言葉は武器になる―自分の過去を見ていたらよりライターになりたいと思えた
その日食べた魚はゴムのような味がした。翌日、医師からは適応障害と診断された。
ワクワクしながら入った会社はいつしか恐怖の対象となっていた。ミスをした時、動きが遅い時、何かある度に「バカ」と言われるようになった。人の顔色を伺いながら働き、家に帰れば唯一安全になれる自室で死体のように眠り、夜を過ごした。「そういえば鏡で自分の笑顔を見なくなったな」と思い始めた時にはもう「バカ」という言葉が頭の中にこびりついてしまっていた。
それから言葉は自分の大切な思い出を汚していった。部活動で部長として部員たちと引退まで駆け抜けた学校生活のこと、お客様にとって大切な思い出の一部になりサービス業を志したアルバイトのこと、22年間「私」を構成してきたこれまでの全てが土足で踏みにじられた。
それから数回転職をし、知人が勤めている団体に拾ってもらった。だが当時の上司からは無視をされ、「邪魔」「いらない」と言われる日々。幸い他の同僚からは良くしてもらったため、薬に頼っていれば何とかなっていた。だが結局1年以内に会社を去った。
あれから4年、笑えるようになったと思いたい。これは作り笑顔かもしれないと疑いながらも騙しだまし笑っている。でも、一度ミスをすればどこであろうと言葉に刺し殺される。
「言葉は武器だ」人を感動させることもできるし背中を押すこともできる。しかし同時に人を殺すことができることも忘れてはいけない。少なくとも自分は前者でありたいと思っている。そして今も自分を痛めつけてくる言葉をもっと楽しく、ワクワクするものに変えたい。