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2024年マイベストアルバム

今年も無事発表できて嬉しいです!最低5回は聴いてるよな、というものの中から30枚選びました。例年どおり公開時期がちょっと早めなのはメディアやSNSで他の人が選んだものを見て影響されるのを避けたいから。この後もっといい新譜が出ちゃったら改訂します、ぐらいの構えでいます。

なおX(Twitter)上でも新譜の感想は書き散らかしてきましたが今年はnote用に殆ど書き下ろしました。では早速どうぞ!


30位 A. G. Cook/Britpop

ハイパーポップの始祖A. G. Cookの3枚組。尖ったダンスチューンのPast、ロックなPresent️、ポップなFuture️という3部構成でバラエティに富んでいて楽しい。Charli XCX「BRAT」のプロデュースと合わせて今年はある意味この人の年だったような。長いという特性を活かしてドライブ・ミュージックにもぴったり。


29位 Doechii/Alligator Bites Never Heal

SZAやScHoolboy QのいるレーベルTop Dawg Entertainment(TDE)所属の女性ラッパーDoechii。フロリダ州タンパ出身LA拠点の若き才能は歌よしラップよしトラックのセンスよしでDoja Catを彷彿とさせる能力の高さ。リスナーとしては今これを楽しまない選択肢はないよね 。


28位 Mura Masa/Curve 1

クラブカルチャーでの実績豊富なUKのプロデューサーが自身のレーベルからリリースした4作目。どこか抑圧的でミニマルなダンスミュージック集は楽曲ごとに曲調もテンポも手掴み感を持って自由自在にコントロールされている感じが流石。M3”We Are Making Out”はyeule とのコラボ曲。


27位 Laura Marling/Patterns In Repeat

Laura Marlingの8作目は親と子の関係性にフォーカスした内容。ボーカルとアコースティックギターとコーラスとストリングスしか聴こえてこない心に染み渡るようなアルバム。


26位 Kehlani/While We Wait 2

ベイエリアのオークランド出身R&Bシンガーが6月に出したアルバム「CRASH」からわずか2か月で発表したミックステープ。こちらの方がよりオーガニック。聴き惚れてしまう。


25位 J. Cole/Might Delete Later

凡庸なミックステープみたいに言う人もいるがあんなビーフの最中にこれだけのものを出してくるんだから逆に大したものだと僕は思うのです。ディス曲“7 Minute Drill”は本作のタイトルどおり今は消去されている。あまり傷ついてほしくないのでビーフからは降りてよかったと思う。


24位 Matt Champion/Mika’s Laundry

今年は個人的にBROCKHAMPTONに初めてハマった年だった。ヒップホップともR&Bともインディロックともつかぬ音像は今なお斬新で多くのミュージシャンに影響を与えていると知った。そしてそれは今も見事に続行中なのだと本作で知った。


23位 Bring Me The Horizon/POST HUMAN: NeX GEn

普段あまり聴かない分野だがサマソニ2024のヘッドライナーということで予習して生鑑賞もして好きになった。エモめのオルタナレベルに変容した今でも時折かつてのデス系のDNAがひょっこり顔を出すのがいい。音圧がスムーズなのも好き。


22位 Wishy/Triple Seven

インディアナポリスのバンドWishyの1st。シューゲイザー/インディーポップ/パワーポップサウンドはThe Pains Of Being Pure At HeartやYuckを思い出す甘酸っぱいあの感じ。もう一度ギターロックを信じてみるか…という気になる。男性と女性の2人ボーカルで曲によってメインが変わるのもメリハリがついていい。


21位 Nilüfer Yanya/My Method Actor

バルバドスとトルコにルーツを持つロンドンのSSWがNinja Tuneに移籍して放った3rd。力強いウィスパーとでも言うのか独特の歌い口とディストーション効いたギターだったり要所を突いたストリングスだったり楽曲によって異なるプロダクションの振れ幅も作品に拡がりをもたらしている。


20位 Cindy Lee/Diamond Jubilee

カナダのPatrick Flegelによるプロジェクト。2時間ローファイサイケフォーク漬けになる価値は十分にある。よく32曲も揃えたな!最初はPitchfork高得点にほだされて聴いたというのは否定しないがそれはきっかけに過ぎない。僕の今年のGWはコイツとともにありました。
※執筆時点で未だにサブスクにないのでYouTubeか本人サイトからの無料ファイルダウンロードでどうぞ。


19位 MJ Lenderman/Manning Fireworks

WednesdayのギタリストMJ Lendermanのソロアルバム。ペダルスティール踏みまくりのオルタナカントリーが最高過ぎる…Wednesdayって紅一点のKarly Hartzmanが率いているイメージだったのだが前作「Rat Saw God」のクレジットを確認したら全曲メンバー全員が作曲者表示の民主的なバンドだった。


18位 Beth Gibbons/Lives Outgrown

Portisheadのボーカリストによるソロアルバム。水底や冥界で歌っているかのようなPortisheadのプロダクトとは異なりちゃんと地上で歌っている。しかし哀愁の塊のような歌声は唯一無二で変わらない。ジワります。


17位 Kofi Stone/A Man After God’s Own Heart

イーストロンドン生まれバーミンガム育ちのラッパーKofi Stoneの2作目。日本ではなぜかあまり取り上げられないUKラップ。洗練味を感じるトラックに加えてこの叙情性。しんみり聴いてしまう。


16位 Fontaines D.C./Romance

アイルランド期待のロックバンド4作目。個人的に2作目「A Hero’s Death 」のイメージが強すぎてゴリゴリかつ暗い印象だったのが変わった。かと言ってポップになったというのとはまた違う久々にポストパンクマナーのロックでゾクゾクくる感触を味わえた。PVがどれもシュールなんだこれがまた。90年代によく観てた今じゃ名前も思い出せない数々の単館系映画みたいだ。


15位 Gunna/One Of Wun

ジョージア州出身ラッパーの5作目。トラップとR&B(または単にメロディックなヒップホップのフロウ)が理想的な形で融合した流麗な作品。客演にOffsetもいればLeon Bridges もいるというのが象徴的。界隈でのイザコザで密告者扱いをされてる渦中にあるということなのだがいいものはいいなと。


14位 Mk.gee/Two Star & The Dream Police

ニュージャージー出身SSW/ギタリストのデビュー盤。2月のリリース時にTLでなかなかの話題になっていた際には正直ピンとこなかったので放置していたのだが10月にBROCKHAMPTONのSaturation三部作にハマってから輪郭が曖昧なプロダクションの魅力に開眼したようですっかり本作を味わい尽くしている。(え?別に似てない?おかしいな…)独特の音響に気を取られがちだが実は各曲かなりメロディアスなのも魅力。


13位 The Cure/Songs Of A Lost World

個人的にThe Cureは「Disintegration」をリアルタイムで聴いた以外は超有名曲ぐらいしか体験してこなかったのだがこの16年ぶりの新譜には痺れた。美しいメロディーとストリングスと歪んだギター。熱心なリスナーでない僕にさえ永遠に聴いていたいと思わせる。


12位 The Smile/Cutouts

The Smileの今年2枚目になる3作目。1月に出た前作「Wall Of Eyes」のアウトテイク集という側面があるようだけど多分そこがいい!1曲1曲がシンプルでストレートで!僕はお子ちゃまなんでRadioheadライクな「No Words」なんかにはキュン死しそうになるわけですよ。(11月24日のThom Yorke公演@東京ガーデンシアターではここからの選曲はありませんでした。)


11位 Tyler, The Creator/CHROMAKOPIA

3年ぶりの8作目。濃密ですね。圧巻ですね。自伝的な内容になっているのだとか。タイラーも33歳。恐るべき若者達だったOdd Futureの面々もそろそろ成熟してくる局面だと感じます。…てか尖ったまんま成熟してるよね。


10位 Denzel Curry/KING OF THE MISCHIEVOUS SOUTH

フロリダ出身ラッパーの6作目。前作「Melt My Eyez See Your Future」のような凝りまくった日本オタクの発露はないけどアルバムタイトルどおり「南部らしさ」にゲストの人選含めてこだわったのだとか。その上で尋常じゃないスキルのラップと緊張感漂うトラックが醸し出す熱量にとにかく圧倒される。

King Of The Mischievous South Vol.2

ちなみに本作は7月に出た↑ミックステープ↑の完全版という位置付け。対比すると5曲追加(M5,11,13,14,17)で1曲削除の4曲増のようだ。追加された曲はどれも素晴らしいのでこれからチェックされる方は本作をおすすめします。


9位 MGMT/Loss Of Life

6年ぶりの5作目。奇をてらったところは影を潜めスローテンポのメロディアスな曲を揃えた作品。デビュー時に妙に売れちゃってその後苦労したけど人生にポジティブかつ謙虚に向き合おうとしている姿勢に好感。”Nothig To Declare”は名曲だと思う。


8位 Future•Metro Boomin/We Don’t Trust You/We Still Don’t Trust You

WE DON’T TRUST YOU
WE STILL DON’T TRUST YOU

この2作品についてはセットで選出。前者はもろトラップで17曲1時間、後者はFuture自ら歌いまくりのR&B風味で25曲1時間半(長っ!)。個人的には後者が好みだが前者はKendrick LamarとDrakeの血みどろのビーフの起点となった“Like That”を含んでおり2024年を象徴する作品と言ったらそちらなのだと思う。


7位 Jamie xx/In Waves

The XXの頭脳Jamie Smithの2ndソロアルバム。全曲に渡っての完璧なDJプレイで音の粒子1つ1つが美しく聴こえる。サンプリングを多用しておりそれが嵩じてなのか本作でThe Avalanchesとの共演も果たしている。過去作と対をなすジャケットのアートワークもセンスいいね!


6位 Hurray For The Riff Raff/The Past Is Still Alive

Alynda Segarraによるニューオーリンズ拠点のフォークロックプロジェクト9作目。アルバムタイトルどおり彼女のこれまでの人生の記録とのこと。牧歌的なのに凛として哀愁と力強さを携えたアメリカーナ・アルバム。ビヨンセ、ごめん。こっちをよく聴きました。


5位 Kendrick Lamar/GNX

バキバキコンシャス濃度は薄まり殆どの曲(M9以外)にJack Antonoffが関わる新展開。個人的には今年のビーフがあまり好きでなく「BIG3じゃダメなの?」「そこまでDrakeを追い込んで誰得?」などと思っていた。本作を聴き込んでいると毒を吐く対象を更にLil WayneやSnoop Doggにまで拡げていたりする一方でTDE時代の盟友SZA参加曲では彼女に寄り添うように歌っていてアンビバレンスそのもの。結局池城美菜子さんが↓こちらの記事で仰っていた『「ビーフが大好きでつい勝ってしまう自分」と、「常に神様と対話をして善行を重ねている自分」の矛盾』これに尽きるな、と思う。

Drakeを社会的に抹殺しようとしているのも2023年サマソニで「気をつけて帰ってくれ」とウチらを気遣ってくれたのも同じKendrickその人なのだ…などとつらつら書いたがヒップホップのビーフなんて実は昔からこんなもので自分がリアルタイムで初めて目の当たりにして耐性がなかっただけのことなのかもしれない。まあこんだけ考えさせてくれるだけでも大したエンターテイナーだよ笑


4位 Clairo/Charm

Clairoの3作目はNorah Jones最近作のプロデュースを担当しモダン・ヴィンテージ・サウンドの権化みたいな人、Leon Michelsのプロデュースによるもの。これが圧倒的大勝利!ビロードのような質感を持つ彼女の声・メロディとの相性が絶妙にも程がある!彼女の2作目のプロデューサーはJack AntonoffだったということでJack Antonoffに辿り着く人は多かれど卒業しちゃう人は珍しいのではなかろうか?ひょっとしたら経済的事情やスケジュールの問題だったのかもしれないが創作上の理由で意図的にそうしたのであれば英断としか言いようがない。あまりにいい曲ばかりなので途中で「いいね」つけるのをやめた。


3位 ScHoolboy Q/Blue Lips

ドイツ出身LA拠点TDE所属ラッパーの5年ぶり復帰作。時にロマンチック、時にハード。バラエティに富んだ展開で次はどんな曲か楽しみにしながら聴ける。もしFather John Mistyあたりが黒人に生まれててラッパーやってたらこんな感じ?昨年のLil Yachty「Let’s Start Here.」のサイケロック路線を聴いた時にも感じた期待感がここにもあって大げさに言うとヒップホップのNext Stageを垣間見させてくれる。そんな気が。


2位 Vampire Weekend/Only God Was Above Us

VWの5作目は美メロの宝庫、残響効果を効かせた万華鏡のようなプロダクト、飽きさせない曲順展開でここにきて新たな傑作をものにした感がある。個々をみても「若死にするには年をとり過ぎている。一人で生きていくには若過ぎる」というキラーフレーズをサビに掲げる”Capricorn”や「I hope you let it go=(どんな人生が待ち構えていようと)流れに身を任せるんだ」と繰り返し説くVW版“Let It Be”とでも言うべき8分の大作”Hope”などいつまでも心に残る曲を含む。僕はそのうち何かの映画のエンディングテーマでこの2曲は使われるんじゃないかと踏んでいる。


1位 Charli XCX/BRAT

Charli XCXの存在はもちろん知っていたがちゃんと聴いたのはこの6作目が初めてだった。冒頭の何曲か聴いた時点で「ああ、これは…」となり全曲を聴き終えた時点で「今年これを超える作品は出るのかな…?」と思った。暴力的なのにどこまでも滑らかなシンセサウンド、楽器的にデザインされていてもコケティッシュで煽情的なムードが滲み出すボーカル。これが相まって醸し出すBRAT(生意気なガキ)ワールド。今後当分アーティスト側の制作現場で「何て言うのかな、もっとチャリのBRATみたいなプロダクトで!」みたいな会話がかわされそう…そんな妄想を抱かせるほどの金字塔っぷりを感じたのだった。

Brat and it’s completely different but also still brat

↑この「もし参加者一同に会したら超豪華フェス」と言われたリミックス集もエグかった。いかに今年のチャリに勢いがあったかをよく表していますね。


所感

冒頭でも書きましたが今年はXに書いた新譜の感想で使えるものが少なくて結局殆ど書き下ろしました。そうすると基本的に思い入れの大きい上位に行くほど文章量が多くなっていくのが自分でもわかり大変だけど面白かったです。

そんなわけで各盤の感想で現時点で書きたいことは殆ど吐き出してしまったので付け加えることはそんなに多くないんですが印象に残った事柄としては
・初めてリアルタイムでヒップホップの大きなビーフを目の当たりにした。嫌だった。
・Charli XCXとA. G. Cookがグッジョブだった。
・日本のXでFrikoとNewDadが流行した。
・Dua Lipaが来た。観た。麗しかった。
・Thom Yorkeが来た。観た。フーディー買った。
・今年はなぜか邦楽を選出できなかった。
・自分の企画で続けている年代マラソンは2013〜2017年まで進んだ。
・その過程でオルタナR&Bとトラップにハマり2024年AOTYのセレクトにも少なからず影響が及んでいる。
・しかし特にトラップには世間が食傷気味になっていることに薄々勘付いている。
・でも自分が飽きるまでは手厚く取り上げ続けるつもり。負けないぞ!…と思っている。
・あとはSZAが前作「SOS」に続き年の瀬に新作を出す噂があることだけが心残りだ。もし出たら「Ms. December」と呼んでやる笑

大体こんなところです。今年も素晴らしい作品を届けてくれたアーティスト達にありったけの感謝とリスペクトを送ります。最後までお読みいただきありがとうございました!

2024/12/24
続編も書きましたのでよろしければご覧ください↓

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