2013年個人的洋楽ベストアルバム20
X(Twitter)とThreads上で続けていた2013年発売洋楽マラソン。約80枚聴いたところで気に入ったもの20枚に順位を付けて終了します。各感想文は必要に応じて修正したり新たに書き下ろしたりして最後に簡単な所感を添えました。では早速!
20位 Atoms For Peace/AMOK
レッチリのフリー、ナイジェル・ゴドリッチなどが参加したトム・ヨークのサイドプロジェクト。3日間のセッション音源をトムとナイジェルが 2年かけて切り刻んで再構築したもの。あのフリーの演奏さえ素材に過ぎなかったのか!と戦慄。「Radiohead外プロジェクト」という点では共通しているもののライブ感覚を重視しているThe Smileとは全くアプローチが違うんだなあ・・
トム・ヨークは超然としているようで各々の時代の空気を取り込む事にも長けた人だと思う。この辺↓の2012年作品と同列に置いて聴くと個人的には非常に楽しめた♪
19位 DJ Rashad/Double Cup
シカゴ発のダンスカルチャーJuke/Footworkを牽引したDJ Rashadが残した唯一のフルアルバム。激しく細かい足の動きが特徴的なこのダンスのバトルで使われることを前提としながらもどこかソウルミュージックの温かみも感じられるこの音楽はソファーに座って聴いても十二分に楽しめる。
惜しくも彼は翌2014年にオーバードーズが原因で34才の若さで他界…
僕のような後追いヤーの役割はこういう音楽の新たなファンになって「何だこれは?」とわあわあ騒ぐことかと思う。R.I.P.
18位 M.I.A./Matangi
大手レーベルに移籍したら口出しされて発売が延びてちょっと地味な4thアルバム。…なんて解説を目にしちゃったもんだからどうなんだろうと思いながら聴いたら何のことはない”Paper Planes”や”Born Free”みたいな分かりやすく過激な曲がないだけで全然僕の期待を裏切らない内容でした。不敵なM.I.A.の中指は今回も立ったままでしたってことで。
17位 Disclosure/Settle
南ロンドン出身の兄弟ユニット1st。
個人的には 2020年のコロナ禍に自宅で3rd「Energy」を聴きまくって気を紛らしながらこの手の音楽の魅力を知ったので恩人です。クラシック音楽を根底にJ Dilla、Burialなどの影響を受けているとのこと。うん、何だか今ならとてもよくわかる。めちゃくちゃお洒落なんだけど尖りすぎてない分かりやすさが魅力ですよね!
16位 Drake/Nothing Was the Same
7枚ものシングルを含む3rd。歌とラップの境目が曖昧な歌唱に非マッチョな内容のリリックを乗せるという前2作で培ってきたスタイルに加えて本作ではサウンド面でも洗練を感じる。1st「Thank Me Later」から最新作「For All The Dods」まで米国ではずっとアルバムチャート1位を取り続けることになるのだが本作あたりで完全にスタイルを確立しているなぁ…
15位 Tigran Hamasyan/Shadow Theater
アルメニア出身のジャズピアニスト、ティグラン・ハマシアンのソロ2nd。ジャズという形式を取っているが西欧世界とは明らかに趣きの異なるメロディーと時折入る母語による歌唱。最初こそエキゾチシズムを感じるが聴き進めるとめくるめく展開や普遍的な美しさに没入してしまう。
リリース当時はジャズの文脈、ワールドミュージックの文脈で高評価を得るとともにくるりの岸田繁など各所から惜しみない賛辞を送られた。
MVはコーカサスの香りです↓
14位 Danny Brown/Old
昨年のJPEGMAFIAとのコラボ作や自身の新作「Quaranta」も記憶に新しいデトロイトの怪人の3rd。「Old」とはラッパーとしては遅咲きな自分のことを指しているようだが実際にはJ Dilla風でサイケデリックな「かつての」自分のスタイルに戻るという宣言のような意味だそう。
実際に聴くともっとオーセンティックな印象なのだがとにかく活力に溢れててテンポがよくて引き込まれてしまう。どの曲がというよりきっとアルバムとして出来がいいんだろうね。
13位 Pusha-T/My Name Is My Name
兄と組んだユニットClipse(下記リンクは代表曲)The Neptunesの後押しを受けゼロ年代に大活躍したバージニア州出身のラッパーPusha-TがKanye Westのレーベルからリリースした1stソロアルバム。曲もサンプリングセンスも客演も最高!2013年はヒップホップ豊作だなぁ…
12位 Kanye West/Yeezus
ポストパンクやインダストリアルロックを取り入れ最終的にミニマライズするためRick Rubin御大の力を借りた6th。ジャケ写のイメージもあってかメタリックな輝きに覆われて歪んだ音響。
本作で“I Am A God”とか言い始めてメディアも過剰に深読みを始めて迂闊にこの人を語りにくくなった印象。聴き手としては無邪気に「なんかスゲー!」とか言っていたいけどそうもいかないらしい。
11位 Robert Glasper/Black Radio 2
いい意味で前作「1」との違いが分からない(ほど充実した内容の)第二弾。ゲストもCommonにJill ScottにSnoop Doggほか多彩。Norah Jones参加曲“Let It Ride”は人力ドラムンベースと言われるほどの生演奏グループ。こりゃたまらん…
10位 Avicii/True
2018年に28歳の若さで夭折したスウェーデン出身DJ/プロデューサーの1st。カントリーをEDMに注入するなど先鋭的な取組みがなされているが心奪われるのは4つ打ち中心のリズムを背景にした美しいメロディ。僕の中で「いいEDM」ってまさにこういうイメージ。
特に「Dear Boy」には感動しちゃうなあ。つい最近までアヴィーチーの読み方さえ知らなかったのにもうこの世にいない人なんだと思うと悲しくなっちゃうよ・・
9位 Beyoncé/st
ビヨンセ5枚目のアルバム。宣伝もなく12月になって突如iTunes限定リリースされたためか2013年のメディアAOTYからは漏れがちでディケイド単位の名盤企画でフォローされることが多い。
当時のオルタナR&Bとメインストリームポップスのど真ん中を意気揚々と行進してるような内容の傑作だと思う。実際Frank Oceanとのコラボ曲MVで行進してるし笑
8位 Yo La Tango/Fade
テン年代最初のアルバムとなる13作目。実験的な長尺の曲はなくオルタナ風味の歪んだ曲とフォーキーな曲がいい感じのバランスで並ぶ。ジャケ写のイメージに引っ張られてるかもしれないけど爽やかだ!1995年「Electr-O-Pura」以降で一番好きかも!
プロデューサーがJohn McEntireだったりボーナストラックにTodd Rundgrenの名曲”I Saw The Light”が入ってたりするところも色々考えながら聴く理由を与えてくれていいですね!
7位 Laura Marling/Once I Was An Eagle
マーキュリー賞ノミネートの4th。16曲63分の長尺。最初の4曲は静かにシームレスに繋がりリードシングルのM5”Master Hunter”にバトンを渡す。その後しばらくは淡々と進むが後半に力強く盛り上がるというまるで交響曲のような展開に驚かされる。
殆どアコギとベースとパーカッションとチェロだけの構成なのに熱情が迸ってミニマルな印象にはならない!当時Paul WellerもJimmy PageもBobby Gillespieも賛辞を惜しまなかったというのも至極当然の傑作でしょう。
6位 Vampire Weekend/Modern Vampires of the City
ブルックリン拠点の彼らがLAで制作した3rd。メジャー調の曲で固めているので明るいムードだが聴けば聴くほど鍵盤、ドラム、コーラス、音響などこだわって作っているのが分かり「荘厳なポップネス」とでも言ったらいいのか高みに達しているなあと思う。
まだ2013年までしか探索してないけどテン年代のロックの一典型ってこのアルバムのイメージなのかなと思っています。
5位 Unknown Mortal Orchestra/Ⅱ
ポートランド拠点3ピースの2nd。捻くれコード進行に磨きがかかってもう最高!テン年代初頭は
2010年:Tame Impala 1st
2011年:Unknown 1st
2012年:Tame Impala 2nd
2013年:Unknown 2nd
と互い違いにリリースされててインディサイケの悦楽を切れ目なく味わえていい感じ!この2つのバンドの今後のリリースを面白いからあえて調べてないけど是非この調子で続けて欲しい!
4位 The Internet/Feel Good
オッド・フューチャー(OF)のR&B部門担当The Internetの2nd。同朋Frank Oceanの同時期作品「Channel ORANGE」にも通じる浮遊感漂うアンビエントR&Bだがこちらはもっと生演奏グルーブが感じられることとSydの女声ボーカルが武器。
本作をTL上であまり見かけないのは次作「Ego Death」で本格ブレークするのでそっちに注目が集まっちゃってるからなのかな?グルーヴィーでファンキーでそのくせ垢抜けした洒脱さがあって隠れた名作じゃないかと思ってる。
3位 Kurt Vile/Wakin On A Pretty Daze
フィラデルフィア出身SSWの5th。従来の作品よりもバックバンドViolatorsの関与度が高いとされておりジャムセッションのような長尺の曲が多い。脱力感とキラキラギターの合わせ技という、晴れた日に自宅のベランダでビール飲みながら聴きたくなるに決まってるじゃないか!…という至福の69分を提供してくれる名盤です。
…にしても安斎肇とみうらじゅん感が濃厚なステージ風景↓だがそこがいい!
2位 The Weeknd/Kiss Land
メジャーデビュー前のミックステープ3作束ねの前作「Trilogy」を除けば本作が1stアルバム。現在のようなポップシーン第一人者になる前、オルタナティブR&B有力担い手の1人という位置付けだった頃の不敵な面構えが見える。曲調は重めでダークなものが多いがその分繰り返しの鑑賞に耐えうるというか飽きがこない。これ大事。
シングル曲”Belong To The World“のMVは日本を舞台にしたブレードランナーやロストイントランスレーション的世界観で制作されたもの。そういう人でしたっけ?😳
1位 My Bloody Valentine/m b v
22年ぶりの新作となった3rd。3年前MBVのサブスクが解禁になったとき鼻血が出るほど「loveless」を聴きまくった僕は本作をいずれ然るべきタイミングで聴いてやろうと身構え殆ど聴いてこなかった。その戒めをようやく解いたのが一昨日(注:2024年1月7日です)。果たして前半に固められたloveless路線の曲はやはり別格無比で気持ちよく脳が溶けていく。4曲目以降は一旦ノイズの霧が晴れたようにクリアな曲が続きM6”new you”がおそらく最もこのアルバムらしい曲。終盤再び音の洪水となりジェット音とともに本作は幕を閉じる。あー長らく聴くのを封印しててよかった。満足…
…さて今年ケヴィンは61歳、ビリンダは63歳…2021年頃にはメディアへの露出が増えて新作発表の期待が高まったけどあっという間に2024年ですよ…Pitchforkの“The 50 Most Anticipated Albums of 2024”にも彼らは入ってませんよっと(泣)。
所感
参考資料が充実していた(後述)こともあってすっかり 2013年には長逗留してしまいました。いつも言ってることですが後追いの特権(?)としてあまりこれが売れたとか関係なくフラットに聴くことを心がけましたがそれでも結果として心惹かれるものが多かったのはオルタナティブR&Bとヒップホップ勢だった気がします。でも1位はマイブラ!22年(僕はたかだか3年ぐらい…)も待ったんだから鉄板扱い許してくださいよ!
今回よく参照したのはクロスビートのムック本です。今号を最後に休刊されているという認識でとても残念ですが色々なご事情があったのだと思います。ありがとうございました。
X(Twitter)やThreads上でお薦めやいいねやコメントを寄せて頂いた皆様、本当にありがとうございました!名前を上げておすすめ頂いたものはサブスクにあれば全て聴いております。全部に感想を書けなくて申し訳ありません🙇
以上、最後までお読み頂きありがとうございました!