後で更新されたり発表時の混乱が物議を醸した7th。”Famous”のヤバい歌詞やMVなど迷走が始まり何となく無邪気な感想が書きにくくなってくる頃…内容的には「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」「Yeezus」に比べchaoticで十分楽しませてもらいました!


8位 Anderson .Paak/Malibu

カリフォルニア出身のR&B SSWアンダーソン・パークの出世作2nd。ちょっとヤンチャな声質にファンキーな歌唱。よく練られたプロダクト。全体を貫く明るいバイブス。これらの絶妙な組合せが最高♫


7位 NxWorries/Yes Lawd!

Anderson .PaakとトラックメイカーのKnxwledgeによるユニットの1作目。今年8年ぶりの2作目が出たところ。ねっとりした歌声にローファイなビートの相性がすこぶるよくてあっという間に2度聴き。J DillaやMadlibのStones Throwレーベルということで納得!


6位 Frank Ocean/Blonde

このアルバムは昨年のCoachellaの前、配信で彼のライブが観られると思って予習のために初聴き。曖昧模糊とした音像と切ない歌声に取り憑かれてそのまま鬼リピ。その頃北九州出張があって道中に聴いてたので再聴すると今でも小倉の街を思い出す。…少年時代に戻りたいという感情。「薬はやるな。あんたらしくいなさい!」と説くオカン。同性愛の切なさ…そんな内容が次から次へと泡やミストのような形状で聴き手の心に染み込んでくるような感覚…やっぱりいいですねぇ…


5位 Bruno Mars/24K Magic

今やトップアーティストとなったホノルル出身SSWの3rd。とにかく色んな年代のR&B/ソウル/ファンク/ポップスを参照する能力、自分の作品にする能力がずば抜けてる!それに声がセクシー!そりゃ天下取るわ!


4位 KAYTRANADA/99.9%

ハイチ出身モントリオール育ちプロデューサー/DJの1st。Anderson .Paak、Syd、Phonteなど多数の「ええ感じ」のゲストを招聘して紡ぐハウス、R&B、ヒップホップなどのブレンドミュージック。見事なまでに隙がないからかどこか涼しい。夏に聴きたい!


3位 Solange/A Seat at the Table

全米No.1を記録した3rd。姉のBeyoncéとは個性の異なる優しいオルタナR&Bをイメージして聴くと“angry”や“mad”をキーワードにBLMを踏まえたコンシャスな内容の作品でもあることに気付く。でもそれが本作に芯を与え奥深いものにしているのだと思う。


2位 Chance The Rapper/Coloring Book

2015年に多幸感溢れる「Surf」というアルバムをChanceと一緒に作ったトランペッターNico Segalが参加しており本作はその地続きにあると理解。ジーンとくるゴスペル。KanyeにNonameにJamila Woodsとシカゴ勢を揃えた地元愛。ジャケは我が子を見つめる顔っていうのも好き。


1位 Blood Orange/Freetown Sound

Dev HynesのR&Bプロジェクト3作目。多彩な客演女性ボーカルをフィーチャーし甘美な曲と浮遊感漂うアレンジで固めつつそれは実はクィアである自らの投影であったりルーツの土地シエラレオネやBLMが根底のテーマだったりする「ビタースウィート」な大傑作だと思う。甘いのに切ない不思議なアルバム。


所感

冒頭にも書きましたがやはり年代によって勢いのある音楽って異なりますよね。感想を書いたものを並べてみるとすっかりオルタナR&Bとヒップホップ。もちろんロックもそれなりの数を聴きましたがいかんせん伝わってくる熱量が…(個人の感想です)

同時にロック系メディアの限界も感じました。某誌の2010年代振り返り対談を読んだんですが音楽的なミクスチャーが進んだ10年間であることを指摘しながらもディケイド後半のシーン全体を席巻したトラップの担い手ミーゴスのミの字もフューチャーのフュの字も出てこないって…やっぱり必要な情報は手を伸ばして自分から取りに行かなきゃだめですね…(注:ロックが嫌いになったわけではありません。オアシスの再結成に涙し年明けのロキソニチケットは2日間通し券購入済みな程度には好きです❤️)

それはさておき今回自分が選んだ30枚の内訳はこんな感じです。(自分の基準で分類)
・R&B. 12枚
(うちオルタナR&B 11枚)
・ヒップホップ 10枚
(うちトラップ 4枚)
・ロック 6枚
・ジャズ 1枚
・テクノ 1枚
誰にも忖度せずに選んだつもりですが結果的に2016年が反映されてるように思います。

これまでも何となくそうなんだろうとは思ってましたがBillie EilishやLana Del Reyは言うに及ばず現在の和製ヒップホップやK-POPに至るまでそのサウンドデザインにヒップホップのいちサブジャンルであるトラップが多大な影響を与えている…2016年はそのことを2015年よりも一歩進んだ形で実感できて歴史を目の当たりにしているような感覚を持つことができました。最初はみんな同じに聴こえたんですがどこまでもダークな21 Savageと元気みなぎるYoung Thugじゃ全然違うじゃん!…なんてことがわかってきて俄然楽しくなりましたね。

かくいう僕も90年代マラソンやってる頃にはOcean Colour Sceneええやん!The Verveええやん!ってやってたわけでつくづく特定のジャンルではなく「時代と寝る男」なのかなぁと…でもその方が自分軸さえ見失ってなければアンテナを一杯に広げて多彩な音楽を楽しめる気がしてるので少なくともマラソン完走の2020年まではこのスタンスで行きたいと思います。

…X(Twitter)上でお薦めやいいねやコメントを寄せて頂いた皆様にこの場で御礼申し上げます。本当にありがとうございました!お薦め頂いたものはサブスクにあれば基本的に聴いております。全部に感想を書けなくて申し訳ありません🙇

末尾に資料として感想を書いたもの書かなかったもの全曲聴いたもの途中で挫折したもの含めて聴いたもののリストを掲載しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました!

1〜30枚目
31〜60枚目
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